アスファルト防水とは?
アスファルト防水
【超解説】とても簡単に言うと何か?
ビルやマンションの「屋上」や「駐車場」を雨漏りから守るための、最も歴史が古く、**世界中で最も信頼されている最強の防水工法**です。
ドロドロに溶かした高温の**「アスファルト(黒いタールのようなもの)」**と、それに浸したガラス繊維の**「ルーフィング(専用のシート)」**を、ミルフィーユのように何層も重ね合わせて、絶対に水を通さない分厚い層を作ります。
「非常に長持ちする」という最大のメリットの一方で、施工中に「強烈な匂いと煙が出る」という特徴があります。
1. アスファルト防水の基本構造と種類
アスファルト防水は、コンクリートの上にいきなり塗って終わりではありません。
- 何層にも重ねる(積層工法): 下地に接着剤(プライマー)を塗り、その上に「溶けたアスファルト」→「ルーフィング(シート)」→「溶けたアスファルト」→「ルーフィング」と、通常2〜3層にわたって重ね合わせます。
- 押えコンクリート(保護層): 防水層は紫外線に弱いため、最後に一番上に「コンクリート(押えコン)」を数センチ流し込んでフタをします。屋上によくあるコンクリートの床の下には、実はこの真っ黒な防水層が隠れているのです。(※コンクリートを打たない「露出工法」もあります)
2. 溶かし方の違い(熱・トーチ・常温)
アスファルトをどうやってドロドロに溶かすかによって、いくつか工法が分かれます。
- 熱工法(熱釜を使う): 200℃以上の高温に設定された「溶融釜(ようゆうがま)」を使ってアスファルトの塊を現場で溶かし、ヒシャクで流しながらシートを貼っていく伝統的な工法。最も密着性が高く信頼できますが、重い機材と強烈な匂い・煙が発生します。
- トーチ工法: シートの裏にあらかじめアスファルトが付いており、大型のバーナー(トーチ)で炙って溶かしながら床に貼り付けていく工法。大掛かりな釜がいらないため改修工事でよく使われます。
- 常温工法(冷工法): 火を一切使わず、シールのように粘着層がついたルーフィングを貼り重ねていく工法。煙や匂いが出ないため、営業中の病院やマンションの改修向けです。
3. メリットとデメリット
メリット(なぜ長年使われ続けるのか)
- 圧倒的な耐久性と防水性: 寿命はおおよそ「15年〜25年(押えコンがあればそれ以上)」と、他のウレタンやシート防水よりも長持ちします。また、何層も重ねるため万が一1カ所破れても、下の層が水をブロックします。
- 重量への強さ: その上にコンクリートを打つことができるため、屋上駐車場や屋上庭園などの重い荷重がかかる場所にはアスファルト防水一択となります。
デメリット
- 施工時の匂いと煙: 熱工法の場合、コールタールのような強烈な異臭が近隣に広がるため、苦情になりやすいのが最大のネックです。
- 建物の重量増: 防水層自体が非常に重く、さらに保護材(コンクリート)を乗せるため、木造住宅など軽い構造の建物には適しません(鉄筋コンクリート造専用です)。
4. 多角的なQ&A(20連発)
近所で工事が始まり、焦げたような酷い匂いと煙がします。有毒ですか?
アスファルトを溶かしている匂いです。気分が悪くなる特有の悪臭ですが、アスファルト自体に人体への強い急性毒性(一酸化炭素などを除く)はありません。ただし煙を直接吸い込むのは健康上避けてください。窓を閉め、換気口も閉じることをお勧めします。
マンションの最上階に住んでいます。屋上の防水がアスファルトだと暑いですか?
アスファルトは黒いため熱を吸収しやすいですが、通常は上にコンクリートを打ったり、断熱材を組み込む「断熱工法」がとられているため、それが原因で極端に室温が上がることはありません。
アスファルトというと、道路にあるあの真っ黒い地面と同じですか?
成分のベース(石油の残りカス)は同じですが、道路用の「アスファルト合材(砂利と混ぜたもの)」とは違い、防水用はより粘り気があり、ゴムなどの改質材を混ぜて水を通さないように作られた専用の材料です。
屋上のコンクリートの床にひび割れがあります。雨漏りしませんか?
表面のコンクリートはあくまで「防水層を太陽の紫外線から守るためのフタ(保護層)」です。フタにヒビが入っても、その下にある分厚いアスファルト層が破破れていなければ雨漏りはしません。
屋上に重い植木鉢や物置を置いても大丈夫ですか?
表面がコンクリート(押えコン)であれば問題ありません。ただし、表面が銀色や緑色のペンキで塗られただけの「露出工法」の場合、重いものを置いたり引きずったりすると防水シートが破れて雨漏りします。
熱釜(溶融釜)の温度管理で難しいところは?
アスファルトは240℃〜260℃が適温です。温度が低すぎるとドロドロにならずルーフィングが密着しませんし、高すぎると煙がもくもく出て発火の危険があり、また成分が劣化して防水効果が落ちるため、火加減のコントロールが職人技です。
熱工法の作業で一番キツイことは何ですか?
真夏の屋上での作業です。気温が35度の環境で、250度のアスファルトをヒシャクで撒きながらシートを転がしていくため、照り返しと熱気で体感温度は50度を超え、常に火傷(ヤケド)の危険と隣り合わせです。
トーチ工法で一番失敗しやすいポイントは?
「あぶり不足」です。バーナーでシート裏のアスファルトを溶かす際、表面だけ溶けて芯が溶けきっていない状態で張り付けると、後でペリッと剥がれて水が入り込みます。シートの端からトロトロに溶けた液が少しはみ出るくらい(チョイ出し)が完全密着の証拠です。
コーナー(出隅・入隅)の処理はどうするのですか?
角の部分はシートが浮きやすいため、「増し張り(事前に小さく切ったシートを角に補強として張る)」を必ず行います。防水事故のほとんどは平らな面ではなく角の処理の甘さから起きます。
雨が降りそうな日の防水工事はどうしますか?
絶対にやりません。アスファルトは「水(水分)」を最も嫌います。コンクリート下地が濡れている場合、高温のアスファルトをかけた瞬間に水が沸騰して水蒸気爆発を起こし、防水層がポコポコに浮き上がって完全な施工不良になります。
新築時にアスファルト防水を選ぶ判断基準は何ですか?
RC造(鉄筋コンクリート造)のフラットな屋上であり、かつ「最高の信頼性を求められる場合(店舗、病院、億ション等)」や、「上にコンクリートを打って屋上を人が歩く空間として利用する場合」です。
近隣からの臭気クレーム対策はどうしていますか?
極力「低臭型」のアスファルト材料を採用し、溶融釜には脱臭機能付きのカバーを取り付けます。事前の挨拶回りで「○月○日の午前中に匂いの出る作業があります」と具体的な時間まで告知し、洗濯物を干さないようお願いしておくことが最重要です。
改修工事で「熱工法」ではなく「常温工法」や「トーチ工法」への切り替えを検討するのはどんな時ですか?
病院や学校、高級住宅地など「煙や匂いが少しでも出たら大問題になる現場」や、「重い溶融釜をクレーンで屋上に上げられない現場」です。
コンクリート打設前の「下地作り(左官)」への指示で欠かせないことは?
「水勾配(みずこうばい)」の確保です。水が排水溝(ルーフドレン)に向かって流れるように、1/50〜1/100程度の緩やかな傾斜をコンクリート下地の段階で正確に作らせます。水たまり(プール)ができると防水層の劣化が早まります。
防水工事が完了した後の「水張り試験」とは?
ルーフドレン(排水溝)を風船のような道具で塞ぎ、屋上全体にプールのよう水を数センチ溜め、24時間〜48時間放置して階下に漏水がないか確認する最終テストです。これでOKが出れば押えコンクリートを打設できます。
アスファルト防水の保証期間はどのくらいですか?
日本の多くの防水メーカーで「10年間」の責任施工保証が出されます。10年経ったら即雨漏りするわけではなく、15〜20年程度は十分に持ちますが、保証が切れる前に一度トップコートの塗り替えや目地の打ち替えを検討します。
保護コンクリートの「伸縮目地(しんしゅくめじ)」が飛び出してきました!
コンクリートは夏伸びて冬縮むため、その逃げ道として数メートル間隔で黒いゴムの線(伸縮目地)を入れています。経年劣化で目地が飛び出したり隙間が開いたりしてきたら、そこから雨水が防水層の上に溜まるため、早急にシーリング材で打ち替える必要があります。
屋上の「ドレン(排水溝)」周りで一番多いトラブルは何ですか?
落ち葉や泥が詰まって水が流れなくなり、屋上が巨大なプールになることです。水圧で防水層の隙間から雨漏りする原因の第1位ですので、梅雨前と台風の後には必ず屋上に上がってドレンの清掃を行ってください。
既存がアスファルト防水(押えコンあり)の屋上を改修したいのですが、コンクリートを壊す必要がありますか?
いいえ。古い防水層まで壊そうとすると膨大な廃材(産廃)の処分費と騒音が発生します。通常は「かぶせ工法」といって、既存のコンクリートの上からウレタン防水や塩ビシート防水を丸ごと被せて覆ってしまう改修工事が一般的です。
パラペット(屋上の立ち上がりの壁)の「笠木(かさぎ)」の下から雨漏りしています。
平らな床の防水は完璧でも、パラペットの頂上(アルミの手すりのような部品=笠木)の隙間から雨水が侵入し、壁の中を伝って下の階へ漏れるケースが非常に多いです。屋上の雨漏り調査では、床面だけでなく壁の立ち上がり先端のシーリング切れを疑ってください。