バスダクトとは?
大容量の電力を送る金属製の幹線ダクト
【超解説】とても簡単に言うと何か?
変圧器から分電盤まで、数千アンペアの大電流を安全に運ぶための金属製の太い配線路です。
1. 基本概要
そもそも何か
バスダクトは、大規模な工場や高層ビルにおいて、キュービクルなどの変電設備から
各階の分電盤へと、数千アンペアという大電力を安全かつ効率的に送るための幹線設備です。
なぜ必要なのか
もしこれほどの規模の電流を通常のケーブルで送ろうとすると、太いケーブルを
何十本も並行して敷設しなければならず、スペースの無駄と施工の困難さが問題になります。
バスダクトは専用の金属函体に導体を収納し極めてコンパクトに高い送電能力を発揮します。
2. 構造や原理
内部構造
内部には、電気を流すための「導体(銅やアルミニウムの分厚い板=帯状導体)」が
一定の隙間をあけて、あるいは絶縁シートを挟んで密着した状態で数枚並んでいます。
それらを絶縁支持材で強固に固定し、
外側を頑丈な金属製(鋼板やアルミ)のケースで覆っています。
放熱と堅牢性のメカニズム
構造自体が金属ケースと巨大な金属板の塊であるため、大電力が流れた際に発生する
熱を直接ケースから外部へ放熱でき、また大電流特有の強い電磁力(ショート時の反発力など)
を押さえ込む機械的強度を持っています。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
外観は銀色や塗装された四角い金属の筒で、内部の導体には「アルミニウム導体(AL)」と、
導電率が高くよりコンパクトにできる「銅導体(CU)」があります。ALダクトは軽く安価です。
種類や関連規格
内部に空間を設けて放熱孔を開けた「換気型」や、逆に導体を密着させて小型化した
「絶縁形(サンドイッチ型)」が主力です。
JIS規格(JIS C 8364など)に基づき製造・検査されます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
巨大なサーバーを多数稼働させるデータセンターや、大量のモーターを一斉に回す大型工場、
タワーマンションや超高層オフィスビルなどの大規模施設で必須級の設備として導入されます。
具体的な設置位置
受変電設備周辺の水平配線のほか、各階を垂直に貫く「パイプシャフト(EPS)」の内部に
真っ直ぐに立ち上げられ、各フロアの分電盤へ電源を分岐する(プラグイン)役割を担います。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
占有スペースがケーブル敷設に比べて圧倒的に小さく済む点と、ダクトの中間から
分電盤用の電源を簡単に取り出せる「プラグインホール」が等間隔で備わっているため、
後からの増設などのレイアウト変更に非常に強いことです。
デメリット(短所・弱点)
現場でパイプのように曲げる作業が一切できないため、事前採寸(現調)が1ミリでも狂うと
取り付けられません。また非常に重く、搬入から吊り込みまで大がかりな重機作業となります。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
大量の太いケーブル(CV等)を束ねる費用と比較すると、大容量になるほど
バスダクトの方がトータルコスト(材料費+労務費)は安くなる傾向にあります。
おおよその相場(機器本体+設置工事費等)
- 材料費 (アルミニウム導体クラス): 数万〜十数万円/m
- 材料費 (銅導体クラス): 十数万〜数十万円/m
- 分岐プラグ・接続部品: 各数万円
合計目安: 物件規模により異なりますが、幹線一式で数百万円〜数千万円規模の設備となります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
法定耐用年数は15年ですが、適切な環境下であれば30〜40年以上使用されます。
ただし、絶対に水に濡らしてはいけません。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
バスダクトは防水構造ではないものが多く、上部の空調配管から結露水が滴下したり、
雨水が侵入したりすると、内部の導体間で容易に相間短絡を起こします。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
水溜まりによる漏電や、接続ボルトの緩みを放置して異常発熱すると、
大電流特有の急激な短絡事故(アークフラッシュ)が発生し、
数千万円規模の設備が一瞬で黒焦げになり、長期間の全館停電を引き起こします。
8. 関連機器・材料の紹介
バスダクトの代替や接続先として関わりの深い機器の紹介です。
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低圧幹線ケーブル(CV・CVT):
小〜中容量の幹線や、曲がり組が多くバスダクトが通せないルートに
採用される主力ケーブルです。
▶ 詳細記事はこちら -
キュービクル(高圧受電設備):
バスダクトの始点となる変電設備です。ここで作られた大電力を
トランスから直接バスダクトへ送り出し、各階の分電盤へ届けます。
▶ 詳細記事はこちら -
分電盤(動力盤等):
バスダクトの分岐プラグから電気を受け取り、各フロアの照明や
コンセントへ電気を分配する装置です。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
駅やショッピングモールの天井裏によくある巨大な金属の箱は何ですか?
それがバスダクトです。建物全体の照明やエアコンを動かすための、
ものすごい量の電気を運ぶ「巨大な電線」のようなものです。
電線ではなく金属の箱を使っているのはなぜですか?
普通の電線でこれだけの電気を送ろうとすると、
電線が太くなりすぎて天井裏に収まらず、熱で燃えてしまう危険があるためです。
地震のときに天井から落ちてきませんか?
非常に重いため、太い鉄のボルトや専用の耐震金具で建物の骨組みに直接、
ガッチリと固定されているので落ちることはありません。
触ったらビリっと感電しますか?
外側の金属ケースは電気を通さないように安全にアース(接地)
されているため、外から触っても絶対に感電しません。
家の中にもバスダクトは通っていますか?
一般家庭で使う電気の量は少ないため、細い電線で十分です。
タワーマンション等の共有部には設置されています。
バスダクトの接続工事で一番気を使う作業は何ですか?
接続ボルトの締め付けです。ここでトルクレンチによる規定トルク管理を怠ると、
接触不良により確実に火災を起こします。
1本の重さはどれくらいですか?
容量や材質によりますが、銅導体の3m定尺で1本100kgから200kgを超えるものもあり、
チェーンブロックによる玉掛け作業が必須です。
配管のように現場で曲げたり切ったりして長さを調整できますか?
工場で完全受注生産されるため、
現場での切断や曲げ加工は一切不可能です。ミリ単位での事前の現場採寸が命になります。
施工中にダクトを少し濡らしてしまいました。大丈夫ですか?
絶対にダメです。
継手内部に水分が浸入すると絶縁抵抗が低下(メガ落ち)して通電時に破裂・焼損します。
完全に乾燥させる必要があります。
接続部分の点検穴のカバーはいつでも開けていいですか?
通電中に開けると充電部がむき出しになり極めて危険な感電事故があります。
必ず上流の遮断器を切り、検電してから開けます。
設計図面上で、バスダクトの真上に水配管が通っています。
直ちに設備業者と調整し、水配管のルートを迂回させるか、
やむを得ない場合はダクトの上に強固な水受けパンと排水ドレンを設置します。
建物のエキスパンションジョイント(繋ぎ目)をまたぐ場合の注意点は?
地震時に建物同士が別々に揺れるため、普通の直線ダクトでは破断します。
必ず可とう性のある「フレキシブルジョイント」を採用します。
工期が遅れており、屋根ができる前にバスダクトを搬入・設置したいです。
雨天時の搬入や、雨が吹き込む状態での設置は厳禁です。
建物の防水(屋根や外壁)が完了するまで搬入を見合わせてください。
ケーブル(CVT)とバスダクトの採用の分かれ目は何アンペアですか?
概ね600Aから800A以上になると、
ケーブルの並行敷設本数が多くなりすぎて施工が困難になるため、
バスダクトに切り替えるのが一般的です。
キュービクルのトランスとバスダクトを繋ぐ部分の指示は?
トランスの振動が強固な金属ダクトに伝わって破損するのを防ぐため、
接続部には編組線等を用いた「可とう導体」を必ず入れます。
新しいテナントが入り、急遽コンセントの電源(分電盤)を増やしたいです。
プラグインタイプのバスダクトであれば、
停電させた上で空いている穴に「プラグインブレーカー」
を挿すだけで比較的容易に増設可能です。
日常点検でバスダクトにサーモグラフィを使っていますが、何を診ていますか?
接続部のボルトの緩み等による「異常発熱」です。
ケース表面でも極端な温度差があれば、内部で接触不良が起きている証拠です。
雨漏りでバスダクトに大量の水がかかってブレーカーが落ちました。
絶対にそのままブレーカーを再投入しないでください。
内部で短絡して焦げている可能性が高いため、
メーカーの分解調査と清掃清掃・部品交換が必要です。
ダクトから「ジージー」という異音が聞こえてきます。
大電流による電磁振動や、ケースの固定ボルトの緩み、
最悪の場合は内部での微小な放電が疑われます。早急に精密点検を実施してください。
年次点検で必ず行うべきバスダクトの測定は?
全相一括と大地間の「絶縁抵抗測定(メガ)」です。
これで湿気やホコリによる絶縁性能の低下がないかを毎年厳しくチェックします。