コーキング(シーリング材)の種類と選び方
塗装を弾くって本当。。失敗しない防水・隙間埋めの基礎知識

【超解説】とても簡単に言うと何か?

ユニットバスの壁の隙間や、外壁のタイルの間に埋まっている「ゴムのようなプニプニした詰め物」のことです。外壁からの雨水侵入を防ぎ、地震の揺れを吸収して建物のひび割れを防ぐという、建物の寿命を左右する超重要な材料です。

1. 基本概要

コーキング?それともシーリング?

建設現場では「コーキングを打つ」とも「シーリングを打つ」とも言いますが、現在では両者は全く同じものを指しています。
語源としては、英語で「詰め物をする」を意味するcaulkingと、「密閉する」を意味するsealingの違いからきており、建築用防水材の正式なJIS規格名は「シーリング材」に統一されていますが、職人の間では今でも「コーキング」という呼び名が標準的に使われています。

なぜ隙間にゴムを詰めるのか

建物の外壁(サイディングボードやコンクリート)は、気温の変化で膨張・収縮を繰り返しており、さらに地震や風によって常に微細に揺れています。
もし外壁材同士をガチガチに固定してしまうと、逃げ場を失った力が外壁自体を割ってしまいます。そこで、ボードの間に意図的に「目地(めじ)」と呼ばれる隙間を空け、そこに柔軟なゴムであるコーキングを充填することで、揺れを逃がすクッション(緩衝材)の役割を持たせているのです。

2. 構造や原理

カートリッジとコーキングガンの仕組み

最も一般的なコーキング材は、直径5cmほどの筒状の「カートリッジ」に入って販売されています。
このカートリッジの先端にノズルを取り付け、お尻の平らな部分を「コーキングガン」と呼ばれる専用の押し出し器でギュッギュッと押し込むことで、先端からペースト状のコーキング材がニュルッと均一に出てくる仕組みです。空気中の水分と反応して(湿気硬化)、数時間〜数日かけて完全なゴム状に固まります。

プライマー(接着剤)の存在

コーキング材を買ってきてそのまま隙間に流し込んでも、実は壁にしっかりと強力にはくっついていません。
隙間を埋める前に、壁面に「プライマー」と呼ばれる無色透明の専用下塗り剤(強力なボンドのようなもの)をハケで塗っておき、その上からコーキングを打つのがプロの施工の絶対的なルールです。

3. 素材・種類と規格

1. シリコン系(純シリコン)

最も安価で使用頻度が高く、水に圧倒的に強いコーキングです。お風呂場やキッチンの水回り、ガラスの隙間など「絶対に水が掛かるけれど、上から塗装はしない場所」に最適です。
最大の弱点は「上から塗料を弾いてしまうため、後から塗装が一切できない」ことと、シリコンオイルが染み出して周囲に黒いホコリの汚れを集めてしまう(シリコン汚染)ことです。

2. 変成(へんせい)シリコン系

現在の建築用コーキングの主役です。「シリコン」という長所を引き継ぎつつも、成分を調整(変成)して「上から塗装ができる」ように、さらに「周囲が汚れにくい」ように改良された万能型です。外壁の目地や屋根の板金周りなど、日光や風雨に晒される屋外全般に使用されます。

3. ウレタン系

硬化すると非常に弾力性があり、コンクリートやモルタルのひび割れ補修などに最適です。
ただし、紫外線にものすごく弱く、太陽光にそのまま当たるとボロボロになって溶けて(粉を吹いて)しまいます。そのため「打った後に必ず上から塗装をしてコーキングを見えなくする」という前提でのみ使用されます。

4. アクリル系

水性で安全性が高く、ALC(軽量気泡コンクリート)の目地などに使われていましたが、固まった後に肉痩せ(へこむ)しやすく、現在ではあまり使用されなくなりつつあります。

4. 主に使用されている場所

水回りと屋内(純シリコンの独壇場)

ユニットバスの壁と浴槽の隙間、システムキッチンの天板と壁の隙間、洗面ボウルの縁などは、すべて純シリコンでシールされています。また、水回り特有の黒カビを防ぐために「防カビ剤」が含有されたタイプのシリコンが標準的に選ばれます。

外壁と塗装下地(変成シリコン・ウレタンの戦場)

戸建て住宅の窯業系サイディングの縦目地、サッシ周り、ベントキャップ(換気口)の縁などには「変成シリコン」が充填されます。
また、マンションやビルの大規模修繕において、コンクリート外壁のひび割れ(クラック)を埋めてから全面塗装する際の下地調整には「ウレタン系」が大量に使用されます。

5. メリット・デメリット

変成シリコンのメリット・デメリット

変成シリコンのメリットは「場所を選ばない万能さ」と「塗装可能」「周囲が汚れない」という点です。DIYで何かを埋めたいがどれを買えばいいか分からない時は、とりあえず変成シリコンを買えば大失敗は防げます。
デメリットは純シリコンに比べて価格が1.5倍〜2倍ほど高い部分です。

純シリコンのメリット・デメリット

価格が安価で、水弾きや耐候性は最強です。
一方で、一般の方が外壁のひび割れを純シリコンで埋めてしまうと、後日外壁を塗り直そうとした際に、そこだけ塗料がスルスルと弾かれて一生色が乗らなくなるという取り返しのつかない悲劇(デメリット)を引き起こします。

6. コスト・価格の目安

材料費の比較とDIYコスト

ホームセンターで手軽に購入できるため、補修のハードルは非常に低いです。ただし、材料費よりも「既存の古いコーキングをカッターで綺麗に削り落とす」という撤去手間に莫大な時間がかかります。

おおよその相場(カートリッジ330ml 1本あたり)

  • 純シリコン系: 300円〜500円
  • 防カビ入りシリコン系: 500円〜700円
  • 変成シリコン系: 700円〜1,000円
  • ウレタン系: 600円〜800円

合計目安: 工具(コーキングガン 約300円、マスキングテープ、ヘラ)を揃えても2,000円程度でスタートできる経済的な部材です。
※業者に外壁全面の「打ち替え工事」を依頼する場合は、足場代を含めて数十万円〜の工事となります。

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

屋外の直射日光に晒されるコーキングの寿命は「約10年」が目安です。
弾力がなくなってカチカチに硬化し、真ん中がひび割れたり、壁から剥がれて隙間(肉離れのような状態)が見え始めたら、そこから雨水が侵入して家の骨組みを腐らせるサインですので、打ち替えの時期です。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】古いコーキングの上から新しいコーキングを上塗りする(増し打ち)

面倒だからといって、劣化したコーキングの上に新しいコーキングを乗せるだけ(俗に言う「なすりつけ」)の行為です。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

薄く上塗りされたコーキングは十分な厚みがないため数ヶ月でペロペロとめくれ上がり、元のひび割れから水が入り続けます。サッシ枠の構造的な問題がある特殊なケースを除き、基本は古いコーキングをカッターで完全にえぐり取ってから新しいものを注入する「打ち替え」が防水の鉄則です。

8. 関連機器・材料の紹介

コーキングを綺麗に仕上げるためにプロが必ず用意する関連アイテムです。

  • マスキングテープ(建築用):
    目地の両端に貼り、はみ出たコーキングが壁を汚さないようにする下準備テープ。青色系の防水・粗面用がよく使われます。
  • コーキングヘラ(金ベラ・ゴムベラ):
    注入したコーキングを表面が滑らかになるように押さえてならす(仕上げる)ための専用ヘラ。
  • ボンドブレーカー(バックアップ材):
    目地の奥深くまでコーキングが入り込まないようにするスポンジ状のテープ。コーキングは壁の左右の「2面」にだけ接着させ、奥の壁(第3の面)には接着させない「2面接着」にすることで地震の揺れによく追従するようになります。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施主・DIY層)目線

外壁のひび割れを直したいのですが、どのコーキングを買えばいいですか?

迷わず「変成(へんせい)シリコン」を購入してください。「純シリコン」で埋めてしまうと、将来10年後に外壁塗装をする際にそこだけペンキが塗れなくなり、塗装屋さんに大目玉を食らうことになります。

お風呂のタイルの隙間に黒カビが生えました。コーキングで埋めても良いですか?

水回りには「防カビ剤入り純シリコン」を使用してください。ただし、打つ前に古いカビを完全に除去し、ドライヤー等で完全に水分を飛ばして乾燥させないと、新しいコーキングの下でカビが増殖するか、すぐに剥がれてしまいます。

コーキングを打った後、何時間くらいで乾きますか?

表面に触れても指につかなくなる(指触乾燥)までは数十分〜数時間ですが、内部まで完全にゴム状に固まるには1日〜3日(冬場はそれ以上)かかります。

手にベタベタくっついて取れません!水で洗っても落ちないのですが?

コーキングは水では落ちません。固まる前ならパーツクリーナーやシンナー等の溶剤、または工業用の手洗い石鹸で拭き取れます。固まってしまったら、数日かけて自然に皮膚から剥がれるのを待つか、お湯でふやかして軽石でこするしかありません。

ホームセンターの売り場で「1成分形」と「2成分形」とありましたが違いは?

カートリッジに入っていてそのまま絞り出して使えるのが「1成分形」です。プロの業者が大きなバケツの中で機械を使って硬化剤(2液目)を混ぜ合わせて使うのが「2成分形」です。DIYでは必ず1成分形のカートリッジ仕様を買ってください。

職人(防水・塗装工など)目線

変成シリコンの上から塗装すると、ペンキがベタベタして乾かないのですが。

変成シリコンの成分と一部の油性塗料が反応して、いつまでも乾燥しない「タック(ベタつき現象)」が発生した状態です。これを防ぐために、変成シリコンの上には「逆プライマー」や「専用シーラー」を塗布してから上塗り塗料を塗る必要があります。

ウレタンコーキングを打った後、しばらく塗装工程に入れません。大丈夫ですか?

ウレタンは紫外線に極端に弱いため、打ちっ放しで数日〜数週間も太陽に晒すと表面が劣化して塗料の密着性が落ちます。工程が空く場合は速やかにサフェーサー等の下塗りを入れて紫外線を遮断してください。

コーキングの「2面接着」と「3面接着」の違いは何ですか?

木造住宅の外壁のように動く目地(ワーキングジョイント)の場合、奥の壁にもくっつく「3面接着」にしてしまうと、両サイドに引っ張られた際に真ん中から裂けてしまいます。奥にボンドブレーカーを貼り、左右の壁にだけ接着させる「2面接着」が基本です。

冬場、コーキングガンを握る手が吊りそうです。硬すぎるのですが。

冬場は材料の粘度が上がり、押し出すのに恐ろしいほどの力が必要になります。ストーブの前や専用のヒーターボックスで缶やカートリッジを適温に温めてから使用すると、驚くほど軽く綺麗に打てるようになります。

マスキングテープを剥がす絶妙なタイミングは?

ヘラで表面をならし終えたら、「間髪を入れずにすぐ」剥がすのが鉄則です。少しでも表面が固まり始めてからテープを剥がすと、ゴムがビヨーンと糸を引いたり、壁のラインがギザギザになったりと大惨事になります。

施工管理者(現場監督)目線

建具屋さんがサッシ周りに純シリコンを打ってしまいました。外壁はこれから塗装です。

現場における最悪のトラブルの一つです。そのシリコンの上に塗料は乗らないため、すべてカッターで徹底的に撤去するか、やむを得ない場合はシリコン専用のペイントプライマー(シリカ系の下塗り剤)を塗布して強引に塗装を乗せる対策が必要です。

ALC壁の目地で、シールから雨漏りしています。設計上の問題は?

ALCはパネルの動きが少ないため、例外的に「3面接着」でも問題ないとされることがありますが、目地の幅や深さが不足していると破断します。目地幅に合わせて適切な深さを計算し、プライマーの塗り忘れがないか業者に確認してください。

冬場の施工で注意すべき気象条件はありますか?

気温5℃以下、または湿度が高く目地に結露が発生している状態でのコーキングは厳禁です。プライマーもシーリング材も完全な密着不良を起こし、数ヶ月後に丸ごとポロリと剥げ落ちる原因となります。

指定メーカー以外のプライマーを使っても良いですか?

絶対にダメです。シーリング材のメーカーと種類によって、成分がぴったり噛み合うように純正プライマーが設計されています。他社製を使い回すと、化学反応が阻害されて十分な接着強度が出ない恐れがあります。

防火区画を貫通する配管の隙間に普通の変成シリコンを詰めていいですか?

違法施工になります。防火区画の貫通部は、炎を遮断し有毒ガスを防ぐため、国土交通大臣認定を取得した「耐火パテ」や「耐火シール(耐火変成シリコン)」を使用し、指定の厚みで埋めることが建築基準法で義務付けられています。

建物管理者(オーナー・保守担当)目線

10年目のマンション修繕で、コーキングの打ち替え見積もりが高すぎます。増し打ちではダメですか?

サッシの枠周辺など撤去すると防水紙を傷つける恐れがある場所は「増し打ち」が許容されますが、サイディング同士の目地などは完全に古いものを削り取る「打ち替え」が必須です。これをケチって増し打ちにすると、すぐ雨漏りしてかえって高くつきます。

外壁のコーキング部分だけが黒く汚れて筋になっています。

過去の補修で使われたシリコンコーキングから油分(シリコンオイル)が滲み出し、そこに排気ガスなどの黒いホコリが吸着した「シリコン汚染」という現象です。専用の洗浄剤を使うか、ノンブリード型(油分が染み出ないタイプ)の塗料で隠蔽塗装する必要があります。

自分で外壁のひび割れを埋めてみようと思うのですが。

変成シリコンを使えば技術的には可能ですが、2階など高所の作業は転落のリスクがあり非常に危険です。また、雨漏りの原因箇所が特定できていないまま闇雲に塞ぐと、壁の中で水が抜けなくなり、柱が完全に腐るリスクがあるためプロへの依頼をお勧めします。

内装の壁紙(クロス)の隅っこが割れてきました。コーキングで直せますか?

直せます。ただし通常のシリコンや変成シリコンではなく、内装業者(クロス屋)さんが使う「ジョイントコーク(アクリル系の水性コーキング)」を使用してください。色が豊富で壁紙の色に合わせやすく、はみ出ても濡れ雑巾で簡単に拭き取れます。

エアコンのダクト(配管)の壁穴の隙間を埋めている粘土は何ですか?

それはコーキングではなく「エアコンパテ(非硬化性パテ)」です。固まらずに粘土状を維持するため、将来エアコンを買い替える際に簡単に剥がせるようになっています。ここをコーキングでガッチリ固めてしまうと次の業者が壁を傷つける羽目になります。