認定電気工事従事者とは
ビル・工場の低圧電気工事を可能にする、第二種電気工事士のステップアップ資格
資格の概要
認定電気工事従事者は、工場やビルなどの「最大電力500kW未満の需要設備」のうち、「低圧(電圧600V以下)」部分の電気工事を行うことができる資格(認定証)です。
第二種電気工事士の資格だけでは、一般住宅や小規模店舗(一般用電気工作物)の電気工事しか行えず、ビルや工場(自家用電気工作物)の工事を行うことは法令で禁じられています。
この「第二種ではできないビル・工場の低圧工事」を行うために、試験なしで講習を受ける等により作業範囲を広げることができる、非常に実用的なステップアップ資格です。
1. 一般用電気工作物と自家用電気工作物の違い
電気工事の法律(電気工事士法)では、建物の規模によって設備が明確に区分されています。
- 一般用電気工作物: 一般住宅や小規模な店舗など、電力会社から低圧(100Vや200V)で受電している比較的小さな設備です。第二種電気工事士の資格で工事が可能です。
- 自家用電気工作物(最大電力500kW未満): 中規模のビルや工場など、電力会社から高圧(6600V等)で受電し、敷地内のキュービクル等で低圧に変換して使用している設備です。この設備の工事は、原則として第一種電気工事士でなければ行うことができません。
2. 認定電気工事従事者ができること
上記の「自家用電気工作物(500kW未満)」の中にも、高圧の危険な部分と、変圧器で100V等に落とされた低圧の部分があります。
- 低圧部分の工事が可能に: 認定電気工事従事者の認定証を取得すると、自家用電気工作物(500kW未満)の「低圧部分(コンセントの増設や照明器具の配線など)」の工事を適法に行うことができるようになります。
- できないこと: 6600Vなどの「高圧部分」の配線や、電線路(電柱間の配線)の工事はできません。これらを行うには第一種電気工事士の免状が必須です。
3. 取得のための3つのルート
認定電気工事従事者になるための筆記試験はありません。以下のいずれかの条件を満たし、産業保安監督部長へ申請することで認定証が交付されます。
- ルートA(第二種電気工事士 + 講習): 第二種電気工事士免状の交付を受けた者が、指定機関が実施する1日(計6時間)の「認定電気工事従事者認定講習」を受講するルート。最も一般的で利用者の多いルートです。
- ルートB(第二種電気工事士 + 実務経験): 第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事に関し「3年以上」の実務経験を有するルート。講習は不要です。
- ルートC(第一種電気工事士試験合格者): 第一種電気工事士の試験に合格したものの、実務経験が足りず免状交付を受けていない者が申請するルート。講習も不要です。
4. 第一種電気工事士との比較
ビルや工場の工事ができるという点で共通しますが、権限に差があります。
- 第一種電気工事士: 500kW未満の自家用電気工作物の「高圧部分」も含めた全ての工事が可能です。しかし、資格取得(免状交付)には合格後3年以上の実務経験が必要というハードルがあります。
- 認定電気工事従事者: 低圧部分しか工事できませんが、講習を1日受けるだけで誰でも(実務経験ゼロでも)取得できます。ビル管理や内装工事においては「高圧部分は触らず、低圧の照明やコンセント配線だけを行う」ケースが圧倒的に多いため、実務上はこの認定証で事足りることが多いのです。
5. ビルメンテナンス(設備管理)業界での需要
- 施設管理に最適: ビルや病院の設備管理員(ビルメン)は、日常的に施設内の蛍光灯をLEDに交換したり、レイアウト変更に伴うコンセントの移設作業を行います。これらの施設は「自家用電気工作物」であるため、第二種電気工事士だけでは違法作業となってしまいます。認定電気工事従事者を取得することで、これらの作業を適法かつ安全に行うことができるようになります。
6. 講習の内容
- カリキュラム: 配線器具並びに電気機器及び工具に関する基礎知識(1時間)、電気工事の施工方法(1時間)、自家用電気工作物の検査方法(2時間)、自家用電気工作物の保安に関する法令(2時間)の計6時間の座学講習です。実技や修了試験はありません。
7. 申請の手続きに関する注意点
- 講習修了=資格取得ではない: 講習を受けただけでは工事はできません。講習修了証を添付して、居住地を管轄する産業保安監督部へ「認定証の交付申請」を行い、プラスチック製の認定証が手元に届いて初めて作業が可能になります。
8. 多角的なQ&A
第二種電気工事士を持っていなくても認定講習を受けられますか?
受けることはできません。認定講習を受講するための条件として、「第二種電気工事士免状の交付を受けていること」または「電気主任技術者免状の交付を受けていること」が定められています。
講習の最後にテストがあって落ちることはありますか?
認定講習に修了試験(テスト)はありません。1日の講習を遅刻や早退せずにしっかりと聴講すれば、全員に講習修了証が交付されます。
認定証に有効期限や更新手続きはありますか?
有効期限はなく、更新手続きや定期的な講習の受講義務もありません。一度取得すれば一生有効な資格です。
第一種電気工事士の免状を持っていますが、この認定証も必要ですか?
不要です。第一種電気工事士の免状を持っていれば、認定電気工事従事者が行える工事範囲(500kW未満の低圧工事)はすべて網羅されているため、わざわざ取得する必要はありません。
電気主任技術者(電験)を持っていれば、申請だけで認定証をもらえますか?
電験を持っているだけでは申請できません。電験取得後に電気工作物の保安に関する「3年以上の実務経験」があるか、あるいは電験取得者が「認定講習」を受講することで、初めて認定証の交付申請が可能になります。
「最大電力500kW以上」の大規模工場の低圧工事は、この認定証でできますか?
できません。認定電気工事従事者の作業範囲は「最大電力500kW未満の需要設備」に限定されています。500kW以上の巨大な施設における電気工事は、電気工事士法ではなく、各施設の「保安規程」に基づいて行われるため、施設が選任した電気主任技術者の監督下で作業を行うことになります。
キュービクル(高圧受電設備)内の低圧ブレーカーの交換作業は認定証で可能ですか?
キュービクル内の作業は高圧充電部に近接し極めて危険であるため、たとえ触るのが低圧側のブレーカーであっても、原則として認定電気工事従事者ではなく、高圧作業に精通した第一種電気工事士が行うべき(または保安規程に基づく厳重な監督下で行うべき)と解釈されます。
認定講習の受講に際して、第二種電気工事士の「合格通知書」で申し込めますか?
申し込めません。「免状の交付を受けていること」が条件であるため、各都道府県から第二種電気工事士の免状(カードまたは手帳)が実際に手元に届いてからでなければ、講習の申し込みはできません。
ネオン工事や非常用予備発電装置の工事はできますか?
できません。特種電気工事に分類される「ネオン工事」および「非常用予備発電装置工事」については、それぞれ特種電気工事資格者の認定証が別途必要となります。
認定証を紛失した場合の再交付はどこで行いますか?
認定証の交付や再交付、氏名変更等の手続きは、都道府県(知事)ではなく、居住地を管轄する経済産業省の「産業保安監督部」に対して行います。