クリーンルーム(HEPA・FFU)とは?
目に見えないホコリすら許さない ─ 半導体と薬をつくる「超清浄空間」
【超解説】とても簡単に言うと何か?
空気中のホコリ(微粒子)を
極限まで除去した特別な部屋です。
天井に高性能フィルター(HEPA)を
並べて、超きれいな空気を
上から下に流し続けます。
半導体工場・製薬工場・手術室など
ホコリが製品や人体に
悪影響を及ぼす場所で使います。
1. 基本概要
そもそも何か
クリーンルームは、HEPAフィルターやULPAフィルターで空気中の微粒子を除去し、清浄度を管理した部屋です。
温度・湿度・気圧も精密に制御され、外部からの汚染物質の侵入を防ぐ陽圧管理が行われます。
なぜ必要なのか
半導体の回路幅は数nm(ナノメートル)で、髪の毛の太さ(70μm)の1万分の1以下です。
微小なホコリが付着するだけで回路がショートし、製品が不良品になります。
製薬工場では微生物汚染を防ぐため、手術室では感染症リスクを低減するためにクリーンルームが必要です。
2. 構造や原理
HEPAフィルター
0.3μmの粒子を99.97%以上
捕集する高性能フィルターです。
ガラス繊維の濾材を
ジグザグに折り畳んだ構造で
大きな濾過面積を確保しています。
さらに高性能なULPAフィルターは
0.15μmの粒子を99.9995%以上
捕集します。
FFU(ファンフィルターユニット)
ファンとHEPAフィルターを一体化したユニットです。
天井に格子状に並べることで、天井面から均一な清浄気流を送り出します。
個々のFFUが独立して運転でき、故障時の影響を局所化できます。
気流方式
垂直層流(ダウンフロー):天井から床に向かって一方向の清浄気流を流す。最も清浄度が高い。
水平層流:壁面から対向壁に向かって水平に気流を流す方式。
非層流(乱流方式):天井の一部からHEPA気流を吹き出す。クラス10,000〜100,000向け。
3. 素材・形状・規格
清浄度規格:ISO 14644-1(ISO Class 1〜9)。
HEPAフィルター:0.3μm粒子捕集効率99.97%以上。
ULPAフィルター:0.15μm粒子捕集効率99.9995%以上。
FFU寸法:600×600mm、600×1,200mm(天井グリッドに合わせた標準寸法)。
室内差圧:+5〜+15Pa(陽圧管理)。
温度管理:22±1℃(半導体)、20〜25℃(製薬)。
湿度管理:45±5%RH(半導体)、40〜60%RH(製薬)。
4. 主に使用されている場所
半導体製造工場(ウエハー加工ライン)、
液晶・有機ELディスプレイ工場、
製薬工場(無菌製剤室)、
病院の手術室・無菌病室、
食品工場の包装室、
光学機器・精密機器の組立室。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
製品歩留まりの向上:微粒子汚染を防ぐことで半導体の歩留まり(良品率)を大幅に向上させます。
安全性の確保:手術室の清浄化で術後感染率を低減し、患者の安全を守ります。
品質の保証:製薬のGMP基準に適合する環境を提供し、医薬品の品質を保証します。
デメリット(短所・弱点)
莫大な建設コスト:一般的なオフィスの5〜20倍の建設費がかかります。
膨大なエネルギー消費:24時間365日の空調運転で、電力消費は一般建物の10〜50倍です。
厳格な運用管理:入室手順・着衣規定・清掃手順など厳格なルールの遵守が必要です。
6. コスト・価格の目安
おおよその相場
- FFU(1台、600×600): 5万〜15万円程度
- HEPAフィルター(交換用、1枚): 1万〜5万円程度
- クリーンルーム建設(1m²あたり): 20万〜100万円程度(クラスにより大幅に変動)
- ミニクリーンブース(簡易型): 50万〜300万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
HEPAフィルターは3〜5年で交換(差圧管理で判断)。
プレフィルターは3〜6ヶ月で交換。
FFUのファンモーターは10〜15年。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
クリーンルームのドアを
開放したままにすると
陽圧が維持できず
外部の汚染空気が侵入して
清浄度が急激に悪化します。
エアシャワーを通過し
ドアは必ず閉めてください。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
清浄度の悪化は半導体の歩留まり低下に直結し、1日あたり数百万〜数千万円の損害が発生します。
製薬では微生物汚染により製品回収(リコール)に至る可能性があります。
8. 関連機器・材料の紹介
- エアフィルター:
プレフィルター・中性能フィルター。
▶ 詳細記事はこちら - DDC・PLC:
清浄度・温湿度の精密制御。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
クリーンルームって何がきれい?
空気中の目に見えない微粒子(ホコリ)が極限まで少ない部屋です。
一般的な部屋には1m³あたり数百万個の粒子がありますが、クリーンルームでは数十個以下です。
なぜ特別な服を着る?
人体から大量の微粒子(皮膚片・毛髪・繊維くず)が放出されるためです。
クリーンルーム専用の防塵衣で微粒子の放出を抑えます。
手術室もクリーンルーム?
はい。手術室はISO Class 5〜7のクリーンルームとして設計されています。
電気代はどのくらい?
FFUの消費電力だけで1m²あたり100〜500W、24時間365日運転で年間電気代は1m²あたり10〜50万円です。
簡易型のクリーンルームはある?
はい。ミニクリーンブースは既存の部屋に設置できる簡易型で50万〜300万円程度です。
FFUの設置方法は?
天井のTバーグリッドにFFUを載せる方式が標準です。
荷重(20〜30kg/台)に対する天井の耐力確認が必要です。
差圧管理の配管は?
室間の差圧を測定するための圧力チューブをDDCに接続します。
チューブは折れ曲がりなく敷設し、結露水が溜まらないようにしてください。
天井グリッドの気密性は?
FFUとTバーの接合部からの漏れが清浄度に影響します。
ガスケットテープで確実にシールしてください。
パーティクルカウンターとは?
空気中の微粒子数を測定する計測器です。
施工完了後の清浄度検証に使用します。
施工時の清掃は?
引き渡し前に専門の清掃業者によるクリーニングと清浄度測定が必要です。
清浄度クラスの選定は?
半導体前工程→ISO Class 3〜5、製薬→Class 5〜7、食品→Class 7〜8が一般的です。
FFU天井のカバー率は?
ISO Class 5の垂直層流では天井面積の60〜80%以上のFFUカバー率が必要です。
気密試験の方法は?
室内を正圧にして減圧試験を行い、漏洩量が基準以下であることを確認します。
省エネ対策は?
FFUの回転数制御、ミニエンバイロメント方式(局所清浄化)でエネルギーを削減できます。
GMP対応の注意点は?
製薬のGMP(医薬品製造管理基準)では清浄度・差圧・温湿度の連続記録が義務付けられています。
HEPAフィルターの交換時期は?
差圧計でフィルター前後の圧力差を監視し、初期値の2倍に達したら交換時期です。
清浄度の日常監視は?
パーティクルカウンターで定期測定(週1〜月1回)し、記録を保管してください。
差圧管理の注意点は?
ドアの開閉で瞬間的に差圧が崩れますが、5秒以内に復帰することを確認してください。
フィルター漏れ試験は?
年1回、DOP法またはPAO法でHEPAフィルターのリーク試験を実施してください。
省エネ運用は?
非稼働時のFFU回転数を下げるセットバック運転で20〜30%の省エネが可能です。