DGR(地絡方向継電器)とは?
漏電電流の方向を検出し構内事故のみを遮断する継電器

【超解説】とても簡単に言うと何か?

漏電の電流と電圧の「方向」を判別し、
自分の施設側の漏電だけに反応する高精度な保護継電器です。

1. 基本概要

DGR(Directional Ground Relay)は「地絡方向継電器」
と呼ばれます。地絡(漏電)事故が起きた際に、「漏電の強さ」
だけでなく「電気がどちらに向かって流れているか(方向)」を分析して、
事故が自分たちの施設内で起きているのか、それとも他の場所で起きているのかを
見極めるリレー(制御装置)です。

判断を下すために、ZCT(電流のセンサー)と、ZPD(電圧のセンサー)
の両方からデータを受け取ります。この2つの波形のズレ(位相)を計算することで、
「もらい事故」による不必要な停電を完全に防ぐことができます。

2. 構造や原理

DGRの内部には、高度な波形分析を行う電子回路(昔は円盤が回る誘導形)
が組み込まれています。ZCTから送られてくる「零相電流」と、
ZPDから送られてくる「零相電圧」という2つの波形を同時に取り込みます。
この2つの波形の「ズレ(位相角)」を計算し、漏洩電流が自分の施設側に向かって
いる(内部事故)のか、それとも電源側へ向かっている(外部からのもらい事故)
のかを瞬時に判定します。そして内部事故の時だけ、VCB(遮断器)に「切れ!」
という信号(トリップ信号)を送ります。

3. 素材・形状・規格

外観と形状

  • 盤面埋込型(フラッシュマウント): キュービクルの扉(パネル表面)
    に四角い穴を開けて埋め込む一般的な形状です。
  • プラグイン型(ドローアウト型): 配線が繋がったベース部分と、
    リレー本体が分離できる構造です。故障時の交換やメンテナンスが非常に容易(カチャッと
    引き抜ける)なのが特徴です。

主な規格

  • JIS規格: JIS C 4609 (高圧受電設備用地絡方向継電装置)
    に準拠したものが使用されます。

4. 主に使用されている場所

保護協調の要として、キュービクルの一番目立つ場所に配置されます。

  • キュービクルの受電盤パネル面: 異常時にランプが点灯し、
    すぐに操作・リセットができるよう、目の高さのパネル表面に設置されます。

5. メリット・デメリット

メリット

  • もらい事故(不要動作)の完全な防止: 無方向性GRの最大の欠点である、
    他の工場の事故で自分のビルまで停電してしまう理不尽なトラブルを原理的に防ぎます。
  • ケーブルが長い施設での安定稼働: 構内の高圧ケーブルが数百メートルに及ぶ広大な施設で
    も、自身のケーブルが持つ静電容量(充電電流)による過敏な誤作動を回避できます。

デメリット

  • 初期コストと設置スペースの増加: ZPDという大掛かりなセンサーが追加で必要に
    なるため、盤のスペースが必要でコストも高くなります。
  • 結線や設定が極めてシビア: ZCTとZPDの極性(プラスマイナスのようなもの)
    を1箇所でも間違うと、いざという時に「100%もらい事故で停電する装置」
    になってしまいます。

6. コスト・価格の目安

概算コスト目安(本体のみ)

約 80,000円 〜 200,000円(機種による)

  • リレー本体のみの価格です。ZCTやZPDのセンサー類は別途必要です。
  • 盤に組み込んで配線する製作費や、現場でのテスト費用がかかります。

耐用年数の目安:
電子部品・基板で構成されているため、メーカー推奨更新時期は約10年〜15年 です。
劣化したまま放置すると、落雷などのノイズで誤作動し、突然ビルが停電します。

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

DGRの内部は微細な電子部品の塊であるため、メーカー推奨更新時期は約10年〜15年
す。これを過ぎると、電解コンデンサの液漏れや基板の劣化により、
何もないのに勝手にブレーカーを落とす「不要動作」や、逆に事故時に落ちない「不動作」
のリスクが高まります。

絶対にやってはいけない悪い使用方法(施工ミス)

【NG事例】ZCTやZPDからの配線の「極性(+-)」を逆に繋ぐこと

電流のK・L方向や、電圧信号の極性を確認せずに、
DGRへの端子接続を逆に繋いでしまう結線ミスです。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

極性を逆に繋ぐと、DGRの「内部・外部の方向判定が180度反転」します。結果として、
自社で漏電事故が起きた時には「外の事故だと勘違いして遮断しない(波及事故を起こす)」
、一方で近所の工場で事故が起きた時には「自分の事故だと勘違いして必ず自ら停電する(も
らい事故を起こす)」
という、最悪のシステムが完成します。これを防ぐため、
竣工時には必ず「方向性試験」という模擬テストを行い、
配線が正しいことを実証する義務があります。

8. 関連機器・材料の紹介

【広告枠】記事中 インフィード広告

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

普通のブレーカーと何が違うの?

普通のブレーカーは「電気の使いすぎ」や「ショート」で落ちますが、
DGRは電気の「漏れ(漏電)」を見張る特別な監視装置です。

もらい事故とは具体的に何ですか?

近所の全く別のビルで漏電が起きた際、同じ電線に繋がっているあなたのビルまで
「うちの漏電だ!」と勘違いして停電することです。

ランプが赤く点灯していますが?

DGRが漏電を検知して動作した証拠(動作表示)です。勝手にリセットせず、
すぐに電気主任技術者を呼んでください。

交換には停電が必要ですか?

はい。安全のため、ビル全体の電気を止める(全停電)作業が数時間必要になります。

古いと何が悪いのですか?

内部の電子部品が劣化し、なんの異常も無いのに勝手に停電のスイッチを入れる「不要動作」
を起こすリスクが高まります。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

GRとDGRの見分け方は?

盤面にZPD(コンデンサ)が設置されていればDGRです。また、
リレー本体に電圧入力端子があるのがDGRです。

動作試験で「位相特性」を測る意味は?

もらい事故の方向(遅れ電流)では絶対に動作せず、内部の事故方向のみで動作する「範囲」
が正常かを確かめるためです。

PASのSOGとキュービクルのDGRの違いは?

役割は同じですが、DGRはキュービクル内のVCB等を落とし、
SOGは電柱の上のPASを落とします(保護協調で連携します)。

タップ設定(整定値)の目安は?

基本は0.2A(200mA)と 0.2秒 などに設定しますが、PAS(上位)
より必ず速く切れるように時限の保護協調をとります。

雷のあとに停電しました。

雷のサージ(瞬間的なノイズ)を地絡と勘違いして、DGRが不要動作した可能性があり
ます。機器の故障確認が必要です。

施工管理者目線

盤の図面で確認すべきポイントは?

ZCTのK・Lの方向と、リレー側のKt・Ltへの結線指示が、
正の極性で描かれているかをシーケンス図で確認します。

DGRだけ後から付け足せますか?

GRからDGRへの変更は可能ですが、高圧線にZPDを新設するスペースと停電工事が
別途必要になります。

試験機の手配はどうしますか?

DGRの試験には、電流と電圧の両方を出せる「位相特性試験器(DGRテスター)」
という特殊な機材が必要です。

ケーブルのシールド接地を通す方向は?

ZCTを貫通して端末処理した高圧ケーブルのシールドアースは、
「必ずZCTの中を通し返してから」接地極に落としてください。

これを間違えるとどうなりますか?

シールドアースの通し方を間違えると、ケーブル自体の静電容量をキャンセルできず、
正常な測定ができなくなります。

職人(施工者・電気工事士など)目線

制御線の色に決まりはありますか?

厳密な決まりはありませんが、ZCT線、ZPD線、電源帯を誤結線しないよう、
必ずマークチューブを入れて確認します。

ZPDの結線で怖いミスは?

T相をアースに落とす端子を付け忘れると、基準となる電圧(零相電圧)が正常に出ず、
DGRが機能を喪失します。

古いリレーから新しいリレーへの交換のコツは?

背面の端子配列がメーカーや新旧で全く異なる場合が多いです。旧リレーの配線を外す前に、
一本ずつ新しい番号札を付けることです。

デジタル型とアナログ形の違いは作業に影響する?

最近のデジタル・プラグイン型は、ベース部分だけ先に配線して本体を後からカチャッと
挿せるので、盤内作業が非常に楽です。

VCBとの連動テストはどうやるの?

DGR本体の「テストボタン(強制動作)」を押し、バンッ!
という大きな音とともにVCBが遮断(飛ぶ)のを確認します。

【広告枠】記事下部 個別広告