電気錠・入退室管理設備とは?
電気通信によって施解錠を遠隔操作・管理できる錠前システム
【超解説】とても簡単に言うと何か?
カードや暗証番号でドアの施錠・解錠を電気的に制御する、入退室管理システムです。
1. 基本概要
そもそも何か
電気錠設備は、従来の使い物理的な「金属の鍵を回す」代わりに、
電気の力(ソレノイドやモーター)でデッドボルト(カンヌキ)を動かす
錠前本体と、「いつ誰が入ったか」を記録・許可するカードリーダー等、
それらを統括する「電気錠制御盤」からなる総合アクセス制限設備です。
なぜ必要なのか
鍵を落とすリスク(紛失に伴う全シリンダー交換の地獄)をなくし、
インターホンと連動して遠隔での解錠(オートロック)を実現したり、
社員の入退室履歴(ログ)を完全に記録して「部外者の侵入をシャット
アウトする強固なセキュリティ(機密保持)」を確立するためです。
2. 構造や原理(接点とモーター)
開け閉めの原理(無電圧接点)
インターホンやカードリーダーにカードをかざすと、制御盤に対して
「合言葉である微弱な電気信号(無電圧メイク接点等)」が短く送られます。
信号を受け取った制御盤は、扉の中にある錠前(モーター)に向かって
数十ボルトの「作動電力」を流し込み、ガチャン!と鍵を開けます。
扉の状態監視(センサ)
電気錠には開閉用の配線だけでなく「状態監視」の線も繋がっています。
そのため制御盤や管理室のパソコン画面では、「今、扉が開いているか」
「鍵は閉まっているか」という扉の現在の全ステータスが
リアルタイムのランプ点灯やデータとして一目で把握できる仕組みです。
3. 素材・形状・規格
錠前の種類(MIWAとGOAL)
国内の電気錠市場のシェアは、物理鍵と同じく「美和ロック(MIWA)」と
「ゴール(GOAL)」の2大巨頭で圧倒的大半を占めています。
一瞬だけ通電させる「モーター錠(AL3M等)」や、常に電気を流して
磁石で扉を吸着させておく「電磁石錠(マグナロック)」などがあります。
リーダーの規格(ICカード・生体認証)
扉の外の壁に付くリーダー(読み取り機)は、Suica等と同じような
FeliCa・Mifare規格の「非接触ICカード」が最も主流ですが、
銀行の金庫やデータセンターなどの超重要施設では「暗証番号」や
「指静脈・顔認証」など、偽造不可能で本人しか開けられない規格が使われます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
マンションの集合エントランス(オートロック)、無人ホテルの部屋のドア、
オフィスビル(社員証での入退室)、病院・介護施設の扉、
データセンター、さらには個人のスマートホーム化された
戸建て玄関ドア(スマートロック)まで幅広く普及しています。
具体的な設置位置
「電気錠本体」は金属製の重たい扉(サッシ)の中に完全に内蔵され、
「カードリーダー」は扉のすぐ横の壁の胸の高さに設置されます。
「電気錠制御盤」は、配線をいじられて不正解錠されないよう、
管理室の奥や、鍵のかかったEPS盤の中など安全な場所に隠されます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
社員が退職したり鍵をなくしたりした際、金属の鍵なら「マンション全体の
鍵を数十万円かけて交換する」羽目になりますが、電気錠システムなら
「パソコン上でその1枚のカードの登録データを消すだけ(費用0円)」
で即座に無効化できる。このランニングコストと安全性の差が絶大です。
デメリット(短所・弱点)
扉という「毎日何百回も激しく開け閉めされる物理的に動く部分(可動部)」
に対して、細い弱電線を通さなければならないため、配線の金属疲労による
断線や、蝶番(ヒンジ)部分でのショートといった、「電気と物理の
組み合わせ特有の機械トラブル」が非常に起きやすい繊細な設備です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
錠前本体だけでなく、サッシ(扉)の特殊加工、壁の中の配管、
リーダー、制御盤、登録用PCソフトまでの「システム一式」となるため
単なる鍵交換とは比較にならない高額なインフラ投資となります。
おおよその相場(機器本体+システム工事費用の目安)
- オフィス用簡易セット(1扉・暗証番号/テンキーのみ): 約 15万〜30万円
- 業務用入退室管理システム(カードリーダー+盤+PCログ管理)
: 1扉あたり 約 40万〜80万円〜 - 電気錠本体の修理・取替(錠前のみの交換): 約 5万円〜10万円
合計目安: 複数拠点の大規模導入では数百万〜数千万円のプロジェクトになります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
錠前の内部の小さなモーターなどの「機械的寿命(耐用年数)」は
『約7年(あるいは約10万回の開閉動作)』がメーカー推奨の限界です。
制御盤の基板自体は約10〜15年持ちますが、ドアの内部の錠前だけは
過酷な打撃を受ける消耗品として、定期的に部品を入れ替える必要があります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
システムが「カギを閉めよう」とモーターを動かしてカンヌキを出している
途中のタイミングで、人間が力任せにドアノブをガチャガチャと
引っ張って開けようとする行為(ドアの暴れ)です。金属のカンヌキと
扉の枠が激しく衝突し、内部のギアが欠けて一発で致命傷を負います(モーターロック)。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
ギアが壊れたモーターが空回りし、「鍵を開けることも閉めることも
できない」状態になり、部屋に閉じ込められるか、扉が開きっぱなしの
防犯崩壊状態に陥ります。深夜であれば救出のための緊急手配など
パニック(大混乱)となり、高額な修理代(錠前全交換)が請求されます。
8. 関連機器・材料の紹介
電気錠と切っても切れない関係にある「防犯」の相棒設備です。
-
インターホン設備:
顔を確認した後、遠隔で電気錠を開ける「オートロックシステム」
を実現するために電気錠制御盤と線で繋がっている設備です。
▶ 詳細記事はこちら -
自動火災報知設備(自火報盤):
火災時に、逃げ遅れを防ぐため電気錠を「強制的に全開(解錠)」
させるための非常連動信号を電気錠の盤へ送り込む重要設備です。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
停電になると、オートロックの扉は開かなくなって閉じ込められますか?
ご安心ください。日本の消防法において、停電時や火災時には
バッテリーが切れた時点で「常に鍵が開く(アンロック)状態になる」ように
安全重視の設定(フェイルセーフ設定)にすることが義務付けられています。
中から外へ出る時は、どうやって鍵を開けるのですか?
部屋の中から外へ出る(退室)時は、カードをかざさなくても
扉の横にある「プッシュボタン(解錠ボタン)」を押すか、
扉に近づくだけでセンサーが反応して自動で鍵が開くシステムが主流です。
スマホをカード代わりにして開けることはできますか?
可能です。設定や機種にもよりますが、スマホの中に入っている
「モバイルSuicaアプリ」や専用のBluetoothアプリの通信機能を、
システムに社員証と同じように登録しておくことでスマホ解錠が実現できます。
カードを忘れてしまったら、絶対に中に入れないのですか?
万が一の機械の故障やカード忘れ等に備え、電気錠という名であっても、
シリンダー部分には「昔ながらの物理的な金属の鍵」も必ず刺さるように
なっており、管理人が持つマスターの非常用の物理鍵(非常解錠)で開けられます。
扉が閉まっても、何秒か「鍵が締まるまで」時間がかかっている気がします。
わざとそう調整しています。「扉が閉じた」というマグネットセンサーの
反応があってから「約1〜2秒後」にモーターでカンヌキを出すように設定し、
跳ね返りや服の挟み込みによる中途半端な衝突(モーターロック)を防いでいます。
電気錠の配線の「通線コネクタ(通電金具)」とは何ですか?
壁(建具枠)から、全く分離して動いている「扉の中の錠前本体」へと
線を引き渡すための蝶番部分の特殊金具です。扉の開け閉めと一緒に
線が曲がったり伸びたりするため、ここが最も断線トラブルが起きる鬼門です。
美和ロックの「AL3M」などの代表的モーター錠の特徴は?
瞬時にモーターを回して解錠・施錠を行うため、電磁石と違って
「開いている時か閉まっている時しか電力を消費しない」エコな錠前です。
その代わり、構造が非常に複雑でメカニカルなため高価です。
マンションで、電気錠の線を延長する時に圧着等で繋いで良いですか?
原則は「専用の延長ケーブルでコネクタ同士をカチッと挿すだけ」です。
末端を切って自分でスリーブ圧着等をしてしまうと、微小な抵抗値の
変化で盤が「線が繋がっていない(異常)」と誤認して作動しなくなる事があります。
後付けのカードリーダーを付ける時、壁のコンクリートの「ハツリ」は必要?
リーダーは壁に埋め込むフラッシュ型と、壁にポコッと飛び出す
露出型があります。コンパネ壁なら穴を開けられますが、コンクリートの
躯体壁の場合は、露出型を使って線を「モール(配線カバー)」で隠して這わせます。
配線を間違えるとどうなりますか?
電気錠には開閉用の「モーター線(動力線)」と、状態を監視する
「センサー線」の束があります。これらを間違えて接続した状態で
電力を流すと、高い確率で錠前本体か制御盤の基板が一瞬でショート(焼損)します。
電気錠の工事で、一番他業者と喧嘩(揉め事)になりやすい部分は?
「建具屋(サッシ屋)」との責任範囲の押し付け合いです。
ドアの中に錠前本体をセットしてドアと一緒に吊り込むのは建具屋、そこに盤から
線を繋いでシステムとして動かすのは電気屋の役目であるため、
事前の緻密な打ち合わせが命です。
火災報知器との「移報連動(解錠連動)」の法的なルールは?
大勢の人が逃げる経路にある電気錠は、火災報知器から「火事です!」
という信号が電気錠盤に届いた瞬間に、強制的に「解錠状態のまま固定」され、
逃げ惑う人々が閉じ込められて焼死するのを防ぐ絶対的な連動義務(消防法等)があります。
自動ドアメーカーと、電気錠盤の制御の取り合い(連携)はどうしますか?
「電気錠盤」側がテンキーで認証し『開いてよし』という「無電圧接点」を、
「自動ドアのエンジン(モーター)の基板」に送ることで扉が開きます。
無電圧接点のON幅(何秒間信号を出すか)などを事前に協議設定します。
防雨仕様(屋外用)のカードリーダーは激しい雨でも壊れませんか?
JIS規格の防雨等の基準は満たしていますが、「防水」ではないため
台風の横殴りの雨などが長期間当たると、内部の基板が腐食して壊れます。
必ず「雨よけの庇(ひさし)」等がある環境でなければ設置してはいけません。
セキュリティ的に「マグナロック(電磁石錠)」が敬遠される理由は?
モーター式と違い、電気を常に送って「超強力な磁石」で鉄板同士を
吸い付けてロックをしているため、もし停電時用のバッテリーも無くなった場合、
「磁石の効力が消えて扉が自動的に完全フリーで全開になる」
という防犯上の弱点があるためです。
退職した社員のカードを急いで無効化したいです。
管理用パソコン(または管理用テンキー等)から該当の
カードの「登録ID(社員番号等)」を選択し、削除(抹消)の操作を
行えば、その瞬間からそのカードをかざしてもエラー音が鳴って扉は開きません。
電気錠の鍵穴(シリンダー)の動きが悪いです。油を差してもいい?
絶対にダメです。「KURE 5-56(クレ556)」のような一般的な潤滑油を
鍵穴に吹くと、油とホコリが混ざって中で泥状に固まり内部の基板も死亡します。
必ずメーカー指定の「鍵穴専用のパウダースプレー(白い粉)」を使ってください。
制御盤から「ピーピーピー」と異常を知らせるブザーが鳴り止みません。
多くの場合「扉が閉まっているのに鍵(カンヌキ)が正常な位置に入らなかった」
モーターロックエラーや、扉が開けっ放し(こじ開け)にされている警告です。
扉と枠の隙間に石が挟まっていないか、閉まり具合がズレていないか確認してください。
「アンチパスバック機能」というオプションは何の意味がありますか?
「入室リーダーでピッ」とやらずに前の人にくっついて(共連れで)入った人が、
帰り際に「退室リーダーでピッ」とやるとエラーを出して出れなくする
不正入室を厳密に管理する機能です。データセンターなど高度な防犯環境で用いられます。
扉の丁番(ヒンジ)の部分の配線カバー(通電金具)が破れて線が見えています。
非常に危険な「大動脈出血」目前のサインです。
中の線が断線する(切れる)と、ある日突然鍵が開かなくなり締め出しを食らうか、
断線した線同士がショートして高額な制御盤まで一気に焼き壊れる最悪の事態になります。