フロアコンセント(アップコン)とは?
足元に潜み、必要な時だけ姿を現す床下の電源
【超解説】とても簡単に言うと何か?
部屋の床面に埋め込まれた、壁から遠い位置でも電源やLANを取り出せるコンセントです。
1. 基本概要
そもそも何か
フロアコンセント(床用配線器具)は、壁面に設置できない広い空間の
中央部などで、床下空間(またはスラブ埋設管)から配線を立ち上げ、
床面に設置して電源(100V)やLAN・映像ケーブルなどの接続口を
提供するための強固な金属製・樹脂製の配線器具群の総称です。
なぜ必要なのか
広い会議室やオフィスなどで壁のコンセントしか無い場合、何十人もの
社員が床に長い延長コードを這わせることになり、足を引っ掛けて
転倒事故が起きたり、ケーブルが断線して火災になるためです。
床から最短距離で電源を取ることは、安全と美観における必須条件です。
2. 構造や原理(隠すか、出すか)
ポップアップ型(アップコン)
床にある丸いや四角の金属ボタンを軽く踏む(または押す)と、
バネの力で「ポンッ」とコンセントの挿し口が斜め上に飛び出す構造です。
掃除機をかける時だけ出して、終わったら足で踏んでフラットにしまえます。
インナーコンセント(収納型)
床にパカッと開く「蓋」があり、そのくぼみ(箱)の中にコンセントが
斜めに並んでいる構造です。プラグを挿したまま蓋を閉めることができ、
ケーブルだけが蓋の隙間から少し出ているので、機器をコンセントに
繋ぎっぱなしにする場所(会社のデスク下など)でよく使われます。
3. 素材・形状・規格
材質(アルミ・真鍮・樹脂)
人間が上に乗ったり、重い台車が上を通過しても絶対に潰れないよう、
カバー部分は分厚いアルミダイカストや真鍮(しんちゅう)などの
屈強な金属で作られています。タイルカーペット用などは
樹脂製のものもあり、床の「仕上げ材」に合わせたデザインが選ばれます。
防水型フロアコンセント
飲食店の厨房など、床にホースで水を撒いて清掃するような場所向けに、
コンセントの差し込み口にゴムパッキンやねじ込み式のキャップが付いた
「完全防水」の床コンセント規格も存在します。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
オフィスビル、大学の講義室、カフェの客席、デパートの催事場など、
「人が壁から離れた中央部に集まって電気を使う場所」です。
最近は一般住宅のダイニングテーブルの下など、ホットプレートやスマホ
充電用として意図的に仕込む設計が人気を集めています。
二重床(OAフロア)との関係
コンセントを床に置くということは、床の下に空間(配線ルート)が
必要です。オフィス等では床を数センチかさ上げする「OAフロア」や
「フリーアクセスフロア」という二重床システムがセットで構築され、
その好きな場所のパネルをくり抜いてフロアコンセントをはめ込みます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
壁の配置に縛られず、島型のデスク配置や中央に置くテーブルなど
レイアウトの自由度が無限大に広がります。
また、床にコードが這わないため、お掃除ロボットが引っかかることもなく
オフィスの床が非常に美しく安全な空間に保たれます。
デメリット(短所・弱点)
最大の敵は「水とゴミ」です。床という重力が物を集める場所にあるため、
こぼしたコーヒー等の液体がもろに流れ込みショート(漏電)する
危険性が最も高い配線器具です。髪の毛や埃も溜まりやすく、
トラッキング火災の温床になりやすいためこまめな清掃が必須です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
壁コンセントと違い、強靭な金属のギミックで作られているため
部品代だけで数倍〜10倍以上の値段がします。また、コンクリートの
床スラブに直接埋め込む場合は、建物を建てる前の基礎工事の
段階から「床下配管」を仕込んでおく莫大な見えないコストがかかります。
おおよその相場(器具本体の価格帯目安)
- 一般的なアップコン(丸型2口・アルミ): 約 4,000円〜7,000円/個
- オフィス用インナーコンセント(四角・大容量): 約 7,000円〜15,000円/個
- 防水丸型フロアコンセント(屋外・厨房用): 約 15,000円〜25,000円/個
合計目安: 新築戸建てでリビングの床に1箇所増設(配管費含む)で約2万〜4万円。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
踏まれることによるバネや接点の物理的な劣化が壁より早いため、
「おおよそ7年〜10年」が交換目安です。「ボタンを踏んでも
引っかかって飛び出してこない」「プラグを挿すとグラグラする」などが買い替えのサインです。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
足でボタンを踏んで「コンセントが飛び出した状態」のまま、
その上に机の脚を乗せたり、人間が何度も蹴飛ばしたり踏ん付けたり
する行為です。内部の精巧なアルミ素材のヒンジやプラスチックの爪が
ボキリとへし折れ、中に押し込まれて二度と使えなくなります。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
コンセントが斜めに向いたまま床に引っかかって固定されなくなり、
プラグを挿そうとするとコンセントごと床の奥底へズボッと沈み込みます。
中の100Vの電線が金属のフチでこすれて被覆が破れ、
強烈な火花が散って大火災や感電事故を引き起こす末路を迎えます。
8. 関連機器・材料の紹介
フロアコンセントと組み合わせてよく使われる配線材料です。
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壁コンセント・スイッチ:
フロアコンセントだけでは足りない箇所や、テレビの配線等、
床と壁は表裏一体のコンビネーションで部屋の電気を構成します。
▶ 詳細記事はこちら -
分電盤(漏電ブレーカー):
水やコーヒーをこぼしやすいフロアコンセントは漏電リスクが高いため、
分電盤にある大元の感度良好な「漏電ブレーカー」の守りが必須です。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
床のコンセントにコーヒーをこぼしてしまいました。
非常に危険です。内部の電極が濡れてショートする可能性があります。
すぐに分電盤の該当ブレーカー(電源)を落とし、表面の水分を拭き取った後、
絶対にプラグを挿さずに電気屋さんに内部が乾燥・無事か確認してもらってください。
飛び出すタイプ(アップコン)ではなく、床に埋まったままのものは何?
フタを開けて中に挿す「インナーコンセント」というタイプです。
アップコンは「掃除等の一時的な使用」向け、インナーコンセントは
「パソコン等の常時接続」向けで、コードが出たままでも床がフラットになります。
今住んでいるマンションの床に、後からフロアコンセントを増やせますか?
多くの場合「不可能(または数百万円の大改修工事になる)」です。
通常のマンションは床下のコンクリート(スラブ)に直接木の床やクッションが
貼られているため、床下に配線を這わせる「数センチの空間」が全くないからです。
足で踏んで蓋を開けたら、跳ね上がったカバーが弁慶の泣き所に当たりました。
古いタイプのアップコンは強力なバネで勢いよく飛び出すため危険でした。
現在の製品は、安全対策としてオイルダンパーなどが組み込まれ、
「スーー…」とゆっくり上品に開くように改良されています(ソフトアップ機能)。
床のコンセントまわりに、髪の毛や埃がびっしり溜まっています。
放置するとそこへ湿気が加わりトラッキング火災が発生します。
コンセントの蓋を開けて、掃除機で中のゴミをこまめに吸い取るか、
使わない時期はガムテープ等で目張りする(見た目は悪いですが)などの対策が必要です。
木床用とコンクリートスラブ用では、アップコンの部品が違う?
全く違います。「木床用アップコン」はフローリングの穴のフチに「つば」で
引っ掛けて固定するだけですが、「スラブ用」はコンクリート打設前に
金属の丸い「アウトレットボックス」を寸分違わぬ高さで埋め込む神業施工が必須です。
OAフロアの上にフロアコンセントを後付けする際の穴あけのコツは?
専用の「ホールソー(穴あけドリル)」を使い、フロアパネルの
指定サイズ(例:直径110mm)の真円を抜きます。
少しでも斜めになったり大きすぎると、つばが引っかからずコンセントごと床に落ちます。
コンセントの蓋と、床の「タイルカーペットの目地」の合わせ方は?
美観を左右する腕の見せ所です。
角型のフロアコンセントの蓋には、上に床と同じカーペットを切り抜いて
貼り付けられる凹みがあります。カーペットの模様の向き(ストライプ等)まで
ピタリと狂いなく繋がるように施工するのが一流の仕事です。
床下(OAフロア)の配線で「VVF」ではなく「VFF(ビニル平型)」を使っても良い?
VFF(延長コードのような柔らかい多芯線)を床下配線に使うのは違法(NG)です。
固定配線には必ず「VVFケーブル」等の強固な被覆の単線を使うか、
ハーネスジョイント(差し込み式)の専用安全配線システムを施工します。
インナーコンセントの配線をするとき、どれくらい線を長く遊ばせますか?
インナーコンセント自体が床板を外した時に持ち上げられるように、
床下で「約30cm〜50cmのケーブルのたるみ(余丁)」を持たせて結線します。
ピッチピチで配線すると、将来メンテナンスで蓋を開けようとしても開かなくなります。
「ハーネス配線」という言葉をオフィスの工事でよく聞きますが?
パナソニックの「幹線分岐ケーブルシステム」等のことです。
昔のように1個1個コンセントを作らず、カチッカチッとコネクタをはめ込むだけで
床下のOAコンセントシステムがレゴブロックのように一瞬で完成する画期的な工法です。
コンクリート打設(埋込)でのフロアコンセント設計で失敗するポイントは?
「仕上がり床面(FL)」の高さ計算を数ミリ誤ることです。
左官屋さんが仕上げのモルタルを塗った後、打設前の仕込みボックスが
床から何ミリ出っ張るか、
あるいは凹みすぎるかの計算を間違うとリカバリー不能の惨事です。
店舗のフロアコンセントの「漏電ブレーカーの組み分け」での注意点は?
フロアコンセントは水をこぼされ漏電するリスクが非常に高いため、
「レジの真裏の重要コンセント」と同じブレーカー回路に混ぜてはいけません。
客が床コンに水をこぼした瞬間に、店舗のPOSレジまで全落ちして営業停止になります。
オフィスの見積もりで、フロアコンセントより「OAタップ」を多用する理由は?
圧倒的なコストダウンとレイアウトの柔軟性です。
金具で床に固定するフロアコンセントを100個つけると予算が尽きますが、
床下の見えない所に「ハーネスOAタップ」を転がしておき、必要なデスクの下の
床パネルの隙間から線を出す運用にすれば、工事費も部品代も激減するからです。
床コンの蓋から、強電の100Vと弱電のLANケーブルを一緒に出して良い?
「1つのインナーコンセントの中」に、強電と弱電の端子を並べて設計するのはOK
(間にセパレータの鉄板で仕切りを入れる等の法規を満たしているため)ですが、
出すときに線同士を取り乱して絡ませるとノイズが入るため綺麗に取り出す必要があります。
オフィスの床のコンセントが何個か「通電していない」と報告がありました。
床下のOAタップの数珠つなぎ(ハーネス)の接続部が、
地震や配線の引っ張りなどによって「半抜け」になっているケースがよくあります。
該当する周辺のOAフロアのパネルを吸盤で開け、床下のコネクタの挿し直し点検を行います。
アップコンの蓋のバネが壊れて、常にコンセントが上に飛び出たままです。
通行人が足を引っ掛けて大怪我をする(安全配慮義務違反になる)ため
放置は厳禁です。応急処置として上から養生テープ等で強制的に床と平らに
固定し「故障中」とデカデカと貼り紙をして、直ちに業者へ交換部品を手配してください。
「床のワックスがけ」をする業者が入る日の注意点は?
清掃業者には「フロアコンセントの中には絶対にワックスの水分を
落とし込まないこと(養生テープで塞ぐ等)」を徹底的に指導してください。
ワックス(水と化学薬品)が入り込んで一撃で基板がショートする事故が跡を絶ちません。
戸建てのダイニングに床コンセントを作ったが、ルンバ(掃除機)に邪魔されない?
使っていない時に床とフラットにさえなっていれば、最新のお掃除ロボットは
段差と認識せずに綺麗に上を乗り越えて掃除してくれます。ただし、
プラグを挿しっぱなしにしているとロボットがコードを巻き込んで大惨事になります。
「抜け止めコンセント」に無理やり挿した人がいて、コンセントが破壊されました。
「右にひねってロックする」という構造を知らない人が、
引っこ抜こうとして抜けず、力任せに引っこ抜いて内部の金具ごと粉砕するトラブルです。
不特定多数(学生など)が使う場所には、あえて抜け止めを「採用しない」のが防衛策です。