空調動力盤とは?
大型空調機や換気扇へ電力を供給し制御する専用盤
【超解説】とても簡単に言うと何か?
エアコン室外機やファンなど、空調機器専用のモーターをまとめて制御する動力配電盤です。
1. 基本概要
そもそも何か
空調動力盤は、空気調和設備(ボイラー、冷凍機、温水発生機、空調機、
パッケージエアコン、各種ファン類)へ専用で電力供給を行う制御盤です。
なぜ必要なのか
空調設備はビルの中で最も大量に電気を消費する機器グループであり、季節に
よってピークが変動するため、専用盤として独立させて電力管理を容易にします。
2. 構造や原理
空調自動制御システムとの連携
単に電気を流すだけでなく、建物の中央監視装置(BAS)と通信し、室温センサーの
指示に基づいてモーターの回転数を変えるインバータなどが大量に搭載されます。
インターロック回路(連動制御)
「冷水ポンプが回ってからでないとチラーを起動させない」といった、機器を
保護するための順序制御(インターロック)の回路が盤内に組まれています。
3. 素材・形状・規格
大電流に耐える堅牢な構造
1台で数百アンペアの電流を使う空調機もあるため、盤内の銅バー(母線)は非常に太く、
盤自体も自重を支えるために重厚な鋼板製の自立キャビネットが多くなります。
冷却ファンの標準装備
盤内に組み込まれるインバータが激しく発熱するため、屋外・屋内を問わず、
筐体の上部に強制排気を行う換気扇(ファン)がほぼ標準で装備されています。
4. 主に使用されている場所
熱源・機械室
巨大なボイラーやチラーシステムが設置されている地下の機械室や、屋上の
大型クーリングタワー(冷却塔)のすぐ脇など、空調機器の密集地に置かれます。
各階の空調機械室
各階に「空調機(AHU)」という空気の混合箱があるビルの場合、その
空調機械室(機械のすぐそば)に専用の空調動力盤が設置されます。
5. メリット・デメリット
省エネ運用への柔軟な対応(メリット)
デマンドコントロール(ピーク時の電力制限)など、ビル全体の省エネ指令を
一括で受け取り、空調の出力を絞るなどの高度な連携制御が可能になります。
ノイズと熱への対策問題(デメリット)
大容量のモーターを制御するため、高調波ノイズによる電子機器への悪影響や、
盤自体の猛烈な発熱といった、電気的な副作用の対策が極めて難しくなります。
6. コスト・価格の目安
インバータの有無がコストを左右
単純にブレーカーとスイッチだけの盤に比べ、周波数を変えて省エネ運転する
インバータ装置を多数搭載する空調動力盤は、価格が飛躍的に高騰します。
おおよその相場(盤本体の製作費・取付工事費除く)
- 中規模・基本機能構成: 約40万円〜80万円
- 大規模・インバータ多数搭載: 約100万円〜数百万円
合計目安: 制御の高度さに応じて数百万に達することも珍しくありません。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
盤内の配線用遮断器類は15年程度ですが、インバータなどの電子系制御機器は
非常に短命で、7年〜10年程度での計画的な部品交換が必要です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
盤内の温度が異常上昇し、インバータが熱暴走による内部焼損を起こします。
真夏にビル全館の冷房が突然停止し、営業補償問題へ発展するケースがあります。
8. 関連機器・材料の紹介
空調動力盤と対になって建物の心臓部を構成する機器や盤です。
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モータコントロールセンタ(MCC):
チラーなどの大型機器に給電する、引き出しユニット式の最高級動力盤です。
▶ 詳細記事はこちら -
一般動力盤:
エレベーター等、空調以外の建物の動力を支える標準的な制御盤です。
▶ 詳細記事はこちら -
衛生動力盤:
建物内の「水(給水・排水)」の流れを専門に制御するための動力盤です。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
ショッピングモールの屋上にある大きな箱は空調動力盤ですか?
室外機等に電気を送る空調動力盤の可能性が高いです。ステンレス製で
雨に耐える構造になっており、そこから大量のエアコンへ電力を分配します。
なぜ空調専用の盤が必要なのですか?
空調はビルで一番電気を食う設備であり、真夏と真冬で極端に
消費電力が変わるため、専用にして管理した方が無駄を省けるからです。
一般人でも操作することはありますか?
絶対にありません。部屋の壁にあるエアコンのリモコンは触りますが、
その大元の電気を制御している動力盤は、資格者が鍵を開けて操作します。
盤に「自動」と「手動」のスイッチがあるのはなぜ?
普段はパソコン(中央監視)の指令で動く「自動」にしていますが、
点検時やセンサーが壊れた時に人間が強制的に動かせるよう「手動」があります。
「インバータ」って何ですか?
モーターの回転速度を自由自在に操る魔法の箱です。これがあると、
必要な分だけ空調を弱く回すことができ、電気代を劇的に節約できます。
空調動力盤への引き込みケーブルが太すぎて曲がりません。
数百スケ(sq)のCVケーブルは硬いため、入線経路に十分な
曲げ半径が取れるよう、盤の底上げ(基礎高の確保)等に配慮します。
計装屋(自動制御業者)との取り合い(境界)はどこまで?
一般的に電気屋は盤への主電源とモーターへの動力線を引き、
計装屋は盤内の端子台へ温度センサーなどの細い信号線を繋ぎにきます。
パッケージエアコン(PAC)回路の設計で気を付けることは?
PACは機械側で制御を行うため、動力盤側にはマグネットを設けず、
「直入れ(ブレーカーのみ)」とし、盤からは電源だけを送りっ放しにします。
屋上設置の盤で、ケーブルの引き込み処理の注意点は?
雨水の侵入を防ぐため、必ず盤の下部(底面)から通線し、
貫通部にはパテを充填して、防水処理を完璧に行うのがセオリーです。
空調動力盤の納期が遅れやすいのはなぜですか?
空調機メーカーのスペック確定や計装屋との制御回路のすり合わせが
難航し、盤の内部回路(シーケンス)がなかなか決定しないためです。
盤の防錆対策(塩害対策)が必要になる基準は?
一般的に海岸線から2km以内の屋上に設置する場合は、耐塩害仕様の
塗装(ウレタン樹脂塗料の厚塗り等)やSUS304+塗装の筐体を指定します。
熱源機械室の盤で「底上げ基礎(コンクリート座)」を高くする理由は?
機械室は配管から水が漏れるリスクが常にあるため、床に水が溜まっても
盤が水没してショートしないよう、基礎を100〜200mm高く施工します。
高調波対策の「ACL回路(交流リアクトル)」とは?
インバータが発生させる有害なノイズ(高調波)を吸収するための
重いコイルで、設計段階で盤内にスペースを確保しておく必要があります。
盤の前面に必要な「作業スペース(離隔距離)」は?
内線規程により、扉を開けて安全に点検・操作ができるよう、
盤の前面に最低でも1メートル以上のクリアランスを確保して配置します。
盤の内側にホコリが分厚く積もっています。どうやって掃除すべき?
稼働中に触るのは極めて危険です。ビルの停電点検(年次点検)の際に、
電気を切った状態で、工業用掃除機と乾いたハケで慎重に清掃を行います。
盤内部の配線が黒く焦げ臭いのですが。
端子の緩みによる異常発熱か、機器の内部でショートが起きかけて
いる危険信号です。火災の一歩手前ですので、直ちに保安協会等を呼んでください。
空調のフィルター掃除と、動力盤の点検は関係ありますか?
大いにあります。空調フィルターが詰まるとモーターに過大な負荷がかかり、
盤内の過負荷保護(サーマル)が働いて設備が緊急停止する原因になります。
冬場に盤の内側が結露して水滴がついています。
寒暖差の激しい屋上などで多発します。盤内に設置する小型ヒーター
(スペースヒーター)を取り付け、盤内を温めて結露を防ぐ対策が急務です。