LAN・ネットワーク設備とは?
ビル内のデータ通信を支える有線・無線のネットワーク設備

【超解説】とても簡単に言うと何か?

光回線の引込みからフロアのLAN端子まで、
建物内のネットワーク通信基盤を構成する配線設備です。

1. 基本概要

そもそも何か

LAN(Local Area Network)設備とは、ある建物や敷地内の限られた
エリアにおいて、コンピューター同士を接続し、大容量のデータを
高速でやり取りするための通信網(インフラ)を構築する設備です。
外部のインターネットと建物を繋ぐ「基幹回線網」もこれに含まれます。

なぜ必要なのか

現在、企業の業務はクラウド化され、家庭でも動画配信やIoT家電が
普及しているため、全室に安定した超高速の通信網が必須だからです。
また、防犯カメラやインターホン等の設備も全てLANの規格(IP網)に
乗る方向に進化しており、これがないと最新のビルは機能しません。

2. 構造や原理(ルーター・HUB・ケーブル)

建物の入り口(ルーター)

道路の電柱から光ケーブル等で引き込まれた「外の大きなネットの海」と
「建物内のLAN」の境目となるのがルーターです。外部からの
不正なアクセスを防ぐ関所(ファイアウォール)の役割と、
各パソコンへデータの宛先を振り分ける(ルーティング)役割を持ちます。

分配と分岐(L2スイッチ・HUB)

ルーターから来た1本の線を、各フロアや各部屋の何十台もの
パソコンへタコ足配線で分ける箱が「スイッチングHUB(ハブ)」です。
単に分けるのではなく、電気信号のパケットの「宛名(MACアドレス)」
を瞬時に読み取り、必要なポートだけにデータを送り出します。

3. 素材・形状・規格

LANケーブルのカテゴリ(Cat規格)

LANケーブルの中身は、ノイズを打ち消すために2本ずつより合わせた
8本の細い銅線(ツイストペア)でできています。この編み込みの
精度によって「カテゴリ」が分かれます。「Cat5e や Cat6」は1Gbps対応、
「Cat6A 以上の太いケーブル」は10Gbps対応という世界標準規格です。

光ファイバーケーブル

100m以上離れたフロア間や、より大容量の通信が必要なメインの
縦幹線(バックボーン)には、銅線ではなく「光ファイバーケーブル」
が使われます。電気の代わりに、レーザーの「光の点滅」を使うため
ノイズの影響を一切受けず、数キロ先まで光の速さで通信できます。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

「ネットが繋がらない場所はない」と言えるほど、一般住宅から
学校の全教室(GIGAスクール構想)、超巨大データセンターまで、
文字通り地球上のすべての建築物に敷設される最も需要の大きな設備です。

具体的な設置位置

建物の地下や1階にある「MDF室(主配線盤室)」にNTT等の光回線が
引き込まれ、そこから各階の「EPS(電気パイプシャフト)」の盤の中にある
ハブを経由して、各デスクの足元や壁にある「情報コンセント
(RJ-45モジュラージャック)」へと末端の配線が行き渡ります。

5. メリット・デメリット

メリット(有線LANの長所)

Wi-Fi(無線ネットワーク)が普及した現代でも、あえて物理的な
ケーブル(有線LAN)を壁に引き回す最大のメリットは「圧倒的な
安定性とスピード、そしてセキュリティ」です。壁を隔てても電波が
途切れず、他人に傍受されたり電子レンジのノイズで切断されません。

デメリット(短所・弱点)

パソコンの台数やレイアウトが変わるたびに、床下や壁を這わせた線の
モール配線やルート変更の「配線工事」が必ず発生することです。
また、規格の進化が早いため、10年前のLAN線を壁の中に埋め込んでいると、
最新の光回線を引いても壁の線がボトルネックになり遅くなります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

機材(HUB等)の価格は非常に安価になりましたが、
LAN工事の最大のコストは「線を綺麗に這わせるための職人の人工代」と
「先端のコネクタ作りと通信テストの緻密な作業費」です。

おおよその相場(機器+工事費用の目安)

  • Cat6ケーブルの配線(1本・10m程度、天井裏隠蔽等): 約 1万〜2万円
  • 壁のLANコンセント(ジャック)新設: 約 5,000円〜1万円/箇所
  • 業務用スイッチングHUB(PoE給電対応等): 約 3万円〜10万円/台

合計目安: 企業の新しいオフィスの配線全体で数十万〜数百万円規模。

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

ケーブル自体の物理的寿命は20年ちかく持ちますが、
「Wi-Fi6」や「10ギガ光回線」などの新しい通信規格の登場により、
「Cat5e」までの古いケーブルでは速度が追いつかなくなるため、
実質的なシステムの陳腐化(更新時期)は「約10年」で訪れます。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】HUBの中でケーブルをぐるっとループ(輪っか)にして繋ぐ

机の下のLANケーブルがごちゃごちゃになって適当にハブに挿した結果、
「Aのハブから出た線をAのハブの別の穴に挿す」等のループ配線を作る行為です。
パケットが内部で無限にぐるぐると回り続ける「ブロードキャストストーム」が
発生し、会社のネットワーク全体がデータでパンクして全断(通信断)します。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

一人の社員の机の下での無作為なタコ足配線ミスによって、
本社ビルの本社機能(メール・IP電話・基幹システム)が完全に
ストップし、復旧するまで全社員の業務が停止するばかりか、
数千万円規模のビジネス上の機会損失という恐ろしい損害をもたらします。

8. 関連機器・材料の紹介

LANの配線によって、単なる通信から「電源供給」などを受ける機器です。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

家の壁にある電話線の穴(モジュラー)にLANケーブルを挿せますか?

挿せませんし通信もできません。
LANのジャック(RJ-45・8ピン)は、電話のジャック(RJ-11・6ピン)より
ひと回り大きいため物理的に入らず、中の電線の本数や役割も全く違います。

Wi-Fiがあるのに、わざわざLANケーブルを繋ぐ意味はありますか?

大いにあります。
オンラインゲームのラグ(遅延)防止や、大容量ファイルのダウンロードなど、
1ミリの通信ロスも許されない「究極の安定」を求める場合は有線が一択です。

LANケーブルの色(青、赤、黒など)に意味はありますか?

性能的な意味は全くありません(単なる色付けです)。
ただし、オフィスやデータセンターの管理においては「赤色は重要なサーバー用」
「青色は一般社員用」など、抜いた時の事故を防ぐため色分けルールを作って運用します。

ケーブルをドアの隙間やカーペットの下に潰して敷いても良いですか?

お勧めしません。LANケーブル内の細いツイストペア銅線が
踏まれて押しつぶされると、中の電波(ノイズの打ち消し効果)が狂ってしまい、
「繋がっているのに速度が致命的に出ない」という嫌なトラブルの原因になります。

「ルーター」と「ハブ」の違いは?

「ルーター」は交差点で車に行き先(別の町)を指示する「警察官」です。
「ハブ」は一つの町の中で、ただ道(車線)を何本にも分岐させる「枝分かれ道」です。
外のインターネットへ繋ぐためには絶対に1台のルーター(警察官)が必要です。

職人(施工者・電気工事士など)目線

LANケーブルの先端作り(RJ-45圧着)で一番難しいポイントは?

8本のカラフルな極細の線(橙白・橙・緑白・青・青白・緑・茶白・茶等)を、
規定の順番(B結線等)通りに指先で真っ直ぐに綺麗に揃えたまま、
透明なプラグに差し込んで専用ペンチ(かしめ工具)で失敗せずに潰す作業です。

ケーブルの配線距離の限界(規格)は何メートルまでですか?

途中にHUB(中継)を挟まない場合、規格上の限界長は「約100メートル」です。
これ以上引っ張ると信号が少しずつ減衰してしまい、
パケットロスが発生して最終的に通信できなくなります。

LANケーブルと一緒に強電の100V電線を結束バンドで縛っても良い?

基本的には絶対NGです。
100Vの電線から出る電磁波ノイズがLANケーブルに飛び移り(誘導障害)、
通信速度の著しい低下や通信断を引き起こすため、必ず数センチ離して配線します。

工事後の「フルークテスト」とは何のことですか?

数百万円する「フルーク(Fluke)」等の超高性能ネットワークテスターを使い、
配線したケーブルがCat6やCat6A等の「スピード(周波数特性)の基準値を
完璧に満たしているか」を測定し、合格成績書として客に提出する本気の試験です。

「PoE(ピーオーイー)」とは何ですか?

Power over Ethernetの略です。
LANケーブルの「データ通信線」の隙間を使って、機材を動かすための「電気(電源)」
も一緒に送る規格です。コンセントのない天井の防犯カメラ等の施工に必須です。

施工管理者目線

オフィスのLAN配線工事で、将来のトラブルを防ぐための指示は?

壁や床下から出したケーブルの両端に、必ず「系統番号」や「行先」を書いた
ラベル(タグ)を巻き付けることです。
これが無いと障害発生時、100本の線の中から1本の断線を探す地獄に陥ります。

Cat6(カテゴリ6)とCat6Aの価格差は大きいですが、どちらを提案すべき?

将来的には絶対に「Cat6A」です。Cat6(1Gbps)は既に天井が見えていますが、
Cat6A(10Gbps対応)なら10年後でも帯域不足になりません。
ただし6Aは線が太くて硬いため配管(CD管)サイズを太く設計し直す必要があります。

「MDF室」と「EPS室」の違いを教えてください。

MDF室はビルの1階や地下にある「NTTなどの外部回線が一番最初に引き込まれる
大元の心臓部の部屋」です。そこから、EPS室(各階の縦の配管・シャフトスペース)
を経由して、各階・各部屋のハブへと枝分かれしていきます。

「L2スイッチ」とただの「ハブ」はどう違いますか?

厳密には同じようなもの(現在のハブはほぼすべてL2スイッチ=MACアドレスを
処理するスイッチングハブ)ですが、企業向けの高いL2スイッチは
「VLAN(ネットワークを仮想的に分割する機能)」などの設定ができる管理機能付きです。

床の「OAフロア」とはLAN工事に関係ありますか?

大いに関係があります。床を二重にしてその「床下の空間」にLANケーブルや電源線
を無数に隠し、オフィスの好きな場所の床から線を引き出せるようにする床材です。
これがないと床がケーブルのスパゲティ状態になり、社員が足を引っ掛けて転びます。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

ネットが急に繋がらなくなり、ハブのランプが「全部ピカピカ激しく」光っています。

前述の「ループ配線(ブロードキャストストーム)」が発生した典型的なサインです。
誰かが間違えて線を抜いて同じハブに挿したか、壊れたルーターがパケットを
無限増殖させています。ループ対策機能(検知機能)付きのハブへの交換を推奨します。

「ルーターを再起動してください」とサポートによく言われるのはなぜ?

ルーターは実は「24時間365日働きっぱなしの小さなパソコン」だからです。
数ヶ月連続で動かすと内部のメモリ(熱や処理のゴミ)がパンクして
動作がフリーズするため、電源を抜いてリセットするだけで約8割の通信障害は直ります。

壁のLANジャックがグラグラで、触ると奥に引っ込んでしまいます。

中の「取付枠(金属等)」のツメが折れているか、プラグを抜くときに
斜めに暴れてプラスチックの強度が限界を超えたためです。
この状態で使うと中でケーブルが断線してショートするため、コンセント毎交換が必要です。

古いビルで「光回線が引けない(VDSL方式になる)」と言われました。

ビル全体のMDF室までは「最新の光」が来ていますが、そこから各部屋までの
壁の中の縦配管の中身が「昔の電話用の銅線(アナログ)」のままで細すぎて
光ケーブルを通せないため、電話線を裏技で使ってネットをする妥協策です(遅いです)。

長期間使っていないLANケーブルのツメが、触った瞬間にパキッと折れました。

プラスチック(ツメ)の経年劣化(加水分解など)です。
折れたままハブに挿すと、自分の重みで微妙に抜けかかって「接触不良の
見えない通信障害」を延々と引き起こすため、
必ずツメ折れ防止の新しい線へ交換してください。