航空障害灯とは?
航空機に高い建物の存在を知らせるための赤い表示灯
【超解説】とても簡単に言うと何か?
航空法に基づき、高層建築物や鉄塔の存在を航空機に知らせるための赤い点滅灯です。
1. 基本概要
そもそも何か
航空障害灯(こうくうしょうがいとう)とは、
航空法第51条によって「地表または水面から60メートル以上
の高さを持つ建築物」への設置が厳格に義務付けられている、
航空機に対して障害物の存在を知らせるための特殊な保安照明です。
なぜ必要なのか
夜間や悪天候時において、パイロットからの視界は極度に悪化します。
そこに数百メートルの巨大なビルや真っ黒な送電鉄塔が存在すると、
気付いた時には回避不能となり、多数の乗客と地上の市民を巻き込む
取り返しのつかない凄惨な激突・墜落事故を引き起こすからです。
2. 構造や原理
内部構造
全方位(360度)から視認できる赤いガラスまたは樹脂製グローブ、
超高輝度のLED光源(昔は電球やキセノンランプ)、制御箱、
そして複数の建物間で一斉に「チカッ、チカッ」と点滅の
タイミングを合わせるためのGPS同期アンテナ等で構成されます。
作動原理
周囲の明るさを感知して、日没とともに自動で点灯モードに入ります。
「低光度」は常時点灯し、「中光度」「高光度」は定められた
厳しい回数(1分間に20〜60回など)でフラッシュ(点滅)します。
万回が停電しても消えないよう、無停電電源(UPS)等と連動します。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
赤いサイレンのような円柱形か、白い大型の丸い形状をしています。
超高所での落雷、強風、台風、豪雨、積雪に数十年間耐え抜くため、
重厚なアルミ合金ダイカストの完全密閉ボディで作られており、
鳥がとまれないよう上部に「鳥除けのトゲ」が付いています。
種類や関連規格
高さに応じて「低光度(赤色・常時点灯)」「中光度(赤色・点滅)」
「高光度(白色・強力フラッシュ)」の3つのクラスに分かれます。
150m以上の超高層ビルの昼間には、高価な白色フラッシュの高光灯か、
建物を赤白の「昼間障害標識(紅白塗装)」にするかの選択になります。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
高さ60mを超えるマンションやオフィス等の超高層ビル群、
山奥から繋がる送電鉄塔、火力発電所の巨大な煙突、
東京タワーなどの電波塔、全国の風力発電の風車、
さらには建設中のビルで高く伸びた「タワークレーン」の先端です。
具体的な設置位置
建造物の「最上端(一番高い場所)」に設置されるのが大原則です。
ただし、建物が100m、150mと巨大になるにつれ、最上端だけでなく
一定の間隔(例えば45mごとなど)で中間階の壁面(四隅)にも
ベルト状にぐるりと取り付ける追加義務が発生します。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
ドクターヘリや報道ヘリが低空を飛ぶ際や、羽田等の大空港周辺の
ルートにおいて、夜空の「赤い光の海」として障害物の高さを
立体的にパイロットへ伝え、安全な空の交通網を死守します。
また、街のシンボルとしての夜景の一部(情緒)にもなります。
デメリット(短所・弱点)
1分間に数十回も強烈な赤い点滅を繰り返すため、
同じ高さにある隣の高層マンション住民の部屋へ赤い閃光が差し込み、
「チカチカして眠れない」という深刻なクレームに繋がることがあり、
上方以外は見えないようにする等の配光対策(遮光)に苦慮します。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
国土交通省(航空局)の厳しい認定を受けた特殊機器であり、
さらに複数台の同期制御盤やUPS盤とセットになるため、
一般的な照明とはケタ違いの「システム導入費用」が掛かります。
おおよ所の相場(システム一式の場合)
- 低光度(小型ビル等)システムの総額: 50万円〜150万円前後
- 中〜高光度(超高層・白色等)システムの総額: 数百万円〜数千万円規模
合計目安: 機器システムに百万円単位+特殊高所の莫大な足場/ヘリ代
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
LED光源自体の寿命は約4万時間(夜間点灯のみで約10年)、
制御盤や電源ユニットを含めたシステム全体の寿命は10〜15年です。
超高所でのランプ交換は命がけの作業(足場代が超高額)なため、
古い電球型は至急、長寿命の「LED型」への更新が推奨されています。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
雷等のサージで装置が故障し消灯していることに管理者が気付かず、
しかも故障に気付いた後にも「すぐに直せばいいや」と過信して、
管轄の空港事務所(国土交通省の機関)への報告手続きを怠ることです。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
報告を怠ると、パイロットの航空図表(NOTAM)に危険情報が
載らないままになります。その夜、濃霧の中で急患を運ぶ
ドクターヘリのパイロットが真っ黒な鉄塔の存在に気付けず激突し、
全員が死亡。管理者は航空法違反で逮捕・書類送検されます。
8. 関連機器・材料の紹介
航空障害灯と連携して動作する施設内の重要設備です。
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自家発電設備:
停電時でも必ず航空障害灯への電源供給を絶やさないための発電機。
▶ 詳細記事はこちら -
分電盤(制御盤):
複数灯の点滅タイミング等を一括処理して監視する中枢システム。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
赤い点滅がチカチカするビルと、ずっと点いたままのビルの違いは?
建物の高さによる「光度」の違いです。60m級の「低光度」は点いたまま(常時点灯)、
90mや150m以上の「中光度」「高光度」になると赤や白での【点滅】が義務になります。
複数のビルが一斉に同じタイミングで「チカッ」と光るのはなぜ?
「同期点滅」という技術です。
個々のビルがバラバラに光るとパイロットの目が疲労し「光の海」
で高さを錯覚するため、GPS信号等を用いて群周辺で同時に点滅させています。
昼間なのに激しく「真っ白な光」がピカッピカッと光る煙突があります。
あれは「高光度航空障害灯」です。
煙突を赤と白のシマシマ(昼間障害標識)に塗らなくても良い代わりに、
昼間でも数万カンデラという太陽の下でも見える強烈な光を放っています。
東京スカイツリーのような超巨大な建物には何個付いているのですか?
数百メール単位になると、頂上だけでなく、外壁の柱周りにも数十メートル間隔の「段」
を作って隙間なく(数十個単位で)大量に設置されています。
航空障害灯を勝手に消してしまうと犯罪になりますか?
はい、航空法違反という重罪です。パイロットの命を危険に晒すため、
50万円以下の罰金等が科せられ、事故が起きれば業務上過失致死傷罪に問われます。
超高所の煙突の上で器具を交換する作業はどうやりますか?
高所作業車は届きませんし、足場も組めません。
フルハーネスを装着した特殊作業員(ロープアクセス技術者など)が、
ハシゴ等で登頂し、強風に煽られながら命懸けで交換します。
落雷(雷サージ)ですぐに基板が壊れないようにする工夫は?
建物の「一番上」という落雷をモロに受ける位置にあるため、
電源盤側と器具側の両方に強力なSPD(避雷器)を取り付け、
雷の電気を安全に大地へ逃がす施工が必須です。
同期用のGPSアンテナはどこに設置すべきですか?
ビルの周辺の高い壁(パラペット)などの陰にならない、
空に向かって360度の視界が完全に開けた屋上の最高部に、
専用の短いポールを立てて設置します。
ケーブルの配線距離が200mを超えます。注意点は?
配線が長くなると電圧降下(電圧ドロップ)が起きて規定の明るさが出ないため、
許容電流ではなく電圧降下の計算を行って、太いケーブル(8sqや14sqなど)を選定します。
鉄塔のような形状への設置と、四角いビルへの設置の違いは?
細い鉄塔等は「頂部に1個」で全方向から見えますが、
巨大な四角いビルは中央に1つ置いても「下から見上げたパイロット」
には隠れて見えないため、四隅(4つ)に設置します。
そもそも、このビルに設置義務があるかはどう判断するのですか?
設計段階で建物の「標高」
ではなく「地表面からの高さが60m以上か」を確認します。ただし、
飛行場の近く等では「制限表面」の特例で60m未満でも設置が求められます。
近隣のマンションからの「赤い光が鬱陶しい」というクレーム対策は?
上空の航空機からの視認性を損なわずに、下方向(地上側)
へ漏れる無駄な光だけをカットする「下方遮光ルーバー」
などの対策品をメーカー特注で手配して設置します。
足場用の巨大なタワークレーンの頂上にも設置義務はありますか?
はい。クレーン等の一時的な仮設物であっても、
高さが60mを超える場合は仮設の航空障害灯(ソーラー式やバッテリー式の一体型等)
の設置と航空局への届出が義務です。
新築工事で設置した後、航空局への手続きは誰が行いますか?
設置者(施主や建築主)の名前で、
所管の空港事務所に対して「設置に関する届出書」を提出します。
工事代理人が書類作成を代行して事前に根回しを行うのが一般的です。
設計上、どうしても規定の四隅に置けません。
原則は四隅ですが、デザイン上の理由などでどうしても無理な場合は、
管轄の航空局(空港事務所)へ図面を持ち込んで相談し、
「例外措置(特段の許可)」を事前交渉します。
もしも障害灯が故障で消えてしまった場合、まず何をすべきですか?
【超重要】修理業者を呼ぶ前に、
まずは至急「管轄の空港事務所の運用時間外受付(24時間)」に電話し、
『〇〇ビルの障害灯が〇灯消灯しています』と通報しなければなりません。
点灯状況の「毎日の目視確認」は誰がやるのですか?
ビル管理法上の管理責任者(常駐の設備員など)が、
夕暮れ時や夜間に屋上や地上から目視で点灯しているか、
監視盤のエラーが出ていないかを毎日確認する過酷な義務があります。
昔のネオン管タイプからLEDに変えると電気代は安くなりますか?
圧倒的に安くなります。消費電力が約10分の1になり、
さらに白熱球のような「短寿命での高所球切れ交換作業(莫大な人件費)」
が不要になるため、更新メリットは絶大です。
同期式のフラッシュのタイミングが、他のビルとずれてきました。
屋上にある同期用のGPS受信アンテナがハトのフン等で塞がれているか、
GPS受信機内部の時計(タイムサーバー等)が故障しています。
同期ズレは航空局の指導対象です。
隣にうちのビル(100m)よりも高いビル(150m)が建ちました。
他の高い建造物によって完全に隠れた側(パイロットから見えない面)
については、航空局と協議・申請を行うことで、
一部の障害灯の点灯義務を免除・撤去できる場合があります。