鉄筋の加工と配筋
コンクリートの弱点を補い、建物の「骨」となる重要な工程

【超解説】とても簡単に言うと何か?

建物の骨組みとなる鉄の棒(鉄筋)を、設計図通りに組み立てる作業です。
コンクリートは「押される力」には非常に強いですが、「引っ張られる力」には弱いという弱点があります。
逆に鉄筋は「引っ張られる力」に強いため、この2つを組み合わせることで、地震や台風に耐えられる頑丈な建物(鉄筋コンクリート造)が完成します。

1. 鉄筋の役割と各部の名称

主な鉄筋の種類と役割

  • 主筋(しゅきん): 柱や梁の長手方向に配置される太い鉄筋。建物にかかる主な力(曲げ・引張)を負担します。
  • 帯筋(おびきん・フープ): 柱の主筋の周りをぐるりと囲むように配置される鉄筋。地震時に柱がせん断破壊(ズレて折れること)するのを防ぎます。
  • あばら筋(スターラップ): 梁の主筋を囲むように配置される鉄筋。梁のせん断破壊を防ぐ役割があります。
  • スラブ筋: 床板(スラブ)に縦横に網目状に配置される鉄筋。

2. 鉄筋工事の重要ポイント

かぶり厚さ(かぶりあつさ)

鉄筋の表面からコンクリートの表面までの最短距離を「かぶり厚さ」と呼びます。
コンクリートはアルカリ性で鉄筋をサビから守っていますが、年数が経つと空気中の二酸化炭素によって表面から中性化していきます。
かぶり厚さが不足していると、早く鉄筋がサビて膨張し、コンクリートが剥がれ落ちる(爆裂)原因となります。建築基準法で部位ごとに厳格に規定されています。

定着と継手(つぎて)

鉄筋は1本の長さが限られている(通常5.5m〜12m程度)ため、途中で繋ぐ必要があります。

  • 定着(ていちゃく): 鉄筋の端部を別の部材(柱から梁など)に深く埋め込んで、抜けないようにすること。
  • 重ね継手: 鉄筋同士を一定の長さだけ重ね合わせて、結束線で縛る最も基本的な繋ぎ方。
  • ガス圧接継手: 鉄筋の端面同士を合わせ、酸素アセチレン炎で加熱しながら圧力をかけて一体化させる方法。
  • 機械式継手: 鋼管スリーブに鉄筋を挿入し、モルタルを注入したり、ねじで固定したりする方法。

3. 施工の流れ

  1. 加工図の作成・加工: 構造図面をもとに、鉄筋をどの長さで切り、どう曲げるかの加工図を作成し、工場で切断・曲げ加工を行います。
  2. 搬入・荷取り: 加工された鉄筋を現場に搬入し、クレーン等で所定の位置に配ります。
  3. 配筋・結束: 加工図に従って鉄筋を配置し、交差する部分をハッカーという工具と結束線(細い鉄線)で縛って固定します。
  4. スペーサーの設置: 正しい「かぶり厚さ」を確保するため、鉄筋と型枠の間にプラスチックやコンクリート製の「スペーサー」を挟み込みます。
  5. 配筋検査: コンクリートを打設する前に、設計図通りに鉄筋が配置されているか、かぶり厚さが確保されているかなどの検査を受けます。

4. 注意点・法規制

【重要】配筋工事における厳禁事項
・配筋後に鉄筋の上を無闇に歩いて、スラブ筋などを曲げたり押し下げたりすること(かぶり厚さ不足の原因)。
・型枠内に入ったゴミや結束線の切れ端を取り除かずにコンクリートを打設すること。
・ガス圧接の際に、風雨が強い中で適切な防風・防雨対策を行わずに作業すること(接合不良の原因)。

5. 多角的なQ&A

一般の方向け

鉄筋工事とは何ですか?

コンクリートの中に鉄筋(鉄の棒)を組み込む工事です。コンクリートは圧縮力に強い一方で引張力に弱いため、引張力に強い鉄筋を入れることで互いの弱点を補い、強い構造体を作ります。

鉄筋が錆びても大丈夫ですか?

コンクリート内部は強アルカリ性環境のため、適切なかぶり厚さ(鉄筋からコンクリート表面までの距離)が確保されていれば、鉄筋は不動態被膜で保護され錆びません。かぶり不足は最も深刻な施工不良の一つです。

マンションの構造に使われる鉄筋の太さは?

一般的なマンションでは、柱にD22〜D32(直径22〜32mm)、梁にD19〜D29、壁やスラブにD10〜D16程度の異形鉄筋が使用されます。高層マンションでは柱にD38〜D51の太径鉄筋も使用します。

「配筋検査」とは何ですか?

コンクリートを流し込む前に、鉄筋の本数・太さ・間隔・かぶり厚さなどが設計図通りに施工されているかを確認する検査です。コンクリートで埋まると修正できないため、非常に重要な検査です。

鉄筋工の仕事はキツいですか?

重い鉄筋(D32で1本約6kgを何十本も運ぶ)を扱い、夏は炎天下、冬は冷たい鉄に触れる過酷な仕事です。しかし技能を身につければ独立も可能で、日当は1.5〜3万円と建設業の中でも高い水準です。

業界関係者向け

鉄筋の継手方法にはどのような種類がありますか?

①重ね継手(最も一般的、鉄筋径の40倍以上の重ね長さ)、②ガス圧接継手(D16以上、最も普及した機械式)、③機械式継手(カプラー、ネジ節鉄筋等)、④溶接継手の4種類が主流です。

かぶり厚さの最小値は?

建築基準法施行令第79条で定められており、土に接する部分は60mm以上、屋外の柱梁は40mm以上、屋内の壁床は20〜30mm以上が最小値です。設計かぶりは最小かぶり+10mm以上とするのが一般的です。

スペーサーの配置基準は?

鉄筋のかぶり厚さを確保するためのスペーサーは、スラブで1.0〜1.3㎡に1個、壁で0.5〜1.0㎡に1個、梁で1m以内の間隔で配置するのが標準です。コンクリート製またはモルタル製スペーサーが推奨されます。

SD295AとSD345の使い分けは?

SD295A(降伏点295N/mm²以上)は壁・スラブなど比較的応力の小さい部位、SD345(345N/mm²以上)は柱・梁など高い応力がかかる主要構造部材に使用するのが一般的です。高層建物ではSD390やSD490も使用されます。

配筋検査のチェックポイントは?

①鉄筋径と本数、②配筋間隔(ピッチ)、③かぶり厚さ(スペーサーの配置)、④継手の位置と長さ、⑤定着長さ、⑥あき寸法(鉄筋間のクリアランス)、⑦結束線の締め付け状態が主要項目です。