SR(直列リアクトル)とは?
進相コンデンサ回路の突入電流や高調波を抑制する直列リアクトル
【超解説】とても簡単に言うと何か?
進相コンデンサに直列に接続し、高調波電流を抑制してコンデンサを保護するリアクトルです。
1. SR(直列リアクトル)の基本概要
SRとは何か・どのような役割か
直列リアクトル(Series Reactor、略称:SR)は、高圧受電設備において、
常にSC(進相コンデンサ)とペア(直列)に繋がれるコイル(鉄心線輪)状の機器です。
近年はインバータ機器(LEDやエアコン)が増え、電気の波を歪ませる「高調波ノイズ」
が施設内に溢れています。コンデンサはこのノイズを吸い込みやすい弱点があり、
放置すると過熱してパンク(破裂)してしまいます。SRはこの有害なノイズをブロックし、
コンデンサを守る役割を果たします。
いつ必要なのか
現在、高圧受電の新設や改修を行う場合、法令および技術基準により「進相コンデンサには
原則として直列リアクトルを設置すること」と強く指導されているため、
事実上必須の安全部品となっています。
2. 構造や原理
内部は非常にシンプルで、何層にも重ねた「鉄心」の周りに、
太い「銅線(コイル)」を巻き付けただけの構造です。
コイルには「周波数(電気の波の速さ)が高いほど、通り抜けにくくなる」という
インダクタンスの性質があります。
施設を荒らす「高調波ノイズ」は、通常の電気(50/60Hz)よりも
5倍や7倍も早い周波数を持っているため、コイル(SR)が防波堤のごとく
ノイズだけを弾き返し、コンデンサ(SC)に綺麗な電気だけを通す原理です。
3. 素材・形状・規格
外観と種類の違い
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油入リアクトル:
コイルの束を絶縁油を張った金属ケースの中に沈めて冷却する標準タイプ。
安価ですが寿命が来ると油漏れのリスクがあります。 -
乾式(モールド)リアクトル:
油を使わず、コイルをエポキシ樹脂などでガッチリと固めた(モールドした)タイプ。
防災性に優れており、屋内やビルのキュービクルではこちらが主流です。
主な規格と容量
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JIS規格:
JIS C 4902(高圧直列リアクトル)などに準拠した製品が使用されます。 -
リアクタンス選定の違い:
コンデンサ容量に対するブロック力(%)で選びます。
通常は第5調波対策の「6%用」が圧倒的に多いですが、特殊なインバータ類が多い
工場などでは、より強力な第3調波対策の「13%用」が選定されます。
4. 主に使用されている場所
コンデンサを守るため、必ずその「すぐ隣」に直列に繋がれて配置されます。
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キュービクルの高圧コンデンサ盤内:
開閉器(LBS)を通ってきた高圧電流回路において、
コンデンサ(SC)の直前に設置されるのが基本です。
5. メリット・デメリット
メリット
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コンデンサの破裂・焼損回避と寿命延長:
ノイズや突入電流による過酷な熱ダメージからコンデンサを単独で守り抜き、
施設の安全とコンデンサ本体の設計寿命を全うさせます。
デメリット
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重量と構造上の騒音:
鉄の塊であるため非常に重く、クレーンや複数人での搬入作業が必要です。
また、コイルの磁界による「ブーン」という振動音(励磁音)が鳴るため、
静粛性が求められる病院等では防振ゴム等の対策工事が不可欠です。
6. コスト・価格の目安
SRはコンデンサより一回り小さく、単体の価格は安価ですが、
メーカー保証の観点からもコンデンサと「同時交換」が必須です。
おおよその相場(SR単体の部品代)
- 小型用(6%): 2万〜5万円程度
- 中大型用(6%〜13%): 5万〜15万円程度
合計目安(SC+SRのセット工事): 25〜50万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
SRの更新推奨時期は約15年(またはコンデンサと同時更新)です。
コンデンサの片割れだけの更新は基本許容されません。
絶対にやってはいけない悪い使用方法(NG行為)
【NG事例2】6%のコンデンサに13%のSRを繋ぐ(容量不一致)
「予算がないから」とコンデンサだけを新しくして古いSRを使い回したり、
SRの設置スペースがないからと言って直結(SRなし)にしてしまうことは厳禁です。
また、容量(%)の計算を無視して手持ちのSRを適当に繋ぐこともNGです。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
SRがない、または容量が合っていないコンデンサは、
施設中の高調波ノイズを急激に自ら吸い込んでしまうため、
過電流によりコンデンサ自体が異常な発熱・膨張を起こします。
結果として、数ヶ月〜数年という短期間でコンデンサがパンク・破裂・焼損し、
火災による人命や財産の甚大な損失を招くことになります。
8. 関連機器・材料の紹介
直列リアクトルは以下の機器とセットで語られます。
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SC(進相コンデンサ):
電気のムダ(無効電力)を省く省エネ装置。これを守るのがSRの唯一の仕事です。
▶ 詳細記事はこちら -
トランス(変圧器):
変圧器からの高調波等も含め、施設全体の電源の安定化に寄与します。▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
「ジーー」とか「ブーン」という大きな音がするのはこれのせいですか?
はい、コイルを使っているため、電流の振動(励磁音)が鳴るのは構造上正常です。
つけるとスマートフォンやパソコンが速くなりますか?
ならないです。あくまで工場やビル全体の「目に見えない大きな電気の荒れ」
を直すものです。
触ったら感電しますか?
キュービクルの中にあるため直接触れませんが、高圧(6,600V)
が流れているため触れば致命的・致命的な危険があります。
古いものは有害と聞きましたが?
古い油入のものであれば、コンデンサと同様に有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)
が含まれている可能性があります。
火災の原因になるとニュースで見ましたが本当ですか?
本当です。寿命を超えた放置や、設計を無視した不十分な設備環境では発火リスクが
高い部品です。
SCとSRを接続する際の電線の太さは?
コンデンサの定格電流の1.35倍を基準に、周囲温度やケーブルの許容電流を綿密に計算し
て太くします。
メーカーが違うコンデンサとリアクトルを組んでいいですか?
絶対に避けてください。周波数特性等の微細なズレが事故を招くため、
必ず「同一メーカーのペア」を使用します。
乾式リアクトルは重いですか?
鉄心とコイルの塊であるためサイズに対して非常に重いです。
搬入や盤内での固定にはクレーンや複数人での作業が必要です。
コンデンサだけ変えてSRをそのまま残してもバレないのでは?
法的な保安検査で必ず指摘されます。また、寿命による焼損時に責任問題になるため絶対に
コンプライアンスを守るべきです。
接地(アース)はどのように取りますか?
SRの外箱にも、漏電保護のために法令で定められたA種(またはそれに準ずる)
接地を確実に行います。
見積りでSRを削ってコストダウンを図りたいです。
技術基準違反となり施設の安全を脅かすため不可能です。施主様には「必須の安全装置」
と説明して納得させてください。
6%用と13%用、どちらを手配すればいいですか?
基本は6%用ですが、施設の負荷に第3調波(大きな単相負荷や古いインバータ等)
が多い場合は13%用を再設計・選定します。
納期はコンデンサと同じくらいですか?
セットで製造・出荷されることが多いため大差ありませんが、
特殊な13%用や大容量品は数ヶ月の納期が必要です。
更新工事の際の停電時間はどれくらい見込むべきですか?
盤内の配置や搬入経路によりますが、安全確保(検電・放電)の時間も含め、
半日〜1日の全停電作業が基本です。
PCBが含まれていた場合の廃棄費用は誰が持ちますか?
原則として「所有者(設備オーナー)」の負担となります。処理費は非常に高額になるため、
着工前に明確な合意が必要です。
前回の点検でコンデンサだけ指摘され、SRは何も言われませんでした。
見た目に異常がなくても、片方が寿命(15年程度)なら、
必ずもう一方も寿命なので同時に更新してください。
リアクトルのホコリは掃除したほうがいいですか?
はい、ホコリは湿気を吸って絶縁不良(漏電・火災)の原因となります。
年次点検の停電時に、清掃ブラシなどで除去してもらいます。
焦げ臭いにおいと、いつもより大きな「ブーン」という音がします。
極めて危険な状態(層間短絡や過熱)です。直ちに電気主任技術者に連絡し、
回路を切り離す必要があります。
将来、工場にインバータエアコンを大量に入れる予定です。
高調波が大量に発生し、既存のSRが耐え切れない可能性があります。導入前に、
電気設計者に高調波対策の再計算を依頼してください。
SRの寿命は何年を目安に予算立てすればいいですか?
コンデンサと同じく15年が推奨ラインです。10年経過したあたりから、
盤の更新に向けた資金計画を立てるのが賢明です。