蓄電池設備(直流電源装置・バッテリー電源)とは?
瞬時電圧低下や停電時にサーバー等へ電力を供給し続ける蓄電池
【超解説】とても簡単に言うと何か?
停電の瞬間から自家発電機が起動するまでの数十秒間、非常用電源を供給する蓄電池設備です。
1. 基本概要
そもそも何か
蓄電池設備(ちくでんちせつび)または「直流電源装置」とは、
商用電源が停電した際、内蔵する多数のバッテリー(二次電池)から、
瞬時に制御盤や防災設備へ直流(DC110Vなど)の電力を供給し、
設備の機能停止を「ゼロ秒(無停電)」で防ぐための装置です。
なぜ必要なのか
ビルが高圧受電を行うためのキュービクル内の遮断器を動かすためや、
火災の一報を制御する「自火報盤」の電源を絶対に絶やさないためです。
「自家発電機」はエンジン始動に数十秒かかりますが、
蓄電池は「停電した瞬間からシームレスに」電気を出し続けるため、
パソコンや通信網がシャットダウン・再起動するのを防ぎます。
2. 構造や原理
内部構造
大きく分けて「整流器(せいりゅうき=交流を直流に変換する保護盤)」と、
電気を貯めておく「蓄電池(バッテリーセル)」の集合体で構成されます。
車に積んである四角いバッテリーを数十個、直列につなぎ合わせて
必要な電圧(DC110Vなど)を作り出し、鉄のラックに並べられています。
作動原理(浮動充電方式)
通常時は、街から来る電気(AC)を整流器で直流(DC)に変換し、
常にバッテリーを満タン状態にするための「充電」を行いながら、
同時にその電気を少しずつ負荷(機器)へ流し続けています。
停電が起きると、充電器からの電気の供給が断たれるため、
そのままシームレスにバッテリー内の電気が機器へ放出される仕組みです。
3. 素材・形状・規格
電池の種類と素材(鉛・アルカリなど)
最も一般的なのは「鉛蓄電池(なまりちくでんち)」です。メンテナンスが不要な
「制御弁式鉛蓄電池(シール型:MSE等)」が最近の主流になっています。
一方、非常に過酷な環境や極寒冷地では、電解液に水酸化カリウムを使う
「アルカリ蓄電池(ポケット式など)」という強靭な電池も使用されます。
外観と規格
盤(キュービクル)の中にすべてが収まった「キュービクル式」が一般的。
消防法に基づく厳しい認定試験をクリアした証である
「蓄電池設備認定委員会」の丸い金属製の合格マークが貼られています。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
一定規模以上の高層ビル、病院、データセンターはもちろんのこと、
発電所や変電所、工場のプラント制御盤など、
「電気が一瞬でも途切れたら致命的な事故に繋がる場所」に必須です。
具体的な設置位置
ほとんどの場合、建物の地下深くや屋上にある「電気室」または
非常用発電機の横にある「発電機室」、自火報が置かれた「防災センター」の
裏手などに、人の目につかないよう厳重に設置されています。
重量が凄まじいため、強固なコンクリートの床の上に据え付けられます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
最大のメリットは「物理的に電気が途切れる空白の時間が存在しない」こと。
発電機のように「エンジンが掛からなかったらどうしよう」という
機械的・始動不良のリスクがなく、蓄電されていれば即座に電気を吐き出し、
確実なバックアップ(数十秒〜数時間)をお約束します。
デメリット(短所・弱点)
巨大な「電池」であるため、永遠に電気が使えるわけではありません。
数十分〜長くても一時間程度で空っぽ(放電終止)になってしまいます。
また、電池内に劇物(希硫酸など)を大量に抱えているため非常に重く、
温度変化に弱く、定期的に多額の費用で「寿命による交換」が必須です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
中のバッテリー(セル)自体の費用が非常に高価であることに加え、
古いバッテリーは「産業廃棄物・特別管理産業廃棄物」として
厳重な処理が求められるため、処分費用も高額になります。
制御弁式鉛蓄電池(MSE等)の更新(交換)相場
- 小型の防災設備向け(数Ah〜数十Ah): 50万円〜150万円前後
- 中型のキュービクル操作用(数十Ah〜): 150万円〜300万円前後
- 大型無停電電源装置(UPS)向け大量セル: 500万円〜数千万円
合計目安: バッテリー本体に加え、重量物運搬・産廃費がかさみます。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
主流である「制御弁式鉛蓄電池(MSE)」の期待寿命は一般的に
「7年〜9年」とされています(アルカリ蓄電池は10〜15年以上)。
しかし、これは「周囲の気温が25℃」の理想環境で使われた場合であり、
熱い電気室に置かれた場合は5年で寿命を迎えることも多々あります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
「まだ使えるはずだ」とケチって10年以上交換しないだけでなく、
節電目的で電気室のエアコンを切り、40℃近くになる密室環境で
バッテリーを茹で上がり状態にして放置する行為です。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
蓄電池の寿命は「温度が10度上がるごとに寿命が半分になる」という
アレニウスの法則が適用されます。熱で劣化した内部の極板がショートし、
水素ガスが吹き出してバッテリーケースが破裂・焼損(破裂)します。
その際に放出した希硫酸が他の盤を溶かし、全電源喪失の大事故になります。
8. 関連機器・材料の紹介
蓄電池設備がバックアップしている仲間たちです。
-
VCB(真空遮断器):
停電時に安全に回路を切り離すための強力なメインスイッチ。
蓄電池の直流電源(DC110V)の力で「ガチャコン!」と勢いよく操作されます。 -
自動火災報知設備(自火報):
火災時の非常ベルを鳴らすシステム。停電時でも絶対に機能停止しないよう、
自火報盤内にも小型の蓄電池が組み込まれています。
9. 多角的なQ&A(20連発)
普通のスマホのモバイルバッテリーと何が違いますか?
原理は同じですが、規模が違います。ビル全体の非常設備を動かすため、
軽自動車くらいの大きさの盤に、
劇物の希硫酸が入った重さ数トンの鉛電池が積まれています。
病院の生命維持装置もこの蓄電池のおかげで無事なのですか?
はい。「無停電電源装置(UPS)」と呼ばれる大規模バッテリー設備があり、
街が停電した瞬間に電力を補給し、患者の人工呼吸器や手術室の照明を守り抜きます。
停電中、このバッテリーは最大どのくらい長持ちしますか?
設計によりますが、消防法などで「火災時は最低でも10分〜60分以上は電力を保持すること」
と定められています。バッテリーで耐えている間に自家発電機を回してバトンタッチします。
マンションの廊下にある「非常用」と書かれた照明も同じ仕組みですか?
考え方は同じですが、マンションの非常用照明は「照明器具そのものの中」
に小さいバッテリー(ニッケル水素電池など)が直接内蔵されていることが多いです。
バッテリーから有毒ガスなどが出て火災の原因になりませんか?
充電中に微量の「水素ガス」が発生します。水素は火を点けると破裂・焼損するため、
最近のものは発生したガスを内部で水に戻す「触媒栓(シール型)」
などで対策され安全になっています。
蓄電池の重いセル(1個数十kg)を盤に組み込むときの注意点は?
腰を痛めないように必ず複数人で作業し、落とさないよう注意します。また、
端子をスパナで締め付ける際、誤って隣の端子に工具を当てると「激しいショートと火花」
が起きて網膜が焼けるので絶対注意です。
バッテリー交換用のスパナなどの工具は、普通のものを使っていい?
絶対にダメです!必ず柄の部分までを絶縁テープや樹脂カバーで覆ってある「絶縁工具(絶縁ス
パナ)」を使います。手が滑ってショートさせた際の大事故を防ぐためです。
新しいバッテリーを接続する順番に決まり(直列・並列)はありますか?
必要な電圧(DC110Vなど)にするため、
基本は全て「直列」で繋いでいきます。(2Vの電池なら55個直列=110V)。
プラス極からマイナス極へ、一つずつ丁寧に繋いで締め忘れをマーキングします。
配線(ケーブル)は、通常の交流と同じVVFなどで良いですか?
直流で非常に大きな電流(突入電流等)が流れるため、
電圧降下が起きないように太いより線ケーブル(KIVやMLFC、
CVなど)を余裕を持ったサイズで敷設します。
アルカリ蓄電池は液補充が必要(ベント型)ですか?
はい、アルカリ蓄電池は充放電を繰り返すと電解液(水酸化カリウム水溶液)
のうち水分が分解されて減るため、
精製水の定期的な補充というメンテナンスが必須になります。
鉛蓄電池とアルカリ蓄電池、設計でどう使い分けて決定しますか?
鉛(MSE等)は安価で省スペース・メンテフリーなためオフィス等の屋内に。
アルカリ蓄電池は高価で場所を取りますが、
極低温など過酷な環境に強く寿命が超長いため、寒冷地やプラント配管制御などに選びます。
既存の鉛蓄電池(CS型等)を制御弁式(MSE型)へ更新提案できますか?
盤内のラックスペースが余るほど小型化できるため非常に喜ばれますが、
充電器側の「設定電圧」
をMSE用に調整(変更)できるタイプ盤であることが大前提になります。
バッテリーの交換工事を停電させずに(活線で)行うことは可能ですか?
専用の「バイパス用仮設電源盤」を並列に繋ぎこみ、
建物のシステムへ電気を送り続けながら、
本体側のバッテリーだけをスッと切り離して交換する技術を用いた「無停電バッテリー交換」
が可能です。
キュービクル式蓄電池設備の設置届は消防署に出す必要がありますか?
はい。「キュービクル式」
および「合計容量が4800Ah・セル以上等(蓄電池設備)」に該当する場合は、
火災予防条例等に基づき設置前に所轄消防署へ「設置届」を必ず提出しなければなりません。
耐震対策として、盤の床(スラブ)への固定で注意すべきことは?
盤の中に液体の入った重量物(数百kg〜数トン)が収納されているため、
重心が少し上に偏ります。大地震で盤ごと転倒・滑動しないよう、
建築基準法(耐震クラスAなど)
に準じた太いアンカーボルト計算による固定が絶対に必要です。
盤のメーターで「均等充電」や「浮動充電」というランプがあります。
「浮動(ふどう)充電」は普段の微弱な満タン維持モードです。「均等充電」は、
複数あるバッテリー同士の「電圧のバラツキ」
を正すために定期的に少し高めの電圧をかけて数時間強制充電するお手入れモードです。
バッテリーがたくさん並んでいますが、少し膨らんでいる(白っぽい)気がします。
大ピンチのサインです。「電槽の膨張」や「端子の白い粉(サルフェーション)」は、
内部液の枯渇や過充電による劣化が極限まで進んでおり、
いつ破裂してもおかしくないため即交換を手配してください。
寿命は7年と言われましたが、5年目でもう「要交換」と見積りが来ました。
恐らく電気室の室温が高い(エアコンの効きが悪い等)ことが原因です。
鉛電池の寿命7年保証は「室温25℃以下」の条件下であり、
夏場に35℃近くなる部屋なら寿命は半減してしまいます。
蓄電池はどこにでも捨てて良いのですか?業者が産廃で引き取りますか?
内部に鉛と劇物の希硫酸が入っているため、
適当に捨てるのは犯罪です!マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行し、
「特別管理産業廃棄物」等の資格を持つ正規の処理業者に、
処理代を払って適正処分させます。
毎月の点検で、この設備について自分たちで出来る簡単な確認方法は?
盤面の「直流電圧計」
が規定値(例:110Vシステムの浮動充電中で120V前後等)を指しているか、
パネル内で液漏れや異臭(ツンとした硫酸の匂い)
がしていないかを五感と目視でチェックしてください。