VAV(可変風量)とCAV(定風量)とは?仕組みと空調設備の基礎知識

大きなオフィスビルでは、各部屋ごとに家庭用エアコンをつけるのではなく、巨大な空調機(AHU)で作った冷気や暖気をダクトで各フロアに分配しています。
その分配された「風の量」を部屋の温度に合わせて自動調整する賢いダンパーが「VAV」です。逆に「常に一定の風」を送り続けるのが「CAV」です。
本記事では、ビルの空調と省エネメカニズムの要となるVAVとCAVの違いを徹底解説します。

1. VAVとCAVとは何か?(中央式空調のきほん)

VAVとCAVは、建物の天井裏にある「風の通り道(ダクト)」の途中や出口に取り付けら
れる、風量調整用の自動箱(ユニット)のことです。

  • VAV(Variable Air Volume:可変風量装置)
    室内の温度変化に合わせて、送る「風の量」を増やしたり減らしたりする方式。
  • CAV(Constant Air Volume:定風量装置)
    室内の温度にかかわらず、常に「一定の風量」を送り続ける方式。

大規模ビルで採用される「セントラル空調(中央式空調機:AHU)」は、一定の温度の冷気(また
は暖気)を大量に作って各部屋に送ります。部屋ごとの温度ムラを解消す
るために、風量を絞ったり開けたりするのがVAVの役割です。

2. VAV(可変風量制御)の仕組みとメリット

VAV方式は「設定温度に達したら、風を絞る」という動きをします。

【メリット1:圧倒的な省エネ】
部屋が冷えているのに強い冷風を送り続けるのは無駄です。VAVで風量を絞ると、根元にある大きな送風機(ファン)の負担が減り、インバーター制御により劇的に電気代が削減されます。
【メリット2:個別制御に近い快適性】
「日当たりの良い窓際(暑い)」には風を100%送り、「日陰の部屋(涼しい)」は風を30%に絞るなど、1つの巨大な空調機でありながら、部屋(ゾーン)ごとの細やかな温度制御が可能になります。

3. CAV(定風量制御)の仕組みとメリット

CAV方式は「どんなに部屋が冷えても(暑くても)、必ず一定の風を吹き続ける」という動きをし
ます。

【メリット1:確実な換気量の確保】
病院の手術室、クリーンルーム、化学実験室、あるいは映画館やホールなど、「人間が呼吸するための新鮮な外気」や「汚染空気を排出するための空気の入れ替え」が絶対に一定量必要な場所では、風量を絞るVAVは使ってはいけません。CAVによって確実に空気を回します。
【メリット2:システムがシンプル】
風量を一定に保つ機械式(バネの力など)のCAVもあり、複雑なセンサーや制御盤がいらないため、初期コストが安く故障しにくいです。

4. 両者のデメリットと弱点

適材適所で使い分けないと、以下のような問題が発生します。

方式 デメリット・弱点
VAV 部屋が設定温度に達して風量がゼロ(または最小)になると、「新鮮な換気の空気」まで入ってこなくなり、二酸化炭素濃度が上がって息苦しくなることがある。初期コストとメンテ費用が高い。
CAV 部屋に誰もいなくてもガンガン風を送り続けるため、電気代が非常に高い。また、日差しが変わると「冷えすぎ」「暑すぎ」になりやすい。

5. 空調ゾーンの使い分け(インテリアとペリメーター)

ワンフロアが広いオフィスでは、場所によって空調の負荷が天と地ほど違います。

  • ペリメーターゾーン(窓際の約5m)
    真夏は直射日光で激アツ、真冬はガラスからの冷気で極寒になります。常に急激な温度変化が起きるため、細かく風量で調整できる**VAV**や、ファンコイルユニット(FCU)が必須です。
  • インテリアゾーン(建物の内側・中心部)
    窓からの天候の影響をほぼ受けず、人間とパソコンの熱しか発生しません。年中「冷房(または送風)」で安定しているため、**CAV**(もしくは緩やかなVAV)で常に空気を循環させる設計が適しています。

6. VAVユニットの主な構成部品と動作原理

天井裏にぶら下がっているVAVユニットは、ただの鉄の筒ではありません。精密機械です。

  • 風量計測センサー(ピトー管など): 今、どれくらいの風速・風量がダクトを流れているかを計測します。
  • ダンパー羽根: 蝶番のような板がパタパタと動き、風の通り道を狭めたり広げたりします。
  • アクチュエーター(モーター): コントローラーからの電気信号を受け取り、ダンパーをミリ単位で動かすモーターです。
  • ルームサーモスタット(温度センサー): 部屋の壁面に付いている温度設定器。ここからの信号がVAVユニットに送られます。

7. 施工とメンテナンスの注意点(送風機の静圧制御)

VAVシステムの最大の泣き所が**「静圧(ダクト内の空気の圧力)」のコントロール**です。
例えば、1つの階にある10個のVAVユニットのうち、9個が「部屋が冷えたからダンパーを閉め
た」とします。 すると、大元の空調機(AHU)からの風の行き場がなくなり、残った1個のVA
Vに爆風(暴風)が吹き込んでしまいます。部屋では「ゴーゴー」と恐ろしい騒音が発生します。
これを防ぐため、ダクト内に「圧力センサー」を設け、
「VAVが閉じてダクト内がパンパンになったら、大元のファンの回転数
を落とす(インバーター制御)」という複雑な連動設計が不可欠です。

8. VAVシステムによる驚異的な省エネ効果

送風機の風量と消費電力には「風量が半分になると、電力は8分の1になる(立方の法則)」
という物理法則があります。つまり、VAVによって風量を70%に絞るだけで、ファンの消
費電力はおよそ34%(約3分の1)にまで激減します。これが、大規模ビルで高価なVAV
システムを導入してでも、数年で電気代で元が取れると言われる最大の理由です。

9. 最近のトレンド:IoT化と個別空調(PAC)との融合

以前は「中央式空調=VAV」「個別空調(ビルマルチ等)=冷媒流量制御」と分かれていましたが、
現在は入り交じっています。また、最新のVAVはBEMS(ビルエネルギーマネジメント
システム)やIoTと繋がり、部屋の人感センサーやCO2濃度センサー
と連動して、「人がいないエリアは風をゼロにする」「CO2が濃くなっ
たら外気を増やす」といった超高度な自律制御が行われています。

10. 比較まとめ:設計とコストの考え方

まとめとして、どのような施設にどちらが向いているかを整理します。

項目 VAV(可変風量)システム CAV(定風量)システム
適した用途 一般的なオフィス、天候の影響を受ける窓際、会議室など負荷変動が激しい場所 クリーンルーム、手術室、映画館、劇場の客席、負荷変動のない内側(インテリア)
初期コスト(設備費) 高い(アクチュエーターや個別コントローラー、インバーターが必要) 安い(システムが単純)
ランニングコスト 非常に安い(風量を絞るため) 高い(常に最大風量で動くため)
メンテの難易度 高い(モーターやセンサーの経年劣化故障が多い) 低い(機械要素が少ない)

立場別・VAV/CAVの『これってどうなの?』大疑問20連発!

【一般・テナント入居者向け】

Q1. 壁のスイッチで18℃に下げているのに、部屋が全然冷えません。

中央式空調(VAV)の場合、大元で作っている冷気(例えば13℃程度)を全館に送っています。壁のスイッチは「その冷気をたくさん出すか、絞るか(風量の調整)」しかできず、いくら18℃設定にしても「冷気の温度自体」は変わらないため、大元の設定温度がマイルドだと限界があります。

Q2. VAVの部屋で、急に風が止まって息苦しくなかりました。

VAVの最大の弱点です。部屋が設定温度(例:25℃)に到達すると、VAVは「これ以上冷やす必要がない」と判断してダンパーを閉め、風量が最小になります。結果、換気用の新鮮な空気も入ってこなくなり、息苦しさを感じることがあります。

Q3. 自分の席だけ寒すぎるので、天井の吹き出し口を塞いでもいいですか?

原則としてNGです。吹き出し口をガムテープなどで塞ぐと、行き場を失った風圧でダクトが破裂したり、他の席に爆風が流れてクレームになります。ビル管理室に連絡し、VAVのソフトウェア設定や風向板(ディフューザー)で調整してもらいましょう。

Q4. CAVの部屋で冷房を弱める方法はありますか?

CAVは風量が一定のため、部屋の「温度だけの調整」は非常に困難です。少しだけ温度を上げたい場合は、天井裏にある再熱ヒーターに入電させるか、大元のAHU自体の給気温度を変えるしかありません。

Q5. 会議室に人が集まると急に暑くなります。VAVは自動対応しますか?

はい、対応します。壁の温度センサーが室温の上昇を検知すると、VAVのダンパーが開き、冷風の量を増やして部屋を冷やそうとします。ただし、人が多すぎるとVAV全開の「最大風量」でも冷却能力が追いつかないことがあります。

【職人・施工者向け】

Q6. VAVユニットをダクトの途中に吊り込む際の注意点は?

必ず「メンテナンス用の点検口」をVAVユニットのすぐそば(アクチュエーターや制御盤がある側)の天井に設けてください。後々にモーター交換や調整が必要になるため、手が届かない場所に吊ると設備屋やメンテ業者が非常に困難になります。

Q7. VAVの前後の直管(まっすぐなダクト)はどれくらい必要ですか?

VAV内部のセンサーが正確な風量を計測できるよう、VAVの一次側(風が来る方)には、ダクト径の「3〜5倍」の長さの真っ直ぐな直管距離を確保するのが理想です。直前にエルボ(曲がり)があると、風が乱れて誤作動の原因になります。

Q8. 保温(断熱材)はVAVユニット本体にも巻く必要がありますか?

冷風が通るため、本体の鉄板部分に結露防止の保温(グラスウール等)が必要です。ただし、動くモーター部分(アクチュエーター)や制御盤を保温材で塞いでしまうと熱がこもって故障するため、そこは避けて巻きます。

Q9. CAVユニットには電源や電気工事が必要ですか?

バネの張力などの「機械式」で定風量を維持するメカニカルCAVの場合は、電源不要でダクト工事だけで完結します。電子制御式のCAVの場合は、100V等の電源配線と信号線が必要です。

Q10. VAVからの風切り音がうるさいと言われました。施工不良ですか?

VAV自体の施工不良というより、大元のインバーター制御がうまくいっておらず、余分な静圧(ダクト内の圧力)がかかりすぎている設計・調整(TAB)の問題であるケースが多いです。グラスウール内張チャンバーなどを通して消音を図ります。

【施工管理(番頭)向け】

Q11. 最大風量でVAVを選定すると、サイズが大きすぎて天井裏に収まりません。
どうすればいいですか?

1つの系統を分割して、小さなVAVを2台並列にするかシステムを変更します。梁(ハリ)の下を通す場合はダクトの扁平率にも限界があるため、初期のプロット図段階でゼネコンと天井高・梁貫通の激しい調整が必要です。

Q12. 「バイパスVAV方式」と「絞り込みVAV方式」の違いは?

絞り込み型は単純に風をせき止めるため省エネですが、ダクト内圧力が高くなります。バイパス型は、不要な冷風を天井裏(還気チャンバー)にそのまま逃がす方式で、圧力制御が不要になるため古いビルなどで使われますが、送風機の省エネ効果は得られません。

Q13. 「最小風量」の設定とは何ですか?なぜゼロにしないのですか?

VAVを完全にゼロ(全閉)にすると、換気(外気)も止まりCO2濃度が上がるため、建築物衛生法に抵触します。そのため、「室温が冷え切っていても、最低これだけの風(例:最大風量の20〜30%)は送る」という最小限界値を設定(コミッショニング)します。

Q14. VAVを使うと、ファンコイル(FCU)より良いのですか?

VAV(全空気方式)は天井内に水配管を通さないため、サーバー室やOAフロアの上で「漏水事故による機器破損リスク」がゼロになるという絶大なメリットがあります。

Q15. TAB(テスト・アンド・バランス)業者を入れる意味は?

VAVシステムの要は「風量とダクト圧力のバランス」です。竣工前に専門業者が全ての吹き出し口の風量を計測し、大元の設定値とVAVの開度を最適にチューニングしなければ、100%クレームになるため、TAB検査は必須の工程です。

【ビルメン・設備管理向け】

Q16. 停電や瞬低の後、ある階だけ冷房が効かなくなりました。

VAVのコントローラーがフリーズしているか、停電時のセーフティ機能でダンパーが「全閉」のままロックされている可能性があります。中央監視盤からリセットをかけるか、現場の制御盤のブレーカーを入れ直して再起動してください。

Q17. 温度設定を下げても風が出てこないVAVユニットがあります。

アクチュエーター(モーター)の歯車割れや寿命、または風量センサー(ピトー管の十字部)に埃が詰まって風速を正しく検知できていない可能性が高いです。天井点検口から内部清掃か部品交換が必要です。

Q18. 中央監視(BEMS)と上手く連動せず、AHUのインバーターが暴走します。

ダクト内の静圧センサーがおかしくなっている可能性大です。静圧センサーの検知管が外れていたり、ゴミが詰まって大気圧を正しく測れていないと、ファンが「圧力が足りない!」と勘違いしてMAX回転を続けてしまいます。

Q19. 冬場、VAVから冷たいすきま風が落ちてきて(コールドドラフト)クレームになります。

暖房時、吹き出し温度が低いうえにVAVによって風量が絞られ「チョロチョロの風」になると、天井面を這わずにそのまま真下に落ちて人に当たります。暖気の場合はVAVの最小風量を少し高めに設定するか、吹き出し口のベーン(羽根)の角度を調整します。

Q20. どうしても全閉にしたいエリアのVAVがある場合の裏技は?

空きテナントなどであれば、中央監視からVAVの強制全閉指令(オーバーライド)をかけられます。それでも漏れ風がある場合は、保温屋さんに頼んでダクトの途中で鉄板のメクラ板(ブラインド板)を入れて物理的にシャットアウトします。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人目線

VAVって何?

Variable Air Volume(変風量装置)の略で、部屋ごとに空調の風量を自動調整して快適な温度に保つ仕組みです。

CAVとの違いは?

CAVは一定風量で送風し温度制御は別で行います。VAVは風量を変えて温度制御するため省エネ性に優れています。

家庭のエアコンとの違いは?

家庭用は1台で1部屋を冷暖房。VAVシステムは1台の空調機で複数の部屋を個別制御できるビル用の仕組みです。

なぜビルに必要なの?

日当たりや人の数が部屋ごとに異なるため、各室に必要な空調量が違います。VAVで個別に調整して快適性と省エネを両立します。

最近のオフィスではどうなっている?

ほとんどの大規模オフィスビルでVAVシステムが採用されており、快適性と省エネの両立が標準になっています。

職人(空調工)目線

VAVユニットの構造は?

モーター駆動のダンパーと風量センサーで構成されます。室温センサーからの信号で自動的にダンパー開度を調整します。

最小風量の設定は?

部屋の換気量を確保するため、VAVの最小風量を外気導入量以上に設定してください。ゼロにすると換気不足になります。

コミッショニングの重要性は?

設計風量の設定、センサーの校正、ダンパーの動作確認を竣工時に確実に行わないと、後々の温度クレームの原因になります。

圧力独立型VAVとは?

ダクト内の圧力変動に関わらず設定風量を維持するタイプです。精度の高い風量制御が可能です。

施工時の注意は?

取付方向(気流の向き)を間違えないこと、点検用スペースを確保すること、制御配線を正確に接続することが重要です。

施工管理者目線

TAB(試験調整)の手順は?

全VAVを全開にして総風量を確認→各VAVの最大・最小風量を設定→室温制御のチューニングの順で行います。

制御システムとの連携は?

BAS(中央監視システム)とVAVコントローラーの通信プロトコル(BACnet/Modbus等)を確認し、動作テストを行ってください。

騒音対策は?

VAVの急激な開閉による風切り音を防ぐため、動作速度の設定と消音器の設置を検討してください。

品質記録は?

各VAVの設置箇所・型番・設定風量(最大/最小)・動作確認結果を記録してください。

省エネ効果の検証は?

VAV導入前後のエネルギー消費量を比較し、20〜30%の削減効果を確認してください。

設備管理者目線

日常管理のポイントは?

室温クレームが出た場合、VAVの風量とダンパー開度をBASで確認し、異常がないかチェックしてください。

フィルターの管理は?

VAVユニット内のフィルターは3〜6ヶ月ごとの清掃または交換が必要です。

ダンパーの固着対策は?

長期間同じ開度で運転していると固着することがあります。季節の変わり目に全開/全閉テストを行ってください。

モーターの寿命は?

VAVのアクチュエーター(モーター)は10〜15年が交換目安です。動作が遅くなったら早めに交換してください。

省エネ運用のコツは?

スケジュール制御で不在時の風量を最小にし、CO2センサー連動で在室人数に応じた換気量制御を行うと効果的です。