都市計画法とは?
どこに何を建てていいかを決める、まちづくりの基本法
1. 超解説
【超解説】とても簡単に言うと何か?
「どこに何を建てていいかを決めるルール」を定めた法律です。用途地域(住宅地・商業地・工業地など)の指定、建ぺい率・容積率の制限、開発許可の手続きなど、まちづくりの基本的なルールを規定しています。建設業では「そもそもその場所にその建物を建てられるか」の判断に直結する最も基本的な法律です。
都市計画法は1968年(昭和43年)に制定され、国土交通省が所管しています。建築基準法と車の両輪として、計画的なまちづくりと無秩序な開発(スプロール)の防止を目的としています。
2. 法律の目的と都市計画区域
「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与すること」が目的です。
都市計画区域の区分
| 区分 | 内容 | 開発の可否 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | すでに市街地、または概ね10年以内に市街化を図るべき区域 | 原則として開発可能 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域 | 原則として開発不可(例外あり) |
| 非線引き区域 | 市街化区域・調整区域の区分がない区域 | 一定の規制のもとで開発可能 |
都市計画区域外では都市計画法の規制は原則適用されませんが、「準都市計画区域」に指定された場合は用途地域等の規制が適用されます。
3. 用途地域制度
用途地域は、建物の用途、規模、形態を制限することで、良好な住環境や効率的な業務環境を確保するための制度です。全13種類あります。
住居系(8種類)
| 用途地域 | 主な規制内容 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。店舗・事務所は50㎡以下 |
| 第二種低層住居専用地域 | 小規模な店舗(150㎡以下)の立地を許容 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅。500㎡以下の店舗・大学等が可能 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 1,500㎡以下の店舗・事務所が可能 |
| 第一種住居地域 | 3,000㎡以下の店舗・事務所・ホテル等が可能 |
| 第二種住居地域 | パチンコ店、カラオケ等も可能 |
| 準住居地域 | 幹線道路沿い。自動車関連施設も可能 |
| 田園住居地域 | 農地と住宅の調和(2018年新設) |
商業系(2種類)
| 用途地域 | 主な規制内容 |
|---|---|
| 近隣商業地域 | 日用品の商業。住宅・店舗・事務所が広く可能 |
| 商業地域 | 商業の利便。ほぼすべての用途が可能(工場を除く) |
工業系(3種類)
| 用途地域 | 主な規制内容 |
|---|---|
| 準工業地域 | 軽工業。住宅・商業施設も広く可能 |
| 工業地域 | 工業の利便。住宅は可能だが学校・病院は不可 |
| 工業専用地域 | 工業専用。住宅・学校・病院・店舗は不可 |
4. 開発許可制度
一定規模以上の土地の区画形質の変更(造成工事等)を行う場合、都道府県知事の開発許可が必要です。
開発許可が必要な規模
| 区域 | 許可が必要な面積 |
|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上(三大都市圏は500㎡以上。自治体条例でさらに引き下げの場合あり) |
| 市街化調整区域 | 面積に関わらずすべて |
| 非線引き区域 | 3,000㎡以上(自治体条例で引き下げの場合あり) |
開発許可の審査基準
- 道路:幅員6m以上の道路に接すること(小規模開発は4m以上)
- 排水:排水施設の計画が適切であること
- 給水:水道等の給水施設が整備されること
- 防災:がけ崩れ・洪水等の災害防止措置が講じられること
- 緑地:1ha以上の開発では3%以上の公園・緑地を設けること
5. その他の主な都市計画制度
- 地区計画:地区レベルできめ細かなまちづくりルールを定める制度(建物の高さ、壁面後退、色彩等)
- 高度地区・高度利用地区:建物の高さの最高限度・最低限度を定める
- 防火地域・準防火地域:火災の延焼を防ぐため、建物の構造を規制
- 風致地区:自然の風致を維持するため、建物の高さ・建ぺい率等を制限
- 都市施設:道路、公園、下水道等の都市に必要な施設の計画決定
- 市街地再開発事業:老朽化した市街地の建替え・共同化を促進する事業制度
6. 違反時のリスク・罰則
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無許可の開発行為 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 開発許可条件違反 | 監督処分(工事中止命令、原状回復命令等) |
| 市街化調整区域での無断建築 | 除却命令→従わない場合は行政代執行 |
| 用途違反の建物使用 | 是正命令(建築基準法との併用) |
市街化調整区域での違法建築は行政代執行(強制撤去)の事例もあり、建築費用が全額無駄になるリスクがあります。
7. 近年の動向
- コンパクトシティ:立地適正化計画による居住誘導区域・都市機能誘導区域の設定で、まちのコンパクト化を推進
- 空き家対策:空家等対策特別措置法との連携。管理不全空き家への行政介入の強化
- 災害対策:災害レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域等)での開発規制の強化
- 田園住居地域:2018年に新設された13番目の用途地域。都市農業の保全を目的
- デジタル化:都市計画情報のオープンデータ化、3D都市モデル(PLATEAU)の整備
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9. 多角的なQ&A
一般の方向け
自分の土地の用途地域はどうやって調べられますか?
市区町村の都市計画課の窓口、または自治体のウェブサイトで公開されている「都市計画情報マップ」で確認できます。住所を入力するだけで用途地域、建ぺい率、容積率、高度地区、防火地域などの規制を一覧表示してくれるサービスが多くの自治体で提供されています。
用途地域が「住居専用」の場所にお店は開けませんか?
第一種低層住居専用地域でも、50㎡以下かつ延べ面積の2分の1未満であれば、喫茶店、理髪店、学習塾などの小規模な店舗の営業が認められています。第二種低層は150㎡以下まで可能です。ただし、パチンコ店や大型店舗は住居系地域では営業できません。
市街化調整区域の土地は安いのですが、家を建てられますか?
市街化調整区域は原則として建物の建築が制限されます。ただし、①農家住宅(農業従事者の自宅)、②既存集落内の自己用住宅(自治体の許可基準による)、③線引き前からの既存宅地などの例外があります。土地購入前に必ず市区町村の開発許可担当に確認してください。
「建ぺい率」と「容積率」の違いを教えてください。
建ぺい率は「敷地面積に対する建築面積(建物を上から見た面積)の割合」で、土地をどれだけ覆っていいかの制限です。容積率は「敷地面積に対する延べ面積(各階の床面積の合計)の割合」で、建物のボリューム(大きさ)の制限です。例えば建ぺい率60%・容積率200%の土地100㎡なら、建築面積60㎡以下、延べ面積200㎡以下の建物が建てられます。
隣に高いマンションが建つと聞きました。止められますか?
用途地域の制限(建ぺい率・容積率・高さ制限)を守っている合法的な建築計画を法的に止めることは困難です。ただし、日影規制や斜線制限に違反している場合は建築確認の取消しを求めることが可能です。地区計画や高度地区を活用した住民主導のまちづくりルールの策定が有効な予防策です。
業界関係者向け
開発許可と建築確認の関係は?
開発許可は「土地の造成」に対する許可、建築確認は「建物の建築」に対する確認です。開発行為を伴う場合は、まず開発許可を取得し、造成工事を完了して検査済証を取得した後に建築確認を申請するのが標準的な流れです。開発許可を受けずに造成と建築を同時に行うことは違法です。
用途地域をまたぐ敷地の場合、どちらの規制が適用されますか?
用途制限は「過半の属する用途地域」が適用されます。建ぺい率・容積率は「加重平均」で計算します。例えば、商業地域に60㎡・住居地域に40㎡の敷地なら、用途制限は商業地域が適用され、容積率は各地域の容積率を面積按分して算出します。
立地適正化計画と都市計画法の関係は?
立地適正化計画は都市再生特別措置法に基づく制度で、都市計画法の用途地域の上に「居住誘導区域」「都市機能誘導区域」を重ねて設定します。誘導区域外での一定の開発行為は届出が必要となり、税制優遇や補助金で区域内への立地を誘導します。都市計画法の規制に加えて、ソフト面でのまちづくりを推進する仕組みです。
都市計画道路の予定地に建物を建てられますか?
都市計画決定された道路予定地内でも、都市計画法53条の許可を受ければ建築は可能です。ただし、①階数2階以下、②地階がないこと、③主要構造部が木造・鉄骨造・CB造であることなどの制限があります。将来的に道路事業が実施される際は立退き(補償あり)の対象となります。
PLATEAUとは何ですか?建設業にどう役立ちますか?
国土交通省が主導する3D都市モデルのオープンデータプロジェクトです。建物の形状、用途地域、浸水想定区域などをGISデータとして無料で提供しています。建設業では、①日影シミュレーション、②風環境解析、③景観検討、④災害リスク評価などに活用でき、設計初期段階の意思決定を支援します。