CO2センサー(二酸化炭素濃度検出器)とは?
室内の二酸化炭素濃度を測定し換気を促すセンサー
【超解説】とても簡単に言うと何か?
部屋の中の「人の呼吸などで増えた二酸化炭素の量」を測って、換気扇や空調を自動的に
コントロールするためのセンサーです。数字が大きいほど空気が汚れており、
換気が必要なことを知らせます。
1. 基本概要
そもそも何か
CO2センサーとは、室内の二酸化炭素(CO2)濃度をリアルタイムに測定するセンサーです。
測定値は「ppm(parts per million)」で表示され、屋外の大気は約420ppm、
人がいる室内は500〜2,000ppm程度の範囲で変動します。
建築物衛生法(ビル管法)では特定建築物の室内CO2濃度を1,000ppm以下に維持することが
義務付けられています。CO2センサーはこの基準を満たすための測定・制御に不可欠な機器です。
なぜ必要なのか
従来の換気システムは在室人数に関係なく一定量の外気を取り入れる
「定風量方式」が一般的でした。しかし実際の在室人数は時間帯によって大きく変動するため、
無駄な換気による冷暖房エネルギーの浪費が問題となっていました。
CO2センサーで実際の空気汚染度を測定し、必要な分だけ換気する
DCV(Demand Controlled Ventilation=デマンド制御換気)は省エネ法の評価でも高く評価され、
外気処理にかかるエネルギーを30〜50%削減できるとされています。
2. 構造や原理
検出方式
CO2センサーの検出方式は主に以下の2種類があります。
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NDIR方式(非分散型赤外線方式):
CO2が特定の波長(4.26μm)の
赤外線を吸収する性質を利用した
最も一般的な方式です。
精度が高く(±50ppm程度)、
長期安定性にも優れているため
ビル用途ではこの方式が
ほぼ標準的に採用されています。 -
光音響方式:
赤外線をCO2に照射し、
CO2が吸収したエネルギーで
発生する音波を検出する方式。
高精度ですがコストが高く、
研究用途で使用されます。
信号出力と制御連携
CO2センサーは測定したCO2濃度をアナログ信号(4〜20mAまたは0〜10V)で出力します。
この信号はBEMSや空調のDDC(直接デジタル制御器)に入力され、換気ファンの回転数や
外気ダンパーの開度を自動制御します。
たとえばCO2濃度が800ppmを超えると外気ダンパーを開き始め、1,000ppmで全開にするといった
比例制御が一般的です。在室者が少ない時間帯はCO2濃度が低いため換気量を絞り、
冷暖房の負荷を低減できます。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
CO2センサーは樹脂製のコンパクトな筐体に収められ、壁掛け型が最も一般的です。
サイズは手のひら大(約100mm×80mm×30mm程度)で、壁面にネジ止めまたは
ボックスに組み込んで設置します。
表示画面付きのものと表示なし(信号出力のみ)の2タイプがあります。
ホテルのロビーや学校の教室など利用者に見せたい用途では液晶ディスプレイ付きが選ばれます。
種類や関連規格
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壁掛け型(室内設置):
最も一般的なタイプ。
床上1.2m程度の高さに設置し
居住域のCO2濃度を測定します。 -
ダクト挿入型:
還気ダクトに直接挿入して
還気のCO2濃度を測定します。
AHUの外気制御に使用されます。 -
多機能複合型:
CO2に加えて温度・湿度・VOC
(揮発性有機化合物)なども
測定できる複合センサーです。
関連規格としてはJIS T 8201(可燃性ガス検知器)は直接適用されませんが、建築物衛生法に基づく
CO2測定基準値(1,000ppm以下)と省エネ法のDCV評価基準に準拠する性能が求められます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
-
オフィスビル:
会議室や大部屋オフィスの
換気制御用に設置されます。
特に会議室は人の出入りが激しく
CO2濃度が急変するため効果的です。 -
学校:
教室の換気管理用に導入が進み、
文部科学省も学校環境衛生基準で
CO2濃度1,500ppm以下を推奨
しています。 -
商業施設・映画館:
不特定多数が集まる場所では
在室人数の変動が大きいため、
DCV制御の省エネ効果が
特に大きくなります。 -
病院・福祉施設:
感染症対策としての
換気量の見える化にも
活用されています。
具体的な設置位置
壁掛け型は室内の壁面に床上1.0〜1.5mの高さで設置します。窓や出入口の近く、空調吹出口の
直下は外気や空調の影響で正確な測定ができないため避けてください。
ダクト挿入型は還気ダクトの直管部分に差し込んで設置します。AHUの外気ダンパー制御に
使用する場合は還気側に、室内環境の監視目的では室内壁面に設置するのが適切です。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
-
省エネ効果が非常に高い:
DCV制御により外気処理に
かかるエネルギーを
30〜50%削減できます。
特に大空間や変動が大きい施設で
効果を発揮します。 -
室内環境の見える化:
空気の汚れ具合を数値で
リアルタイムに確認でき、
換気不足を客観的に把握できます。 -
法令遵守の支援:
ビル管法のCO2基準値
(1,000ppm以下)を
常時監視できるため、
法令違反のリスクを低減できます。 -
感染症対策への貢献:
換気量の指標としてCO2濃度を
活用することで、
飛沫・エアロゾル感染の
リスク低減に寄与します。
デメリット(短所・弱点)
-
定期校正が必要:
NDIR方式は光源の劣化により
経年で測定値がドリフト
(ずれ)する場合があります。
年1回程度の校正が推奨されます。 -
設置位置の選定が難しい:
窓際や出入口近くに設置すると
外気の影響で実際の室内濃度と
大きく異なる値を示します。
適切な設置位置の選定は
専門知識が必要です。 -
単体では換気不良を解決しない:
センサーはあくまで計測器であり、
換気設備やBEMSとの連携が
なければ省エネ効果は得られません。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
CO2センサー自体は比較的安価ですが、BEMSや空調制御との連携工事を
含めると相応の費用が発生します。ただし省エネ効果による投資回収は2〜5年程度と
比較的早いとされています。
おおよその相場(1箇所あたり)
-
CO2センサー本体:
3万〜15万円程度
(表示なし〜多機能複合型) -
配線・取付工事費:
2万〜5万円程度 -
制御プログラム変更費:
10万〜30万円程度
(BEMSやDDCの設定変更)
1箇所あたり合計: 15万〜50万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
CO2センサーの推奨更新周期は5〜10年が目安です。NDIR方式の光源は経年劣化するため、
校正で補正できる範囲を超えたら交換が必要になります。メーカー推奨の校正間隔と
使用環境の粉塵レベルによって寿命は大きく変わります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
CO2センサーは精密計測器であり、
経年で測定値にドリフト(ずれ)が
蓄積します。校正を行わないまま
何年も使い続けると、実際には
1,200ppmを超えているのに
800ppmと表示されるといった
危険な状態に陥ります。
また、スプレー洗剤や溶剤を
センサー近くで使用すると
異常値の原因になります。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
校正されていないセンサーが低い値を示し続けることでDCV制御が換気量を絞りすぎ、
実際のCO2濃度が基準値を大幅に超過している状態が長期間続きます。
在室者は頭痛・眠気・集中力低下などの症状を訴えるようになり、ビル管法の定期検査で
CO2基準値超過が発覚した場合、保健所から改善命令が下されます。テナントからの苦情や訴訟に
発展するリスクもあります。
8. 関連機器・材料の紹介
CO2センサーと組み合わせて使用される換気・空調関連設備を紹介します。
-
全熱交換器:
換気しながら空調エネルギーを回収する
省エネ換気装置。CO2センサーと連携し
必要な分だけ換気する制御が可能です。
▶ 詳細記事はこちら -
BEMS(ビルエネルギー管理システム):
CO2センサーの測定値を一括管理し、
空調・換気の最適制御を行います。
DCV制御の中核システムです。
▶ 詳細記事はこちら -
VAV(可変風量装置):
CO2センサーの値に基づいて
ゾーンごとの給気量を制御し、
きめ細かいDCV制御を実現します。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
CO2濃度が高いと体にどんな影響がありますか?
1,000ppmを超えると眠気や集中力の低下を感じやすくなります。2,500ppmを超えると頭痛が、
5,000ppm以上では健康に深刻な影響が出る可能性があります。
壁に小さな箱のようなものが付いていますが何ですか?
CO2センサーや温湿度センサーの可能性が高いです。室内の空気環境を監視して
空調や換気を自動制御するために設置されています。触ったり覆ったりしないでください。
会議室が眠くなるのはCO2が原因ですか?
その可能性は十分あります。少人数用の会議室に大人数が集まると、短時間でCO2濃度が
2,000ppmを超えることがあります。窓を開けるか換気扇を回すと改善されます。
CO2センサーの数値が表示されている施設がありますが良い取り組みですか?
はい、施設の換気状況を利用者に見える化することで、安心感の提供と換気意識の
向上につながる良い取り組みです。コロナ禍以降に導入した施設が増えています。
家庭用のCO2モニターは正確ですか?
NDIR方式のものは比較的正確ですが、安価な製品の中にはVOCセンサーでCO2を推定する
eSenseタイプがあり、精度が低いものもあります。購入時は検出方式を確認する
ことをお勧めします。
CO2センサーの配線はどのように行いますか?
電源線(AC24VまたはDC24V)と信号線(4-20mAまたは0-10V)の2系統が必要です。
ノイズの影響を避けるため動力線とは分けて配線し、シールド線の使用が推奨されます。
ダクト挿入型の取付で注意する点は?
センサープローブはダクトの中心付近に届く長さで挿入してください。
曲がりの直後は気流が乱れるため、直管部の長さをダクト径の5倍以上確保した位置に
設置するのが理想的です。
壁掛け型の設置高さには決まりがありますか?
ビル管法の環境測定は居住域(床上75cm〜150cm)で行うことが定められています。
センサーも同様に床上1.0〜1.5mの高さに設置するのが一般的です。
天井付近は正確な値が得られません。
初回設置時の校正は必要ですか?
多くの製品は工場出荷時に校正済みですが、設置後に屋外の新鮮な空気(約420ppm)で
ゼロ点確認を行うのが望ましいです。DDCへの入力信号が正しい値を
示すか確認してください。
他のセンサーとまとめて施工する際の注意は?
温湿度センサーと一体型の製品を使えば配線・取付の手間を削減できます。ただし
CO2センサーは通気が必要なので、ボックスに密閉して設置すると
正確な測定ができなくなります。
CO2センサーの設置数量はどう決めますか?
原則として空調ゾーン(AHUの給気系統やVAVゾーン)ごとに1台が目安です。
大空間では複数台設置して平均値で制御する場合もあります。会議室は個別に1台ずつ
設置することを推奨します。
DCV制御の設計で注意すべき点は?
最小外気量の確保が最重要です。CO2濃度が低くても、建築基準法で定められた
最低換気量は必ず確保し、外気ダンパーを完全に閉じない制御にしてください。
省エネ計算でDCVはどの程度評価されますか?
建築物省エネ法の一次エネルギー消費量計算において、DCV制御を導入すると
換気動力と空調負荷の両方で省エネ効果が計上され、評価が大幅に改善されます。
CO2センサーの仕様書に記載すべき性能要件は?
検出方式(NDIR方式指定)、測定範囲(0〜2,000ppm以上)、精度(±50ppm以内)、
出力信号の種類、動作温湿度範囲、校正間隔を最低限指定してください。
コロナ対策としてCO2モニターを設置する場合の注意点は?
厚生労働省は換気の目安としてCO2濃度1,000ppm以下の維持を推奨しています。表示型を選び
利用者が見やすい位置に設置して換気行動を促すことが重要です。
NDIR方式を選んでください。
CO2センサーの校正は自分でできますか?
屋外の新鮮な空気を基準にした簡易校正は管理者でも可能です。ただし本格的な校正には
校正ガス(標準ガス)と専用機器が必要なため、メーカーまたは校正業者への
依頼を推奨します。
センサーの値が不安定な場合は何が原因ですか?
エアコンの吹出口直下や窓の近くに設置されている場合、気流の影響で値が安定しません。
また、光源の劣化やセンサー内部への粉塵混入が原因の場合は交換が必要です。
ビル管法の定期測定でCO2センサーの値を使えますか?
常設のCO2センサーの値を参考にすることはできますが、法定の定期測定には
校正済みの検知管法または光音響法による測定器での測定が一般的に求められます。
CO2センサーのデータを記録・保管する義務はありますか?
法的な保管義務はありませんが、BEMSでトレンドデータを記録し、
過去の推移を確認できるようにしておくことを推奨します。テナントからの苦情対応や
省エネ効果の検証に役立ちます。
故障時の応急対応はどうすればよいですか?
センサー故障時はDCV制御が正しく機能しなくなるため、外気ダンパーを手動で
固定開度(換気基準を満たす位置)に設定してください。センサーの交換品を常備して
おくと復旧が早くなります。