自動火災報知設備の『総合盤』とは?
発信機・表示灯・音響装置が一体化した火災報知設備の盤
【超解説】とても簡単に言うと何か?
非常ベル・赤色表示灯・発信機(押しボタン)を一体にまとめた、火災通報用の壁掛け装置です。
1. 基本概要
そもそも何か
総合盤(そうごうばん)とは、自動火災報知設備の「表示灯」、
「地区音響装置(非常ベル)」、「発信機(押しボタン)」の3つの
必須機器を、一つの「機器収容箱(金属BOX)」にまとめた設備のことです。
なぜ必要なのか
この3つの機器は「歩行距離50mごとにセットで設置する」など、
消防法上の設置基準条件が非常に似通っているため、廊下に別々に
バラバラに付けるよりも、一つの箱にまとめて配線した方が
施工性が高く、見た目もスッキリし、緊急時にも見つけやすいためです。
2. 構造・構成機器の原理
① 表示灯(赤いランプ)
「ここに非常ベルと消火栓があるよ!」と遠くからでもわかるように、
24時間365日、停電時以外は絶対に消灯してはいけない赤いランプです。
昔はネオン球や電球でしたが、現在は寿命の長いLEDが主流です。
② 発信機(押しボタン)と③ 地区音響(ベル)
火事を見つけた人が押し込む「赤いボタン」が発信機です。
ボタンが押されるか感知器が動くと、総合盤の中にある「ベル」の
モーターにDC24Vの電気が流れ込み、爆音(90dB以上)を鳴らします。
3. 素材・形状・規格
機器収容箱(キャビネット)の規格
厚さ1.2mm以上(防雨型は1.6mm以上)の丈夫な鋼板製で、
色は周囲の壁に馴染むアイボリー系等の焼付塗装が施されています。
壁のコンクリートの中にスッポリ埋め込む「埋込型」と、
改修工事等で壁の表面にボルトで直接ネジ留めする「露出型」があります。
屋内消火栓との一体化
大きなビルやマンションでは、ホースと水が出る「屋内消火栓」の巨大な
真っ赤な箱の最上部に、この総合盤の機能(ランプ・ベル・ボタン)が
完全に一体化して組み込まれているパターンが非常に多く見られます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
自動火災報知設備の設置義務があるすべての中規模以上の建物です。
逆に、小規模なアパートなどではわざわざ箱(総合盤)にまとめず、
壁に直接「ベル、ランプ、ボタン」を単独で直付けするケースもあります。
具体的な設置位置
長い廊下の端や、階段室の入り口、非常口となる扉のすぐ横です。
「赤いランプ」は10メートル先からでも見える上部の位置にあり、
「ボタン」は床面から0.8m〜1.5mと人間が最も手で押しやすい高さに、
それぞれの黄金比のようなバランスで配置計算されています。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
「光で場所を教える(表示灯)」「音で異変を知らせる(ベル)」
「人間の意志を盤に伝える(発信機)」という、火災時における
3つの超重要アクションが一箇所で完結するため、パニック時に
「ベルは鳴っているが通報ボタンがどこか分からない」という迷いを防ぎます。
デメリット(短所・弱点)
内部にベルを響かせるための「スリット(隙間穴)」が開いているため、
湿気の多い場所や屋外ではそこにクモや虫が巣を作りやすいです。
また、鋼製のため経年劣化でサビて景観(美観)を損なうことがあります。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
「鉄の箱(収容箱)」+「ベル」+「ランプ」+「ボタン」をそれぞれ個別で
バラバラに買って現場で組み立てるため、部品代の合計額となります。
おおよその相場(機器本体価格のみ)
- 表示灯(LED赤ランプ): 2,000円〜3,000円
- 地区音響装置(非常ベル): 4,000円〜6,000円
- 発信機(押しボタン): 2,000円〜3,000円
- 機器収容箱(総合盤の鉄箱): 8,000円〜15,000円
合計目安: 盤1台につき部品代で約2万〜3万円前後。これに配線と設置工事費が加算されます。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
表示灯は24時間点灯しているため寿命が来ます。昔の電球型は数年で
玉切れするため、即LED型への交換が推奨されます。非常ベルやボタン等の
セット全体としての寿命(更新推奨時期)は約15年〜20年です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
「無駄な電気がもったいない」「夜、赤く光ってて眩しい」などの
身勝手な理由で、1階の制御盤にある表示灯の電源を意図的に切ったり、
ランプの電球をわざと緩めて点かないようにする行為は悪質な消防法違反です。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
火事の際、煙で視界が真っ白になった中で、消火器とボタンの場所を示す
「唯一の目印の赤い光」が消えていることで、消火活動や通報が
劇的に遅れ、建物が全焼し住人が死亡する取り返しのつかない事態を招きます。
8. 関連機器・材料の紹介
総合盤と一緒に使われる、周囲の設備のご紹介です。
-
非常押しボタン(発信機):
総合盤のメインの「顔」となる「強く押す」ボタンの単独の詳細解説。
▶ 詳細記事はこちら -
自動火災報知設備(受信機):
総合盤に電気を送り、ベルを鳴らす指示を決定する大元の親分です。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
廊下の赤いランプの電球が切れて真っ暗になっています。
ランプ切れは消防査察で即指導対象になります。ただの玉切れの
可能性が高いため、建物の管理会社や管理人へすぐに報告してください。
LEDのパネルごと交換修理が必要です。
あの赤いランプが、停電しても光り続けるのは本当ですか?
停電時でも、1階のメインの消火用制御盤(又は自火報受信機)に
搭載されている大容量のバッテリーから電気が送られ、
最低数十時間は消えずに赤く光り続けるように法的に作られています。
箱に開いている「網目」や「スリット(隙間)」は何のため?
中に仕舞われている「非常ベル(ジリリリという警報音)」の音を
外に爆音で響かせるための「音抜けの穴」です。ここをシール等で塞ぐと
火災時に音が全く聞こえなくなり危険です。
箱の表面がボロボロにサビていて、ボタンを押すのが怖いです。
外見がサビていても中のボタンの電気的機能は生きていることが多いです。
しかし、火事の際に躊躇させるような環境は良くないので、
オーナー様に再塗装や盤交換を促すべき状態です。
マンションで夜中、赤いランプが眩しくて眠れません。消してよいですか?
絶対に消してはいけません。
法的な義務なため、光を弱く見せるようなシールを勝手に貼るのもNGです。どうしても
気になる場合は、寝室のカーテンを遮光性の高いものへ変更してください。
表示灯を古い電球からLEDに交換するとき、極性の注意はありますか?
古い電球(AC/DC24V)は極性がありませんでしたが、LEDには
基本プラスマイナス(赤・黒)の極性があるため、配線を逆につなぐと点灯しません。
テスターでDC電圧の極性を確認して結線します。
総合盤の中にVVFケーブルや強電のジョイントをしても良いですか?
表示灯の極数が足りずやむを得ずというグレーな現場もありますが、
基本は「ここは火災報知用の箱であるため他の強電回路と混触させるのはNG」です。
絶対に強電VVFなどを経由・ジョイントしてはいけません。
ベルの音をテストで鳴らしたい場合の方法は?
受信機側で「各階鳴動・ベルテスト」のスイッチを入れるか、
総合盤の中に直接DC24Vの電池や検査機をワニ口クリップで直結して音を鳴らします。
必ず作業前に館内放送を入れます。
壁に埋め込むための「開口寸法(穴の大きさ)」はどのくらい?
盤の機種によってミリ単位で異なりますが、
一般的に約 横380mm × 縦200mm × 深さ70mm 等のコンクリートのハツリや
ボードの開口が必須となるため、大工・左官屋さんとの墨出し調整が命です。
「ベル」ではなく「音声スピーカー」が入っている総合盤があるのはなぜ?
これは「非常警報設備(ベル)」の代わりに、「非常放送設備」が
設置されている大型ビルのパターンです。ベルの代わりに
「火事です!」と喋る特殊なスピーカーが組み込まれています。
総合盤の「タテ型」と「ヨコ型」はどのように選定しますか?
基本的には現場の好みのデザインですが、
例えば細い柱の間に設置したい場合はタテ型、壁のスペースが低く横に広い場合はヨコ型など
建築意匠の納まりに合わせて自由に選択して図面を描きます。
ベルが鳴る音の大きさの条件(法規)は?
「設備の中心から1メートルの距離で90dB以上の音圧があること」
と定められています。古くてサビてジ〜という小さい音しか
鳴らないベルは、消防検査で音量測定計に達せずアウト判定を食らいます。
表示灯の「光の広がり方(15度上)」の法規とは?
表示灯の光は、真横ではなく「取り付け面と15度以上の角度となる
方向に沿って10メートルの距離から点灯していることが確実にわかること」という
非常にマニアックな視認性テストの法規定が存在します。
施工後の消防検査で「発信機制動試験」とは何をやりますか?
消防官の目の前で、実際に総合盤の押しボタンを「強く」押し、
「ちゃんとベルが爆音で鳴るか」「盤面の応答ランプがつくか」「管理室の受信機で
火災階が正確に表示されるか」を一連の流れとして実証します。
防雨型の総合盤のシーリング(コーキング)で注意すべき点は?
屋外に設置する際、雨水の浸入を防ぐため盤の周囲をコーキング
しますが、「箱の下部(一番底の面)」だけは万が一内部に入った結露水を
排出させる「水抜き穴」の役割としてコーキングをしないでわざと空けておきます。
消防点検で「ベルの絶縁不良」という指摘を受けました。
ベルの中のモーターコイルに湿気などの水分が入り込み、
電気が建物の鉄骨方面などへ漏電(漏れ出し)しかかっている状態です。
自火報システム全体が機能停止する恐れがあるためベル本体の交換が必要です。
改修工事で壁紙を張り替えるので、総合盤の表面にもペンキを塗って良い?
「赤い表示灯」のアクリルと、「強く押す」と書かれたボタンの
カバー以外(鉄の箱の表面部分)であれば、周囲のデザインに合わせて
建具屋さんが上から色を塗ることは一般的に問題ありません(表示・機能は潰さないこと)。
自火報のベルより、昔のジリジリ鳴る目覚まし時計みたいな音がしますが。
基本的には同じモーターを回して金属の「ゴング(お椀)」を叩く機構です。
ただ、火災報知等のベルはDC24Vという特殊な電圧で強烈に回るよう
耐久設計された消防検定品であるという点で、市販品とは全く別物です。
総合盤の中に、ボタンやベルとは違う謎の「スピーカー」があります。
「戸外表示器」と呼ばれるものです。
その部屋の中でのガス漏れや火災を、廊下(外)にいる人に向けて
「ガスが漏れています」などと音声で知らせる集合住宅特有の追加部品です。
ベルって全部で一斉に鳴るのですか?一部だけ鳴らすことはできますか?
昭和の古いビルは基本的に「建物中が一斉に鳴る(全館鳴動)」方式です。
しかし、高層ビルや巨大マンション等で全館鳴動させるとパニックになるため、
最新の防火対象物では「火事の階とその上の階だけ優先して鳴らす(直上階鳴動)」
が標準です。