排水トラップ(S字トラップ・床排水)とは?
悪臭と虫の逆流を防ぐ防衛線。あえて「水を溜める」優れたU字路
【超解説】とても簡単に言うと何か?
配管をわざとU字に曲げて水を溜め、
下水道からの悪臭や虫の侵入を防ぐ極めて重要な仕組みです。
1. 基本概要
そもそも何か
排水トラップ(Drainage Trap)は、あらゆる衛生器具(トイレ、洗面所、
シンク、お風呂、洗濯機パン)の排水口のすぐ真下に付けられる、
一定量の水(封水・ふうすい)を保持するための機能や構造のことです。
現代の建築物において「トラップの無い排水口」は一つも存在しません。
(もしあれば、部屋中が下水のガスで充満して居住不能になります)。
封水(ふうすい)という名のシールド
トラップ内に意図的に残される水(水深約5cm〜10cmの深さ)を
「封水」と呼びます。上からジャーっと使った水は溢れて下水へ流れますが、
「最後の一杯分の水」だけがU字路のくぼみにコップのように残る、
重力と水位差を利用した極めてシンプルで最強の防御システムです。
2. 構造や原理(管トラップと椀トラップ)
管(サイホン)トラップの代表格
配管自体を曲げて作ったトラップです。
・**Sトラップ**: 洗面台の下から、床へと真っ直ぐ降りていくS字型。
・**Pトラップ**: 壁に向かって横に抜けるP文字の形。掃除がしやすいです。
・**Uトラップ**: 長い水平配管の途中でUの字に曲げたもの(詰まりやすいため現在は使用禁
止です)。
非サイホン(椀・わん)トラップ
お風呂場やキッチンのシンク等でよく見る形です。水溜まりの中に
お茶碗(お椀・ベル)を逆さまに伏せて被せたような構造になっており、
管をクネクネ曲げずに水溜まりを作る仕組みです(ボトルトラップや
ドラムトラップ等、ゴミを回収しやすくした形が色々あります)。
3. 素材・形状・規格
金属製と塩化ビニル製
人目に触れる洗面台の下などでは、意匠性を考慮して見栄えの良い
「真鍮製(黄銅)のクロムメッキ仕上げ(銀ピカ)」が使われます。
一方、床下などで見えない部分は、腐食に完全耐性があり安価な
「硬質塩化ビニル樹脂(塩ビ・グレー色の部品)」製のトラップが一般的です。
床排水トラップ(バスルーム等用)
コンクリートの床にドカッと埋め込まれる鋳鉄(ちゅうてつ)製のゴツいトラップです。
タイル貼りのお風呂場や、トイレの床の水洗い口などに設けられ、
真上から水とゴミを受け止めて、内部の椀(わん)で匂いを防ぎます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設と箇所
水を使う場所の「全て」です。一般住宅から超高層オフィスビル、
病院、飲食店まで、以下の直下には必ず100%トラップが仕込まれます。・洗面ボウル
・キッチンの流し台(シンクの網の下)・洗濯機を置く白いトレー(防水パンの丸い穴の中)
・洋式トイレ(便器のボウルそのものがS字のトラップ構造)
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
電気などの動力を一切使わず、「水そのもの」を壁として利用するため、
基本的には永遠に壊れることなく悪臭とネズミ・虫の侵入を遮断し続ける
ことができる、人類の配管史における最大の偉大な発明です。
デメリット(致命的な弱点・破封)
水溜まり(封水)が干上がったり、消えて無くなるとシールドが「消滅」する点です。
これを「破封(はふう)」と呼び、一旦水溜まりが消えると、下水道の
あの凄まじい悪臭ガス(硫化水素など)と、配管を這い登ってくる
数百匹のチョウバエやゴキブリに部屋が完全に侵略されます。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
トラップ部分は樹脂や金属の継手(パーツ)であるため、非常に安価です。
おおよその相場(材料費のみ・交換工賃は別途)
- 樹脂製・洗面用Sトラップ: 約 1,500円〜3,000円
- 金属製(メッキ)S/Pトラップ: 約 5,000円〜10,000円
- システムキッチンの椀トラップ一式: 約 4,000円〜8,000円
合計目安: ホームセンターで普通に買える部品であり、
DIYで交換する場合は数千円で済みますが、水漏れ(シーリング)のリスクが伴います。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
金属製のメッキトラップの場合、下水ガスや洗剤の酸により、
10年〜15年ほどで金属の下側から「青サビ(緑青)」が吹き出し、
ある日突然ピンホール(極小の穴)が空いて水浸しになります。
パイプの一部が黒や緑に変色してきたら、腐食による寿命のため全交換です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
配管の世界で最大の禁忌(絶対のタブー)が「二重トラップ」です。
既にトラップが内蔵されている器具(例:トイレ)の先に、
もう一個曲がったトラップを設置すると、2つの水溜まりの間のパイプ内に
「空気が完全に閉じ込められて逃げ場を失い」、空気のクッションがフタをして
水が一滴も流れなくなります。(ゴボッ!と逆流して溢れ出します)。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
一般の方がDIY配管をした際や、洗面台を交換する際に、床下にもトラップ
があるのに洗面台の下にも新しくS字パイプをつけてしまう等が典型です。
水を流しても「ボコボコボコッ!」と変な音がして全く排水されず、
原因不明の詰まりと勘違いして途方に暮れることになります。
8. 関連機器・材料の紹介
トラップの機能維持のために共生している配管の裏方たちです。
-
通気管(つうきかん)・通気弁:
トラップの水溜まりが、サイホン現象による「吸引力」で
下水へズルッと吸い込まれるのを防ぐため、パイプに意図的に
空気を吸い込ませるための「息継ぎ用パイプ」です。
(トラップと通気管は切っても切れない関係です)。 -
排水管(塩ビ管・耐火二層管):
トラップを無事に抜けた汚水たちが、重力に従って勾配を
滑り降りていく下水へと続くメイン道路です。
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9. 多角的なQ&A(20連発)
長期間家を空けて帰ってきたら、部屋中が下水道のひどい悪臭に包まれています。
トラップの「封水切れ(蒸発)」が原因です。
1ヶ月以上水を流さないと、水溜まりが自然蒸発して干上がり、下水の
ガスが部屋へ素通り状態になります。各所の蛇口(トイレや風呂含む)から
水をコップ数杯流し込めば、水でフタがされてすぐに匂いは収まります。
上の階の人がトイレを流すと、うちのトイレの水が「ゴボッ」と引っ張られて減ります。
「誘導サイホン現象」と呼ばれる破封の危機です。
上から大量の水が落ちてきた際、下の階の配管内の空気が引っ張られて「真空掃除機」
のような状態になり、トラップの水溜まりがズボッと吸い出される現象です。
配管の空気抜き(通気機能)の不良が疑われるため管理会社へ連絡です。
キッチンのシンクからドブの匂いがするので、トラップを掃除したいです。
シンクの網を外すと、真ん中にお椀(釣り鐘)がポコッと被さっています。
これを左に回して外すと、その裏や周りの溝に「ドロドロに腐った油汚れや生ゴミ」
がヘドロ化して悪臭を放っています。歯ブラシと洗剤で磨き上げ、
必ずお椀を元に戻してください。
洗面台で指輪(ピアス)を落として水と一緒に流してしまいました!
まだ間に合う確率が高いです。
SトラップのU字で曲がっている一番下の水溜まり部分に、重い金属の指輪は
沈んで留まっているはずです。これ以上水を流さず、下にバケツを置きながら
パイプの繋ぎ目(U字の底のフタ等)をレンチでそっと外して内部を取り出してください。
洗濯機を回すと、排水溝の周りから水が溢れ出して床が水浸しになります。
洗濯機パン(防水パン)の丸いトラップの内部に「糸くず・髪の毛・洗剤カス」が
層のように重なって詰まり、水の通り道を塞いでいます。
トラップを分解して、内部のドロドロ網を定期的に掃除しないと水は永遠に溢れ続けます。
床の開口がズレており、Sトラップの縦管と床の排水口が2センチほどズレて刺さりません。
樹脂製であれば「ジャバラホース」などのたわみで誤魔化すことも可能ですが、
金属管(ステッキ管)の場合は少しでもナナメに突っ込むとパッキンが浮いて
確実に漏水します。偏心継手(クランク部品)を使うか、
配管をバーナーで炙って曲げ直す職人技が必要です。
Sトラップの底の「掃除口(プラグ)」からジワジワ水漏れします。
プラグのゴムパッキンが劣化しているか、シールテープの巻き方が甘い状態です。
また、プラグを力任せにモンキーレンチで締めすぎると、真鍮のトラップ本体が「パキッ」
とヒビ割れて全損するため絶対にフルパワーで締めてはいけません。
「Uトラップ(U字に曲がっただけの管)」が現代の法規で禁止された理由は?
水平に走る配管の途中にU字の曲がりを作ると、水溜まりの中に
「トイレットペーパーや汚物の塊が蓄積して確実に詰まる」からです。
トラップは必ず、縦に落下する最初の「入り口」の真下(自己洗浄作用が働く位置)
に設けなければならないのが排水の鉄則です。
排水トラップの「封水深(ふうすいしん・水深)」の法的な規定は?
「50ミリ以上、100ミリ以下(5cm〜10cm)」と建築基準法等で厳格に決まっています。
浅すぎると蒸発や風の波立ちですぐに破封(ガス抜け)し、
深すぎると底にゴミが沈殿してヘドロ化しやすくなるため、
この絶妙な深さが人類の長年の結論です。
高層マンションの大規模修繕で、トラップの「跳ね出し」という現象が問題になっています。
上の階の住民が一斉にバスタブの水を抜いた際、縦管の中で
圧縮された空気が下の階のトラップの封水を「ボコッ!!」と部屋側(上に)
吹き飛ばす現象(正圧による破封)です。これを防ぐため、
最新の特殊継手(ソベント継手等)を使って圧力を逃しています。
ドラムトラップ(樽型の大きなトラップ)を設計で指示する場合の注意点は?
一度に大量の封水を保持でき長期間破封しないメリットがありますが、
ゴミが底に沈殿しやすいため、必ず「上から容易にフタを開けて掃除できる場所
(床点検口の真下など)」に設置しなければなりません。
床下に完全に密閉すると後で地獄を見ます。
空調屋が「エアコンのドレン管にトラップを付けろ」と言ってきましたが必須ですか?
必須です。エアコンのドレン(結露水)が、もし直接下水管に繋がっていると、
夏場にエアコンのファンの吸引力で、下水管内の猛烈な悪臭を
「エアコンが部屋中にばら撒く(直結臭)」という恐怖の現象が起きるため、
必ず途中に間接排水トラップを挟みます。
ルーフドレン(屋上の雨水排水口)にはトラップは必要ですか?
雨水配管は下水(汚水)とは完全に別系統であり、直接川や側溝へ流れるため
原則トラップは不要です(悪臭が存在しないため)。逆にトラップを付けると、
落ち葉や泥が溜まって即座に詰まり屋上がプールになるため付けません。
引き渡し前の新築物件で、トラップの水が干上がる(蒸発する)問題の対策は?
竣工から入居まで数ヶ月空く場合や、夏の暑い時期は数週間で水が蒸発します。
そのため、トラップの封水の中に「蒸発防止剤(特殊な油の膜)」などを垂らしておくか、
サランラップで水引口ごと密閉して蒸発を防ぐのが、引き渡しの品質管理として重要です。
テナントビルの厨房に「グリーストラップ(阻集器)」を入れる場合、床トラップは?
阻集器(グリーストラップ)自体が「巨大なトラップ」の機能を兼ね備えています。
そのため、阻集器の手前にさらに床トラップをつけてしまうと「二重トラップの禁止」
に抵触して厨房の水が溢れるため、
必ずトラップ構造のない(ただの網の)排水口を使わせます。
トイレの便器の中の「水溜まり(封水)」の水位が、いつもより異様に低いです。
奥の配管(下水管)のどこかが「毛玉のような異物」で詰まりかけており、
その異物が毛細管現象で、スポンジのように便器の水を少しずつ下へ
吸い出している(自己破封している)初期症状です。
「スッポン(ラバーカップ)」等で早期に奥の詰まりを押し抜く必要があります。
洗面台下のSトラップから水を抜く「掃除口のフタ(プラグ)」が固くて回りません。
長年のサビ(水垢と緑青)で真鍮が完全に固着・冷間溶接されています。
無理に強大なレンチで回そうとすると、プラグがナメる(削れる)だけでなく
トラップ本体の首がねじり切れて大惨事になるため、潤滑剤を吹くか、
諦めてパイプごと新品に交換する方が早いです。
入居者が「排水溝に市販のパイプクリーナー(強アルカリ性)
を毎日流している」と言っています。
緊急警告してください。
パイプユニッシュ等の強アルカリは髪の毛は溶かしますが、金属製のメッキトラップ
の内部に長時間留まると、金属自体をボロボロに「溶かし」て一瞬で寿命を迎えます。
予防目的の過剰な使用は厳禁で、樹脂配管以外では注意が必要です。
浴室からの悪臭がひどく、洗い場の「排水溝の椀(お茶碗のフタ)」がありません。
前の入居者や清掃会社が「ゴミがすぐに詰まって水が流れないから」という理由で、
トラップの心臓部である椀(ベルトラップカバー)
を意図的に外して持ち帰って(捨てて)しまった
最悪の状況です。これがないと完全な直結状態であり、
即時メーカーから椀の部品だけを取り寄せて被せてください。
使っていない部屋の匂いを防ぐため、トラップの排水口をガムテープで完全に塞いでもいい?
一時的な「封臭(匂い止め)」対策としては非常に有効です。
特にオフィスビルなどの退去後空室では、清掃から次の入居まで1年空く等ザラにあります。
水が干上がっても下水ガスが上がってこないよう、
排水口の上からビニールと強粘着テープで「フタ」
をしてしまうのが一番安上がりな確実な方法です。