排水ポンプ(水中ポンプ)とは?
地下ピットなどに溜まった湧水や排水を排出するポンプ
【超解説】とても簡単に言うと何か?
ビルの地下にたまった汚水や雨水を、 自動で汲み上げて下水道に流す水中設置型のポンプです。 地下にトイレや厨房がある場合、 重力だけでは下水道に排水できないため、 このポンプで強制的に排水を押し上げます。 水位が上がると自動で動き出す仕組みです。
1. 基本概要
そもそも何か
排水ポンプ(水中ポンプ)は、 汚水槽・雑排水槽や 湧水槽の中に設置され、 貯まった排水を下水本管の高さまで 揚水(くみ上げ)するためのポンプです。 モーターとポンプが一体化した構造で、 水中に沈めた状態で運転します。
なぜ必要なのか
建物の排水は重力で下水道に流すのが基本ですが、 地下階の排水は下水本管より低い位置になるため、 重力排水ができません。 排水ポンプで強制的に地上の下水管の高さまで 汲み上げる必要があります。 また、建物周囲の湧水や雨水の排除にも使われます。
2. 種類と構造
用途別の種類
- 汚水用水中ポンプ: トイレの汚水を含む排水を処理。 固形物の通過径が大きく(φ40〜80mm)、 詰まりにくい設計。ノンクロッグ型が主流。
- 雑排水用水中ポンプ: キッチン・洗面・浴室からの排水を処理。 油脂分やゴミに対応した構造。
- 湧水用水中ポンプ: 地下水(湧水)の排除用。 比較的きれいな水を大量に処理。
- 雨水用水中ポンプ: 地下の雨水貯留槽からの排水用。 砂や小石に対応した耐摩耗型。
自動運転の仕組み
水位検知器(フロートスイッチまたは電極棒)で 槽内の水位を監視します。 水位が起動水位に達するとポンプが自動起動し、 停止水位まで下がると自動停止します。 通常2台1組で設置し、交互運転で均等な稼働を図り、 1台故障時にはもう1台が自動的にバックアップします。
3. 素材・形状・規格
材質
- ケーシング(外殻): 鋳鉄(FC200)またはステンレス鋼(SUS304)
- インペラ(羽根車): 鋳鉄、ステンレス、または特殊樹脂
- 軸シール: メカニカルシール(二重シール式)
主な仕様
- 口径: 40A〜150A(排水量に応じて選定)
- 電動機出力: 0.4kW〜7.5kW(一般的なビル用)
- 揚程: 5〜20m(地下深さに応じて選定)
- 接続方式: 着脱装置(ガイドレール式)による水中設置が標準
関連規格
JIS B 8325「小形水中モーターポンプ」に準拠します。 排水用途に応じてJIS B 8313「汚物用水中ポンプ」も適用されます。
4. 主に使用されている場所
- ビルの地下階の汚水槽・雑排水槽
- 地下駐車場の湧水排水
- 地下鉄駅の排水設備
- 地下街の排水設備
- 建設現場の仮設排水(工事用水中ポンプ)
- 浸水対策の排水設備
5. メリット・デメリット
メリット
- 省スペース: 水中設置のため、地上に設置スペースが不要。
- 低騒音: 水中に沈んでいるため運転音が小さい。
- 自動運転: 水位検知で自動起動・停止。常時の監視が不要。
- メンテナンス性: ガイドレール式なら槽内に入らずに引き上げ可能。
デメリット
- メンテナンス環境: 汚水槽内の作業は環境が厳しく、専門業者が必要。
- 詰まりリスク: 異物の流入によりインペラが詰まる場合がある。
- 故障時の影響: ポンプ故障で排水が停滞すると、地下階の浸水に直結。
6. コスト・価格の目安
おおよその相場
- 汚水用水中ポンプ(0.75kW): 約10〜25万円/台
- 汚水用水中ポンプ(2.2kW): 約25〜50万円/台
- 湧水用水中ポンプ(0.4kW): 約5〜15万円/台
- 制御盤(2台交互運転用): 約15〜40万円
- 交換工事費(1台): 約10〜30万円
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期
排水ポンプの耐用年数は7〜10年が目安です。 汚水用はし渣(固形物)の影響で劣化が早く、 メカニカルシールの交換は3〜5年ごとに必要です。 制御盤は15〜20年での更新を推奨します。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
おしぼり、ビニール袋、布類などの異物を 排水口から流すこと。 ポンプのインペラに絡まって詰まりを起こし、 ポンプが過負荷で停止します。
交互運転の一方が故障しても 残り1台で動くからと修理を後回しにすること。 残った1台も故障すると排水が完全に停止し、 地下階が浸水する重大事故に発展します。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
ポンプの詰まりや故障を放置すると、 排水槽が満水になり地下階全体に排水が逆流します。 地下の電気設備や倉庫が浸水すると 多額の損害が発生し、復旧にも長期間を要します。
8. 関連機器・材料の紹介
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汚水槽・雑排水槽:
排水ポンプが設置される排水貯留槽。
▶ 詳細記事はこちら -
加圧給水ポンプ:
給水用の加圧ポンプ。排水ポンプとは用途が異なる。
▶ 詳細記事はこちら -
フロートレスリレー:
電極棒式の水位検知で排水ポンプを自動制御する装置。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
地下のトイレからゴボゴボ音がするのは排水ポンプの異常ですか?
通気管の不備やポンプの吐出量不足で排水が追いつかない場合に音が発生します。管理者に報告して点検を依頼してください。
地下の機械室からブーンという音がしますが何ですか?
排水ポンプの運転音の可能性があります。排水が貯まると自動で運転し、排水完了で停止します。常時鳴り続ける場合は異常の可能性がありますので管理者に連絡してください。
大雨の日に地下階が水浸しになりました。原因は?
排水ポンプの処理能力を超える雨水の流入か、ポンプ故障が考えられます。雨水排水ポンプと汚水排水ポンプは通常別系統のため、どちらの問題かを確認する必要があります。
マンションの地下ピットにあるポンプは何ですか?
建物周囲の地下水(湧水)を排出するための湧水ポンプです。地下水位が高い地域では、建物の浮き上がり防止のためにも常時稼働している場合があります。
排水ポンプの電気代はどのくらいですか?
使用頻度によりますが、一般的な事務所ビルの汚水ポンプ(0.75kW×2台交互運転)で月額数百円〜数千円程度です。
ガイドレール式の設置手順は?
①ガイドレールと着脱装置を槽内に固定 ②ポンプにチェーンを取り付け ③ガイドレールに沿ってポンプを降下 ④着脱装置に自動接続。引き上げ時はチェーンで持ち上げるだけです。
吐出配管の逆止弁は必要ですか?
必須です。ポンプ停止時に吐出管内の水が槽に逆流するのを防ぎます。逆止弁と仕切弁(ゲートバルブ)をセットで設置してください。
フロートスイッチと電極棒、どちらが良いですか?
汚水槽ではフロートスイッチにし渣が絡まるリスクがあるため、電極棒(フロートレスリレー方式)が推奨されます。湧水槽ではフロートスイッチでも問題ありません。
ポンプの揚程はどう計算しますか?
必要全揚程=実揚程(槽底面から吐出先までの高さ)+配管の摩擦損失で計算します。安全率として10〜20%を加算して選定してください。
工事用の仮設水中ポンプの選び方は?
工事用は移動が多いため軽量なアルミボディ製が便利です。揚程と処理量を現場条件に合わせて選定し、必ずアース付き電源で使用してください。
2台交互運転の制御方式は?
制御盤に先発・後発の設定があり、1回ごとに起動するポンプを切り替えます。高水位(異常水位)では2台同時運転に移行し、さらなる上昇で警報を発します。
排水ポンプの容量選定で注意すべき点は?
ピーク時の排水量に対してポンプ1台で処理できる容量を確保することが基本です。時間最大排水量の1.5〜2倍の余裕を持たせた選定が推奨されます。
排水ポンプの非常用電源は必要ですか?
停電時に地下階の浸水を防ぐため、排水ポンプは非常用発電機からの電源供給を推奨します。特に地下が深い建物では必須と考えてください。
排水ポンプの試運転での確認項目は?
①各水位での自動起動・停止動作 ②交互運転の切替 ③高水位警報の動作 ④回転方向の確認 ⑤振動・異音の有無 ⑥吐出量の確認 を行ってください。
BCP(事業継続計画)で排水ポンプの重要度は?
排水ポンプの停止は地下階の浸水に直結するため、BCPでは高い優先度が必要です。予備品の確保、非常用電源の接続、復旧手順の策定を計画しておくべきです。
排水ポンプの定期点検項目は?
月1回: 自動運転の動作確認、異音・振動のチェック。半年1回: 絶縁抵抗測定、電流値の測定。年1回: ポンプ引き上げ点検(インペラの摩耗、メカニカルシールの確認)。
ポンプが頻繁に起動・停止を繰り返すのは異常ですか?
起動水位と停止水位の差(有効水量)が小さすぎる場合に発生します。水位設定の見直しが必要です。漏水による流入の増加も原因として考えられます。
ポンプの電流値が上昇している場合は?
インペラへの異物の絡まり、軸受けの摩耗、メカニカルシールの劣化が考えられます。早期に点検し、過電流によるモーター焼損を防いでください。
排水槽の清掃頻度は?
汚水槽・雑排水槽の清掃は年1回以上が法的に義務づけられています(ビル管理法対象建物)。清掃時にポンプの点検も同時に行うのが効率的です。
ポンプ交換時に注意すべき点は?
メーカーと型番が同一のものに交換するのが最も安全です。廃番の場合は口径・能力・着脱装置の互換性を確認してください。制御盤の設定変更が必要な場合もあります。