加圧給水ポンプユニットとは?
全階の蛇口へ水を弾き飛ばす「圧送の心臓」。インバータ駆動の水流エンジン
【超解説】とても簡単に言うと何か?
タンクの水を建物内の各フロア・各蛇口へと力強く送り出すための強力なポンプです。
1. 基本概要
そもそも何か
加圧給水ポンプは、電気の力(モーター)で羽根車(インペラ)を回し、
遠心力を使って水に「圧力(逃げ切る力)」を与えて上階へと送る機械です。
現在はモーター、圧力センサー、制御盤、空気タンクなどが一つの
架台上に組み上げられた「ユニット(パッケージ品)」として販売されています。
昔の屋上タンク(高架水槽)との決別
昔のビルは、一度ポンプで屋上の「高架水槽」に水をドバっと貯め、
そこから重力で各階へ落とすだけでした。
しかし、屋上の巨大なタンクは地震で倒壊する危険性や、水が温まって
不衛生になる問題があったため、屋上タンクを廃止し、下から直接
各階の蛇口へ水を圧送し続けるこの「加圧給水方式」が現在の主流となりました。
2. 構造や原理(インバータ制御の頭脳)
圧力一貫制御(蛇口を開けた分だけ動く)
このユニットの頭脳は「圧力センサー」と「インバータ」です。
・1人が手を洗っている時 = モーターをゆっくり回す(省エネ)。
・朝など10人が一斉にシャワーを使っている時 = モーターを全力フル回転。
このように、使われている水の量に応じて、パイプ内の圧力が一定に
なるよう「自動でモーターの回転波の早さをコントロール」しています。
常に「2台一組(交互運転)」の理由
ユニットには必ず同じポンプが「2台(または3台)」並んでいます。
これは、1台が故障しても断水させないための「バックアップ(予備)」
であり、通常時は片方だけが動き、1回動くごとに左右が交代(ローテーション)して
モーターの摩耗と疲労を平等に分散させる「自動交互運転」を行っています。
3. 種類・工法(直結増圧方式の台頭)
受水槽加圧方式(タンクあり)
受水槽に一度溜まった水を吸い上げて送る、長年使われてきた王道のポンプ。
断水時もタンクの水がなくなるまでは送り続けられるのが強みです。
水道直結増圧方式(ブースターポンプ・水槽なし)
最近の大きなトレンドが「直結増圧ユニット(ブースターポンプ)」です。
道路の水道本管の水(すでに少し圧がある)を、タンクに貯めずに直接
ポンプに引き込み、その圧力を「追い風」にして上層階までさらに
増圧して押し上げる魔法のポンプです。極めて衛生的で省スペースです。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
中高層マンション、オフィスビル、ホテルなど、水圧が自然には
届かない「3〜4階建て以上の全ての建物」の1階や地下機械室。
特に直結増圧ポンプは、敷地が狭くて受水槽が置けない都心の
ペンシルビル(細長いビル)などにおいて重宝されています。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
屋上をガラ空きにできる(高架水槽が不要になる)ため、屋上に
ペントハウスや太陽光パネル、緑化庭園を作れるようになります。
また、最上階の部屋は重力がないため「シャワーの勢いが弱い」という
昔のマンションの永遠の課題を、下から高圧で押し上げることで解決しました。
デメリット(短所・弱点)
「停電すると一瞬で断水する」という致命的な弱点があります。
昔の高架水槽方式なら、ポンプが止まっても屋上に残った数十トンの水は
重力で落ちてきましたが、加圧給水はモーターが命綱であるため、
電気が止まれば1滴の水も蛇口から出なくなります(よって非常電源が必須です)。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
精密なインバータ制御盤と2台のモーターがセットになっているため、
ビル設備の中でも非常に高価な部類の精密機械となります。
おおよその相場(機器本体費+交換工事費等)
- 小型マンション用(数世帯用・1.5kW程度): 約 80万円〜150万円
- 中〜大型マンション用(3.7kW〜5.5kW): 約 150万円〜350万円以上
- 直結増圧ブースターユニット(口径50A等): 約 200万円〜400万円以上
合計目安: 機器の寿命(約10〜15年)での更新が必須。
断水させずにバイパス管を組んで交換する「無断水工事」を行うとさらに費用がハネ上がります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
法定耐用年数は15年とされていますが、10年を超えるとメカニカルシール
(モーターの軸のパッキン)から水漏れが始まり、インバータ基盤の
コンデンサが寿命を迎えます。
基盤が完全に焼き切れて「突然の全館断水」になる前に、10〜12年で
ユニットを丸ごと取り替える(予防保全)のが鉄則です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
設計ミスなどで、ポンプが水を吸い込む際に無理な力がかかると、
水の中の圧力が低下して「真空の泡」が無数に発生します。
この泡がポンプ内で弾ける際に、ハンマーで叩いたような強烈な衝撃波(キャビテーション)
が発生し、鋼鉄の羽根車(インペラ)を数ヶ月でボロボロに破壊し尽くします。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
キャビテーションが起きると、ポンプから「ガラガラガラ!」という
石を砕くような異音と激しい振動が発生し、金属の破片がパイプを破って大漏水事故になります。
吸い込み側の配管は十分に太く短く、真っ直ぐにするのが流体力学の基本です。
8. 関連機器・材料の紹介
ポンプ周辺で重要な働きをするシステム構成要素です。
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受水槽(貯水タンク):
このタンクに水が溜まっていなければ、加圧ポンプは
いくらパワーがあっても「空吸い」してモーターが焼き付きます。
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動力制御盤(ポンプ盤):
ポンプに200Vの強力な三相電力を供給し、漏電時には
ブレーカーを落としてモーターの焼損ルートを遮断する電気回路の守護神です。
9. 多角的なQ&A(20連発)
夜に蛇口をひねると「キィィィィン」という小さい機械音が響いてきます。
ポンプを制御している「インバータ制御盤」特有の変圧ノイズ(キャリア周波数音)か、
モーターのベアリング(軸受け金物)が摩耗してきている悲鳴です。
壁や配管を伝って音が響いてきているため、
管理会社へベアリングの交換を依頼してください。
朝、お湯やシャワーを使っていると、急にお湯の勢いが弱くなったり強くなったりします。
マンションの誰か他の人が同時にシャワーを出したり止めたりしたため、
配管全体の水圧が変動し、ポンプがモーターの回転数を「ウィーン、シューン」と
急いで調整(追従)している瞬間のタイムラグによる現象(脈動現象)で、
ある種致し方ありません。
停電になると、トイレの水が1回しか流せなくなるのは本当ですか?
本当です。加圧給水ポンプは電気で動くため、建物全体の水が止まります。
トイレのタンクの中に溜まっている1回分の水は流せますが、その後は
空っぽになるため、給水車からバケツで水を運んで便器に直接流し込む必要があります。
ポンプユニットに付いている小さな丸いタンク(アキュムレーター)は何?
「空気とゴム膜が入った圧力タンク(クッション)」です。
コップ一杯程度の水を使っただけで毎回大きなモーターが回ると電気の無駄なため、
このタンクの中に蓄えられた「風船の空気圧」の力で、
少量の水ならやり過ごすための省エネ装置です。
1階の部屋は水圧が強すぎる気がするのですが、調整できますか?
ポンプは最上階(10階など)に合わせても猛烈な圧力を出しているため、
下層階はどうしても水が飛び散るほど強烈な水圧(過大圧)になります。
各部屋ごとに「減圧弁」という圧力を下げる金物をパイプに噛ませて、
強すぎないように調整しています。
新品のポンプを設置後、電源を入れても水が全く上がりません。
「呼び水(よびみず)」を忘れています。
ポンプは空気を吸っていても永遠に空回りするため、最初に必ずポンプの中に「やかん」
で上からジャブジャブと満水状態になるまで水を満たしてから始動させます。
ポンプの「封水(メカニカルシール)」からポタポタ水が漏れています。
回転する鉄の軸の隙間を埋めるゴムとセラミックのパッキンが寿命で擦り減っています。
そのまま放置するとモーター内部に水が侵入して漏電・破裂・焼損するため、
直ちにポンプを分解してメカニカルシール一式(グランドパッキン)
の交換(オーバーホール)を行います。
直結増圧ポンプのユニットの前に、「逆流防止器」をつける理由は?
水道法で絶対の義務とされています。
建物の汚れた水が、ポンプの圧力変動バグによって「道路の水道局の本管へ逆流」
してしまうと、町中の飲み水が汚染されるため、
それを物理的に100%遮断するための関所です。
ポンプと配管の間を「防振継手(ゴム製)」で繋ぐのはなぜですか?
モーターの激しい振動(ンーッという重低音)が、鉄パイプを伝って
「固体伝搬音」としてマンション中の部屋の壁に鳴り響いて大クレームになるからです。
配管の途中にゴムやテフロンの柔らかい継手(フレキ)を挟んで振動を縁切りします。
三相モーターの配線(R-S-T)を間違えて逆に繋ぐとどうなりますか?
モーターが「逆回転」します。
遠心ポンプが逆回転しても少量の水は出ますが、正規の圧力の10分の1も出ず
「あれ?水圧が全然上がらないぞ?」という恥ずかしい初歩ミスになります。
すぐに2本の線を入れ替えます。
直結増圧給水を採用するための「水道局との事前協議」は何をチェックされる?
その建物周辺の「道路の水道管のサイズ」と「地域の水圧の余力」です。
大きなポンプで周辺の水を一気に吸い上げると、近隣の家の水が出なくなる
懸念があるため、水道局が「うちの配管網なら許可する・しない」を計算機で弾き出します。
ポンプユニットの基礎(コンクリートの台座)の寸法や強度の注意事項は?
ユニットは数百キロの重量に加えて、稼働時の強烈な振動エネルギーがあるため、
床のコンクリートの上に規定以上の「防振架台」や「厚手の基礎(スラブ)」
を打ち、強固なアンカーボルトで引き抜けないよう四隅を完璧にロックさせます。
ポンプの吐出量が図面通りに出ているかの「性能検査」はどのように行う?
配管のバイパスルートを開け、流量計(水量メーター)と圧力計を見ながら、
メーカーの「性能曲線(Q-Hカーブ)」の通りに、「毎分300リットル流した時に
何メートルの圧力を維持できているか」を記録して完成図面に添付します。
マンションのポンプ交換を「断水なし(仮設バイパス)」でお願いされました。
大変過酷な工事です。古いポンプの横に「小さな仮設ポンプ」を仮組みして
ホースで水を送りつつ、本命のポンプの配管を切り離して新品に入れ替えるという
神業の段取りが必要です。作業費が跳ね上がるため、
「なんとか夜間の2時間だけ断水させてくれ」と交渉すべきです。
受水槽の底の高さより、ポンプの吸い込み口が高くても設計上問題ない?
「吸い上げ配管」となり、最もトラブルが多発する悪手です。
空気を噛みやすく「呼び水」が抜けると一発で断水します。ポンプの中心は必ず
「受水槽の底より低い位置(水頭圧が常にかかっている押し込み配管)」
に設計するのが流体の絶対鉄則です。
「インバータ異常」のランプが点灯して赤い警報音が鳴っています。
基盤が熱暴走したか、雷(サージ)等で電気的にショートした可能性が高いです。
とりあえずパネルを開けて一度「電源ブレーカーを落として再起動(リセット)」
すると復旧率が高いですが、
再発を繰り返すなら制御盤まるごとの交換(数十万)が迫っています。
誰も水を使っていない夜中なのに、ポンプが「5秒だけ動いて止まる」を繰り返します。
「空気タンク(小玉・アキュムレーター)のゴム膜破れ」か、または配管の
どこか(地中や空室のトイレなど)で「水がチョロチョロと漏水している」サインです。
圧が抜ける→ポンプが回る→すぐ高圧になる→止まる を永遠に繰り返し、
数日でモーターが死にます。
ポンプに「荏原製作所」「川本ポンプ」「テラル」などメーカーが色々あります。
日本のビッグスリー(給水ポンプの三大メーカー)です。
性能に大きな差はありませんが、入居時のオーナーの好みや取引で決まります。
交換の際は配管の「寸法(高さや配管位置)」が違うと工事が面倒になるため、
基本は同じメーカーの後継機を選びます。
直結増圧ポンプなのに、地域の「特定日(夏場の夕方等)」だけ断水します。
水道局の本管の水圧低下が原因です。
夏場の一斉の庭の水やりや、近隣に巨大なタワマンが建ったことなどで
地域の吸水バランスが崩れ、ポンプへ来る元の水圧が「規定値以下」になると、
吸い込みすぎを防ぐためにポンプは「自動で異常停止」し、断水から復帰しなくなります。
15年目のポンプですが、壊れるまで使い続けて(延命して)も良いですか?
「ある朝突然水が出なくなり、入居者全員が大激怒するクレーム電話で起こされる」
リスクを許容できるなら構いません。ポンプ部品は発注しても数週間届かないことが多く、
その間ずっと断水マンションになるため、
必ず「稼働している間に予防・計画交換」がビル経営の常識です。