受水槽(貯水タンク)とは?
建物に給水するための貯水設備
【超解説】とても簡単に言うと何か?
建物全体で使う水を一時的に貯めておくための巨大なタンクです。
災害時の非常用水源としても活躍します。
1. 基本概要
そもそも何か
受水槽(じゅすいそう・Receiving Tank)は、一度に大量の水が
必要になる中〜大規模な建物において、水道局から送られてくる水を
受けてストックしておく「一時貯留タンク」です。
受水槽を経由した水は、そこから先の管理責任が「水道局」ではなく
「建物のオーナー(所有者)」へと完全に切り替わります。
なぜ「水道直結」にしないのか?
戸建ての場合は、道路の水道管の圧力だけで蛇口まで水が届きますが、
大きなマンションで朝一番に「全員が一斉にシャワーやトイレを使う」と、
道路の水道管だけでは水量が全く足りず、水が出なくなります。
そのため、夜間にチョロチョロと受水槽に水を溜めておき、急な大出力に
対応できる「ダム」のような役割を果たしています。
2. 構造や原理(定水位弁の魔法)
水が自動でピタッと止まる仕組み
受水槽の中に「ボールタップ(浮き玉)」という、トイレのタンクと
同じ原理の玉が浮いており、水面が下がると玉が下がってバルブ(FM
バルブ・定水位弁)が開き、水が「ザーッ」とタンクに注がれます。
水が満タンになって玉が浮き上がると、自動でピタッと水が止まります。
6面点検の原則
受水槽は「飲み水(飲料水)」を溜める極めて衛生的な設備です。
そのため、タンクの「上下・前後・左右」の全6面の外側を人間が
歩いて目視点検できるよう、壁や天井から数十センチ離して空中に
浮かせるように設置する「6面点検スペースの確保」が法的に義務付けられています。
3. 素材・形状・規格
FRP(繊維強化プラスチック)製
現在最も普及しているのがFRP製です。軽くてサビず、四角い「パネル」
を現場でプラモデルのようにボルトで何十枚も繋ぎ合わせて巨大な箱に
組み上げます。太陽光を通さない構造になっており、タンクの中で
「藻(モ)」が光合成をして繁殖するのを防いでいます。
ステンレス製・コンクリート製
高級なビルでは、非常に高価ですが絶対に劣化せず衛生的な「ステンレス製」
パネルが用いられます。逆に昔の古いビルでは、建物の基礎(地下)と
一体化した「コンクリート製」が使われていましたが、ヒビ割れから
地下水(汚水)が混入する事故が多発し、現在は原則として禁止されています。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
「3階建て以上の建物」や「世帯数の多いマンション」「病院」「学校」
「ホテル」「大型商業施設」など、大量の水を使う全施設の心臓部です。
敷地内の空き地(地上)や、普段は立ち入れない地下の機械室の奥深く、
または高架水槽として屋上のてっぺんに鎮座しています。
5. メリット・デメリット
メリット(災害時の命綱)
地震などの災害で「水道本管が断水」した場合でも、受水槽の中には
数トン〜数十トンの水がストックされているため、非常用の飲料水
またはトイレの流し水として数日間は自力で凌ぐことができる点です。
(取り出し用の緊急バルブがタンク下部についている製品が多いです)。
デメリット(衛生管理の手間)
水が空気に触れて「滞留(よどみ)」するため、塩素濃度が低下しやすく、
建物の管理者がしっかりメンテナンスしないと、飲み水の中に
サビや砂、ひどい時にはカビ・虫の死骸が入った水を飲まされるという
最悪の衛生リスク(水質悪化)を常に抱えている点です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
サイズ(水量=トンの容量)によって価格はケタ違いに跳ね上がりますが、
定期的な清掃維持費が毎年確実にランニングコストとして発生します。
おおよその相場(FRP製タンク本体+付帯配管費)
- 小型(容積 5t 〜 10tクラス): 約 150万円〜300万円
- 中〜大型(容積 30t 〜 50tクラス): 約 500万円〜800万円以上
- 受水槽の定期清掃費(年1回必須): 1回あたり 4万円〜10万円程度
合計目安: 機器の寿命(約15〜20年)
での新品交換工事は数百万円の大規模修繕となるため、組合の積立金で計画的に予算化されます。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
FRPの標準耐用年数は約15年です。古くなると中の水圧に耐えられず、
パネルの合わせ目(シーリング)から水がポタポタと漏れ始めます。
また、日光による劣化でFRPのガラス繊維が白い粉を吹くようになったら
パネルの強度が限界に近づいており、タンク破裂の危険があるため交換です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
水道法により、有効容量が10立方メートル(10t)を超える受水槽は、
必ず「1年に1回以上、専門業者による内部の清掃と水質検査」を行わなければ
法律違反(罰金)になります。これをサボると、タンクの底に
数センチの真っ黒な泥(赤サビの沈殿物)が溜まり、その水を飲むことになります。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
さらに点検を怠ると、天井の「通気管」の防虫網が破れて、
そこからネズミやゴキブリ、ハトがタンク内に侵入して落下し、
中で死骸となってドロドロに溶け出したスープのような水を
マンションの全住人が知らずに毎朝飲んで下痢を起こすという大惨事に直結します。
8. 関連機器・材料の紹介
受水槽の周りで一緒に働く重要なシステム機器です。
-
加圧給水ポンプユニット:
受水槽に溜まった水を吸い込み、強烈な圧力で建物の
各階(蛇口)の果てまで送り続ける、受水槽とニコイチの相棒です。
▶ 詳細記事はこちら -
満減水警報盤(電極棒):
タンクの中に数本のステンレスの棒が吊るされており、
水が溢れそうになったり、空っぽになるとビル管理室へ「ピーッ」と警報を鳴らします。
9. 多角的なQ&A(20連発)
マンションの水道水がカルキ臭くなく、なんとなく変な味がします。
受水槽の中で長時間水が停滞し、消毒用の「塩素(カルキ)」が
完全に抜けてしまっている(残留塩素濃度不足)が原因の可能性が高いです。
すぐに大家や管理会社に連絡し、水質検査と清掃を要求してください。
屋上にあるタンクと、地面にあるタンクの違いは何ですか?
地面にあるのが今回解説している「受水槽」です。ここからポンプで
屋上まで水を押し上げ、屋上に置かれた「高架水槽(重力タンク)」にもう一度
水を溜めます。
そして屋上から『重力の落下』だけで静かに各階へ水を落とす昔ながらの方式です。
災害で断水しました。受水槽の水を飲み水としてもらっても良いですか?
地震直後であれば塩素が残っており飲用可能ですが、電気が止まって
水が循環していないと数日で水が腐敗します。「最初の数日は飲料水、
その後はトイレを流すための雑用水」として使うのが防災のセオリーです。
最近、受水槽を撤去して「直結増圧方式」に変えるマンションが増えたのはなぜ?
清掃費用と、死骸混入などの衛生リスクを完全にゼロにするためです。
水道局の水に強力なポンプをつけてそのまま各階の蛇口に送る「直結増圧」なら
タンクが不要になり、常に新鮮な水が飲め、
タンクの場所が駐輪場などに転用できるため大人気です。
受水槽の清掃中は、マンションの水道は止まってしまいますか?
はい、タンクの中を一回空っぽにして作業員が入って洗うため、
清掃作業中の数時間(半日程度)は「全館断水」となります。
事前に必ず掲示板に断水のお知らせが貼られるため、
お風呂に水を貯めておく等の備えが必要です。
新築でFRP受水槽を組み立てる時、一番気を使うプロのポイントは?
パネルとパネルの合わせ目に挟む「パッキンシール材」の扱いと、
何百本というボルトの「均等な締め付けトルク」の管理です。
一箇所でも締めすぎたり弱かったりすると、
満水にして水圧がかかった瞬間にピューッと水が吹き出します。
「FMバルブ(副弁・主弁)」の調整がうまくできず水が止まりません。
FMバルブの細いバイパス配管(副管)にゴミやサビが詰まっているか、
ダイヤフラムゴムが破れている証拠です。ストレーナー(網)を掃除してもダメなら、
水圧バランスが崩れているためバルブ本体のオーバーホールが必要です。
古いタンクの「オーバーフロー管(溢れ防止の管)」にトラップ(U字の曲がり)がない。
昔の違法施工(または法改正前)の典型例です。
管が下水管へそのまま直結されていると、下水の悪臭やゴキブリが
配管を逆流して受水槽の中に直接ダイブするため、
早急に管を切断して「ホッパー等での間接排水(空間を開ける)」に改修します。
受水槽の中の「電極保持器(レベルスイッチ)」がサビて折れました。
水面を常に検知しているステンレスの棒(電極棒)が波の揺れや塩素で
金属疲労を起こして根本で折れるのはあるあるです。
折れると「水が無い」と勘違いしてポンプが空回りするため、
防波管付きのものに新品交換します。
配管と受水槽を繋ぐ部分に、ゴムの「フレキシブルジョイント」を入れる理由は?
地震の揺れを逃がすための「免震(防振)継手」です。
ガチガチの鉄管で繋ぐと、地震でタンクが少し揺れただけで接続口が
ボキッとへし折れて数トンの水が流れ出る大事故になるため、
ゴムのクッションで揺れを吸収させます。
新築の保健所完了検査で、「受水槽のマンホール蓋」で落ちないための絶対条件は?
フタの端がタンクから盛り上がってカバーしているか(防水構造かどうか)と、
そして「フタに必ず南京錠(あるいは専用キー)が掛かっているか」です。
毒物混入テロ(犯罪)を防ぐため、施錠構造がないフタは保健所の検査を絶対に通せません。
受水槽の大きさを決める「有効容量」の設計基準をどう計算しますか?
一般的に、その建物の「1日の総使用水量(予測)の、4割〜6割」
の水を確保できるサイズで設計(容量算定)します。大きすぎると水が淀んで腐り、
小さすぎると朝のラッシュ時にタンクが空になるため絶妙なバランスが求められます。
地下ピットに受水槽を設ける際、「周囲の湧水(湧き水)」への法的指導は?
「飲料水用の地下室(ピット)の上側には、汚水や雑排水の配管を絶対に通してはならない」
という厳格な禁止ルールがあります。万が一上の汚水管から汚水が漏れ落ちて、
受水槽内に吸い込まれるリスクを根絶するためです。
パネル組み立て時、タンクの内側に足場や脚立を入れて作業しても良い?
作業自体は可能ですが、飲料水設備であるため靴底の泥や油の持ち込みは
厳禁です。必ず「新品の上履き」を着用させ、工具の落下による
FRPのひび割れを防ぐためベニヤ板と毛布で厳重に養生させてから中に入れさせます。
建物を「受水槽方式」から「直結増圧方式」に改修(リニューアル)する時の障害は?
道路に入っている水道本管の「太さ(口径)」が足りるか(取り出し管の増径が必要か)、
および水圧が建物の最上階まで到達するかという事前協議(水理計算)です。
水道局が「この地域はこれ以上水圧をかけられない」と判断すれば、
残念ながら受水槽を残すしかありません。
夜中に「ピーーーーッ!」と盤から『受水槽 満水警報』が鳴り止みません!
FMバルブ(給水弁)が故障して水が止まらなくなり、タンクから水が
ドバドバと溢れ出している(オーバーフロー)大ピンチの状態です。
直ちに受水槽の横にある「大きな止水バルブ(アングル弁等)」
を手動で全閉にして水道を止めてください。
テナントビルのオーナーですが、10t未満の小さな受水槽なら清掃義務はないですよね?
10立方メートル以下の「小規模貯水槽」であっても、法的な罰則は無いものの
「年1回の清掃に努めること」と各自治体の条例で強く定められています。
清掃をサボって入居者が体調不良を起こした場合、
管理責任を問われ莫大な賠償金が発生します。
清掃業者が終わった後、「水からプールの強烈な匂いがする」とクレームが来ました。
清掃の仕上げに、法律で決められた高濃度の「次亜塩素酸(消毒液)」で
タンク内を真っ白に消毒するため、しばらくはプールのような塩素臭がします。
しばらく水を放水していれば臭いは消えますので「安全に消毒された証拠です」
と説明してください。
FRP受水槽の外側のパネルが、緑色のコケ(藻)だらけで汚いです。タワシで洗っていい?
高圧洗浄機などでパネルを強く洗うと、FRPのガラス繊維層が削れて
パネルの強度が急激に落ちて寿命を縮めます。
表面の汚れを落とすなら柔らかいスポンジで撫でる程度にし、
劣化を防ぐために「遮光塗装(サンスクリーンコート)」
をプロに塗ってもらうのがベストです。
真冬に、受水槽の外側に巻いてあるスポンジがボロボロになって配管が凍結しました。
屋外に受水槽がある場合、保温材(ラッキング・キャンバス)の劣化は
冬場の管破裂(凍結漏水)に直結する命取りのアキレス腱です。
カラスがつついてボロボロにしていることもあるため、
金属カバー(ラッキング)で保護し直す工事を手配してください。