非常用照明器具とは?
停電時に内蔵バッテリー等で点灯し避難経路を照らす保安照明

【超解説】とても簡単に言うと何か?

停電時にバッテリーで自動点灯し、避難経路に最低限の明るさを30分以上確保する照明器具です。

1. 基本概要

そもそも何か

非常用照明器具とは、建築基準法によって設置が
義務付けられている、非常用電源機能を持った照明設備です。
誘導灯が「非常口の方向を緑色で示す標識」であるのに対し、
こちらは「空間自体や床面を白色の光で明るく照らす明かり」です。

なぜ必要なのか

火災による配線焼損や、大地震による広域停電が発生した際、
真っ暗闇になった建物内で人々がパニックになるのを防ぎ、
ガラスの破片などの障害物を視認させながら、スムーズで安全な
屋外への避難・脱出を支援するために不可欠だからです。

2. 構造や原理

内部構造

外観は通常の照明とほぼ同じですが、器具の内部または
別置の電源箱に、停電でも30分間(大規模建築物は60分間)
以上点灯を持続させるための「ニッケル水素蓄電池」などの
非常用バッテリーと自動切替装置が組み込まれています。

作動原理

通常時は一般の100V電源(商用電源)で点灯・消灯しますが、
停電を検知すると、瞬時に自動で内蔵バッテリーからの
電力供給へと切り替わり、LED等の光源を発光させて
床面で白熱灯・蛍光灯の場合は「1ルクス以上」、LED光源の場合は「2ルクス以上」という法定の明るさを維持し続けます。

3. 素材・形状・規格

外観形状と素材

一般照明と同じデザインのベースライト型やダウンライト型の
「常用・非常用兼用形」が最も多く出荷されています。
また、通常時は消灯しており停電時のみ光る、小さな目玉の
ような見た目をした「専用形」の非常用照明もあります。

種類や関連規格

バッテリーの搭載方式によって種類が分かれます。
器具ごとに電池を内蔵する「電池内蔵型」が主流ですが、
非常用発電機や大きな蓄電池盤から耐火ケーブルで
電力をまとめて送る「電源別置型」も大型施設で採用されます。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

床面積が一定規模以上の劇場、病院、ホテル、マンション、
学校、オフィスビルなど、いわゆる「特殊建築物」や
中高層建築物の、採光基準を満たさない居室を対象として法的に設置が義務付けられています。

具体的な設置位置

停電時に最も事故が起きやすい「階段」や「廊下」といった
避難経路のほか、人々が滞在する映画館の客席や
会議室などの居室の天井に、定められた十分な床面照度
確保できるよう配置計算(配置スパン)を行って取り付けます。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

非常灯の明かりがあるかないかで、災害発生時の
生存率やパニックによる二次被害(将棋倒しなど)の
リスクが劇的に変わります。万が一の極限状態下において、
人命を守るための最後の「命綱となる視界」を提供します。

デメリット(短所・弱点)

ランプが切れていなくても、停電時の性能を保証するために
定期的な内蔵バッテリーの交換費用が発生し続けます。
また、兼用型の場合はデザインの選択肢が限定されるため、
高級な意匠空間の設計においては制約要因となります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

建築基準法の認定を受けた「JILマーク」付きの製品のみが
使えるため、一般の照明器具よりも高価になります。
また、定期交換用の交換バッテリー(数千円〜)も必要です。

おおよ所の相場(機器本体の場合)

  • 専用形(小さなダウンライト等): 1万円〜2.5万円前後
  • 常用・非常用兼用形(ベースライト等): 2万円〜5万円前後

合計目安: 1台あたり 1万〜5万円程度+工事費

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

設置から約4〜6年で内蔵バッテリー(蓄電池)の交換時期が訪れ、
約8〜10年で充電回路を含む器具本体の寿命(更新目安)となります。
法令点検で「30分間の点灯維持不能」と判定された場合は
すぐにバッテリーや器具の交換手配を行わなければなりません。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】法定点検の無視によるバッテリー上りの放置

定期点検(特殊建築物等定期調査など)での指摘を無視し、
費用をケチってバッテリーが死んだ状態(点検の紐を引いても光らない)
の非常用照明を長期間そのまま放置し続けることです。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

夜間に巨大地震が発生して大停電が起きた瞬間、
すべての非常灯が作動せず、建物全体が完全な暗黒の世界になります。
逃げ惑う人々が散乱したガラス片や倒れた什器で怪我を負い、
最悪の場合は防火扉や階段に衝突して死亡する大参事を引き起こします。

8. 関連機器・材料の紹介

非常用照明と共に設置される防災・非常電源関連の設備です。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

普通の照明と非常用照明をパッと見て見分ける方法は?

緑色の小さな「充電モニターランプ(点検用ランプ)」と、試験用の「引き紐」
または「点検用スイッチ(黒いボタン)」が器具の端に付いているのが特徴です。

誘導灯と非常用照明は何が違うのですか?

誘導灯は「消防法」で決められた逃げ道の出口を示す緑色の「標識(サイン)」です。
非常用照明は「建築基準法」で決められた空間を照らす白色の「明かり」です。

一戸建てのマイホームにも設置義務がありますか?

一戸建て住宅の居室は建築基準法の設置免除対象となっているため、
義務はありません。代わりにコンセントに挿す市販の停電時自動点灯ライト等で自衛します。

停電時、何分くらい明かりが持つのですか?

標準的な仕様では「30分間」点灯し続けるようにバッテリーが設計されています。
大規模な駅や地下街など避難に時間がかかる施設では「60分間」が要求されます。

停電になると普通の時の明るさより暗く感じます。

停電時は限られたバッテリーを長持ちさせるため、
日常の業務を行うような全灯状態ではなく、
法で定められた最低限の明るさ(白熱灯・蛍光灯の場合は床面で1ルクス以上、LED光源の場合は2ルクス以上)へと切り替わります。

職人(施工者・電気工事士など)目線

非常用照明の結線で気を付けることは何ですか?

壁のスイッチを通さない「充電線(非接地側・黒線)」を必ず接続し、
ブレーカーが落ちない限り常に100Vが供給されてバッテリーを充電し続ける配線にする事です。

リニューアルで古い電球タイプの専用形からLEDへ変える場合の注意点は?

古い専用形から高輝度な最新LEDへ交換すると、
少ない台数で広範囲をカバーできるようになるため、
既存の穴をすべて使わず間引いて「穴埋めプレート」で処理する事があります。

電源別置型(自家発電など)の配線材料の指定は?

火災の炎にさらされても発電機からの電力が途絶えないように、通常のVVFではなく、
ピンク色などの耐熱・耐火性能を持った「耐火ケーブル(FP等)」で配線します。

出荷時のバッテリーのコネクタはどうなっていますか?

工場出荷状態や工事中は放電を防ぐためにバッテリーの「コネクタ」が外されています。
引き渡し前に必ず脚立に登ってすべての器具のコネクタを接続(結線)します。

設置してすぐは引き紐を引いても点灯しません。

バッテリーが空の状態で出荷・設置されるためです。100Vの電源(充電線)を生かしてから、
完全に充電されるまで24時間〜48時間待たなければ試験点灯はできません。

施工管理者目線

非常用照明の配置(何台必要か)の計算方法は?

各メーカーのカタログにある「配置表」を用います。天井高と器具のタイプから、
定められた最低照度(LEDは2ルクス以上など)を満たす設置間隔(スパン)を割り出します。

建物のどの部分が「設置免除」になりますか?

採光に有効な窓がある部屋、トイレ・洗面所等の一時的にしか人がいない小部屋や、
外気に直接開放されている屋外階段やバルコニーなどは設置が免除される事があります。

施主から「目立たないように黒塗りのダウンライトで」と言われたら?

非常用照明は国土交通大臣認定品またはJIL適合品しか使用できず、
カバーを塗装したり別手配のルーバーを取り付けるなどの「改造行為」
は厳格に禁止されている旨を伝えます。

引き渡し直前の完成検査(消防検査)でのチェック項目は?

監督自ら、棒などを使って1台ずつ点検スイッチを押し、
確実に内蔵バッテリーから非常点灯するかを全数チェックして、
バッテリーコネクタの入れ忘れを防止します。

階段通路に設置する場合、避難法規上で注意すべきは?

階段は建築基準法(非常用照明)だけでなく、消防法(通路誘導灯)の規制も受けるため、
両方の規格を兼ね備えた「階段通路誘導灯兼用非常用照明」を選定します。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

「12年経過したため器具ごと交換してください」と業者に言われました。

正しい提案です。電子回路(安定器など)が劣化すると、
バッテリーへ適切に充電ができなくなり、
万が一の時に点灯しなくなるためJIL等の基準で更新が推奨されています。

純正のバッテリーが高すぎます。互換品を使っても違法ではありませんか?

非純正の互換バッテリーを使用した場合、
非常用照明としての型式認定から外れる恐れがあり、
発火等の事故が起きた際の責任を負うため純正品の使用を強く推奨します。

点検スイッチの紐がちぎれてブラブラしています。

紐が劣化して切れただけなら動作に問題はありません。
細い棒の先端で直接点検ボタンを押下して点灯するか確認できれば、
定期点検としての性能確認は満たせます。

赤や緑のモニターランプが点滅し始めたらどうすれば良い?

ランプの色(緑の点灯や点滅など)で正常かバッテリー寿命かを示す「自己点検機能」です。
点滅パターンはメーカー指定の寿命警告である場合が多いため急ぎ修繕手配をします。

普段使っていない倉庫の非常灯のバッテリーも交換する必要がありますか?

法で設置が義務付けられた場所である限り、
万が一職員が整理に入った際に地震が来る可能性を想定し、
普段使わない場所であっても平等に交換する義務があります。