誘導灯(避難口標識)とは?
煙の中でも逃げ道を示す緑色の避難誘導灯

【超解説】とても簡単に言うと何か?

火災時に煙の中でも「非常口の方向」を緑色の光で示し、避難を誘導する照明標識です。

1. 基本概要

そもそも何か

誘導灯とは、消防法に基づいて建物の避難経路に
設置することが法的に義務付けられている防災用照明設備です。
空間を明るく照らすことが目的の他の照明とは異なり、
暗闇の中でも「ここから外へ逃げられる」という目印になります。

なぜ必要なのか

火災による猛烈な黒煙が充満したり、大規模停電で
真っ暗闇になったりした極限状態の中において、
視界の利かない建物内に滞在している不特定多数の命を、
迷わず確実かつ迅速に屋外の安全な場所へ避難させるためです。

2. 構造や原理

内部構造

緑色ベースの表示板(人が逃げているピクトグラム)、
内部から表示板を均等に照らすLEDモジュール、充電回路と
停電を検知する基板、そして外部電源が断たれた際にも
単独で20分間〜60分間光り続けるためのニッケル水素電池。

作動原理

通常時は建物側の100V電源によって常時点灯しながら、
内蔵バッテリーを常に満充電の状態に維持(トリクル充電)します。
火災などで配線が燃えて100Vの供給が絶たれた瞬間、
リレー回路が働いて瞬時にバッテリー点灯へと切り替わります。

3. 素材・形状・規格

外観形状と素材

薄型の白いプラスチック樹脂や鋼板のフレームの中に、
アクリルやポリカーボネート製の表示板がセットされています。
通路の途中に配置して両方向から見得る「両面型」と、
扉の直上に貼り付ける「片面型」のほか、天井直付、壁付等があります。

種類や関連規格

視認距離(大きさ)によって「A級・B級・C級」の3サイズが
消防法で厳密に定められています。最も安価・小型なのがC級で、
大規模空間に設置される巨大なものがA級です。さらに、扉の位置を示す
「避難口誘導灯」と、経路を示す「通路誘導灯」に区分されます。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

デパート等の商業施設、映画館、病院、ホテル、オフィスビル、
地下街、マンションの共用部など、不特定多数の人が出入りし、
構造を把握していない人が多く滞在するすべての建築物です。
(※個人の専用住宅の室内等は設置対象外となります)

具体的な設置位置

階段の出入り口、屋外へ出る最終非常扉のすぐ真上(避難口誘導灯)。
そして、曲がり角やまっすぐな長い廊下の途中で、避難口までの
方向を矢印で示す位置(通路誘導灯)に、見えなくなる死角が
生じないように法定の最大間隔を守って連続して配置されます。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

人間の目は赤色よりも緑色の方が「暗闇の中で最も明るく見える」
というプルキンエ現象の特性を持っており、さらに火災の赤い炎の
中でも補色(反対色)である緑色は識別しやすいため、
世界基準で極めて生存率を高めるデザインとして確立しています。

デメリット(短所・弱点)

法律で常時点灯(消してはいけない)が定められているため、
オシャレなレストランや高級ホテルのムードある雰囲気の中で、
緑色に自己主張する誘導灯の存在が、深刻なデザイン上の
「ノイズ(邪魔者)」として嫌がられる宿命にあります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

サイズ(クラス)によって本体価格が全く異なります。
また、「本体の価格」+「はめ込む表示パネルの価格」が
別売りになっているケースが多いため、部品選定に注意が必要です。

おおよ所の相場(機器本体パネル込+新規工事)

  • C級(小型枠): 約2万円〜3.5万円前後
  • B級(中型枠): 約3万円〜5万円前後
  • A級(大型枠): 約10万円〜15万円前後

合計目安: クラスによるが 1台数万円〜10数万円

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

内蔵されているバッテリー(蓄電池)の寿命は約4〜6年で、
器具本体の寿命は約8〜10年(電子部品の劣化)とされています。
バッテリーの寿命時には、器具の下部にある「モニターランプ」が
赤色点滅等で警報サインを出して寿命を知らせてくれます。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】赤ランプ点滅の無視とダンボールの山積み

モニターの赤ランプが点滅してバッテリー死亡を警告しているのに、
予算ケチりのため数年間修理せずに放置したり、誘導灯の下の
非常扉の前に邪魔な在庫のダンボール等を山積みにすることです。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

いざ本物の火災で停電した瞬間に予備電源が起動せず、
命綱のサインが真っ暗になります。パニックに陥った人々が
煙の中で逃げ道を完全に見失い、さらに扉を塞ぐダンボールの
せいで脱出できず、大量の死傷者を出す大惨事になります。

8. 関連機器・材料の紹介

法規上、合わせて設置が求められる防災設備などです。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

誘導灯に走っている人と矢印だけのものがあるのはなぜ?

緑色の背景に走る白抜きの人が書かれているのが「そこが非常口」であることを示し、
白背景に緑の矢印のものは「その方向に非常口がある」という途中経路を示します。

映画館の誘導灯が上映中に暗くなるのは違反ではないですか?

違反ではありません。「客席誘導灯」という特殊なタイプで、
自動火災報知器と連動して火災時には100%の明るさにパッと復帰する仕組みで消防署の許可を
得ています。

走っている人(ピクトグラム)のデザインは世界共通ですか?

はい、もともと日本で公募されてデザインされたものが優れていたため、
1987年にISO(国際標準化機構)
の国際統一規格として正式に採用され世界中に広まりました。

点滅したり音声で「避難口はこちら」と喋るものを見ました。

耳の聞こえない方や、煙で目が見えにくい状況でも逃げられるように、
LEDフラッシュ光と音声案内でさらに強く誘導する「点滅・音声機能付き」
の高機能な機種です。

誘導灯の紐がぶら下がっています。引っ張って良いですか?

絶対にいけません。それは点検用のスイッチ(引き紐)であり、
引っ張ると意図的に停電状態を作り出してバッテリーの試験を行うためのものです。

職人(施工者・電気工事士など)目線

誘導灯の配線で「3線式」と「2線式」の違いは何ですか?

「2線式」は常時点灯させ続ける単純な結線です。「3線式」は、日常はスイッチ等で消灯し、
自火報等と連動して停電・火災時のみ強制点灯させる特殊な信号線入りの結線です。

リニューアルで今のものを取り外した跡がクロスの色と違います。

昔の蛍光灯タイプの誘導灯は大きく、最新のLEDタイプは小さいため、
外した跡(カベ焼け)が必ず露出します。
専用の「リニューアルプレート」を背面に噛ませて隠します。

設置間隔(何メートルおきに付けるか)の基準はどう決まる?

A級は60m、B級は30m、
C級は15mの歩行距離ごとに視認できるように配置しなければなりません。
これは消防法の告示で厳密に歩行距離規定として定められています。

天井から吊り下げるパイプの長さは現場でカットできますか?

専用の吊り具パイプの途中で切断・ねじ切り加工をして長さを現場調整することは可能です。
ただし、ドアを開けた時の軌道にぶつからない寸法計算が命綱となります。

配線を間違えて基板をショートさせてしまいました。

誘導灯は100Vの活線に近い状態で触る事が多く、
送り配線などをショートさせると内蔵基板のヒューズが飛びます。
ヒューズ交換で復旧しなければ基板交換の弁償です。

施工管理者目線

消防検査で誘導灯が指摘されやすいポイントはどこですか?

扉の真ん中に設置されていない(ズレている)こと、
表示パネルの矢印の向きが実際の避難ルートと逆に刺さっている施工ミスの2点が、
最も一発不合格になりやすいです。

施主からの「ダサいから付けたくない」への論理的な説得方法は?

「付けないと消防法違反で建物の使用許可(消防済証)が下りず、
店舗がオープン不可能です」とはっきりと断言し、
デザインに融通の効く高価な小型C級への変更を提案します。

消防署への着工届は必要ですか?

誘導灯の場合、
多くの市町村では甲種消防設備士による消防署への事前の着工届および設置届の提出が義務付け
られており、無届のまま勝手な増設を行うと違反指導対象です。

パネル種類(片面・両面)の発注を間違えた場合のリカバリーは?

片面用本体に両面パネルは物理的にハマりませんが、
両面用本体に片面パネル+目隠しパネルをはめて「臨時で片面運用」することは可能です。

どうしても壁や天井に配線(電線管)を出したくありません。

蓄光剤が塗られた「高輝度蓄光式誘導標識(電気を使わない緑のステッカー)」
で代用する緩和規定がありますが、
直近への照明配置など極めて厳しい照度条件のクリアが必要です。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

消防点検のたびにバッテリー交換を指摘されて予算がありません。

放置すると消防署から立入検査時に警告を受け、
無視すれば防火対象物適合マークが剥奪されてネットにも違反建物として公表されるため、
計画的な予算取りが必要です。

バッテリー(蓄電池)部分だけを自分で買って交換しても良い?

交換作業自体はコネクタの抜き差しですが、
確実な作動保証と消防署への「点検結果報告書」の提出が必要なため、
必ず点検業者(消防設備士)に委託してください。

誘導灯の器具代があまりにも高いです。もっと安いものはないですか?

一般照明と異なり「日本消防設備安全センター(JESC)」
の厳しい型式化試験に合格した認定品しか販売できない国策の構造上、
ある程度価格が高止まりするのは避けられません。

内装用で塗装した際、誘導灯にも緑色などのペンキを塗って良いですか?

絶対に法規違反です。
認定品の筐体カバーを変色させたり改造したりすることは禁止されており、
消防検査で復旧指導を受けます。目隠しシール等も一切貼れません。

20年前に付けた古い大きな誘導灯の表示板が割れました。

既に当時の大きな蛍光灯用パネルパーツは生産終了・廃盤となっています。
最新の小型高輝度LEDタイプへ、器具本体ごとの更新リニューアルしか選択肢がありません。