防火戸・防火シャッターとは?
火炎を遮り、一定時間延焼を防ぐ目的で設置される防火用の扉
【超解説】とても簡単に言うと何か?
建物の中で火事が起きたとき、炎や煙が隣の部屋や上の階へ広がらないように
自動的に「蓋」をする頑丈なドアやシャッターです。普段は開いたまま隠れていますが、
煙や熱を感知すると自動で閉まり、建物を複数のブロックに切り分けて被害を最小限にします。
1. 基本概要
そもそも何か
建築基準法では、一定規模以上の建築物は火災の拡大を防ぐために
「防火区画」で区切る必要があります。しかし人が通る通路や階段まで壁で塞ぐことは
できないため、そこに設置されるのが「防火戸」や「防火シャッター」です。
なぜ必要なのか
防火区画の開口部(廊下、エレベーターホール等)に防火設備がなければ、火災時に炎と煙が
建物全体に一気に広がります。防火戸・防火シャッターが閉鎖することで
延焼を遅らせ、避難時間を確保し、消防隊の消火活動を支援します。
2. 構造や原理
動作方式の種類
-
常時閉鎖式防火戸:
常に閉まっているドア。ドアクローザーが付いており
人が開けて通った後に自動で再び閉まります。
非常階段への出入り口など人の往来が
少ない場所に設置されます。 -
随時閉鎖式(自動閉鎖式):
普段は開いた状態で壁や天井に収納されており、
火災時に煙感知器からの信号を受けて
ロックが外れ自重で閉鎖する方式。
ショッピングモールの通路や
エレベーターホールなどに設置されます。
作動原理(煙感知連動の仕組み)
随時閉鎖式の場合、天井に設置された煙感知器が煙を検知すると、連動制御盤が信号を発し、
防火戸のラッチ(保持装置)が解放されます。防火戸は自重またはドアクローザーの力で閉鎖。
防火シャッターも同様に自重で降下します。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
防火戸はスチール製(鋼板)が主流で、片開き・両開き・引き戸タイプがあります。
防火シャッターは亜鉛メッキ鋼板のスラットを巻き取る構造で、幅は2m〜10m超まで対応。
防火ガラスを組み込んだドアもあり視認性と防火性を両立させます。
種類や関連規格
-
特定防火設備(旧:甲種防火戸):
火炎を遮る時間が1時間以上。
階段室や重要な防火区画に設置される
最も高い遮炎性能を持つ防火設備です。 -
防火設備(旧:乙種防火戸):
火炎を遮る時間が20分以上。
外壁の開口部(窓)の延焼のおそれの
ある部分などに設置されます。
関連規格として建築基準法施行令第112条、消防法施行規則第4条の2の2に
設置基準が定められています。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
- オフィスビル・商業施設・ホテル
- 病院・介護施設
- マンション(各住戸の玄関ドア)
- 駅・地下街・空港ターミナル
- 工場・倉庫
具体的な設置位置
面積区画(1,500m²ごと等)の境界となる開口部、
竪穴区画(階段室・エレベーターシャフト)の出入口、異種用途区画(店舗と事務所の境界等)に
設置されます。防火シャッターは幅の広い通路やアトリウムの開口部に多く使われます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
-
延焼防止効果が絶大:
防火区画を確実に形成し、
火災の拡大を物理的に食い止めます。 -
避難時間の確保:
煙と炎の進入を1時間以上遅延させ、
避難者の時間的余裕を大幅に増やします。 -
自動で閉鎖:
煙感知連動で人手を必要としないため
夜間や無人時でも確実に作動します。
デメリット(短所・弱点)
-
挟まれ事故のリスク:
防火シャッターは閉鎖時に人が挟まれる
危険があり、危害防止装置が必須です。 -
通行の妨げ:
閉鎖後は通路が塞がれるため
くぐり戸(非常口)の設置が必要です。 -
維持管理コスト:
年1回の防火設備定期検査報告が義務で
台数が多いと点検費用がかさみます。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
防火戸は開口部のサイズや仕様により価格が大きく変動します。
シャッターは幅が広いほど高額になります。
おおよその相場
- 防火戸(スチールドア・くぐり戸付): 約20〜40万円
- 防火シャッター(幅3m×高さ3m程度): 約50〜100万円
- 危害防止装置セット(後付け): 約30〜50万円
- 防火設備定期検査報告: 1台あたり約5,000〜15,000円/年
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
防火戸本体の耐用年数は20〜30年が目安です。ドアクローザーは10〜15年で油漏れが生じやすく
早めの交換を推奨します。防火シャッターはスラットの腐食状況により
20〜25年での更新が一般的です。危害防止装置のバッテリーは5年ごとの交換が必要です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
常時閉鎖式の防火戸の前に物を置いて
開けっ放しにしたり、自動閉鎖の
防火シャッターの真下に商品ワゴンを
置いたりする行為は法令違反です。
「扉が重くて不便だから」と
防火ドアのドアクローザーを外したり
木片を挟んで常に開いた状態にする行為。
防火区画が破壊され延焼を招きます。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
防火戸が閉まらない状態で火災が発生すると防火区画が機能せず、炎と煙が建物全体に
一気に広がります。過去には防火シャッターの
降下を障害物が妨げたことで
被害が拡大した火災事例も報告されています。
建築基準法違反としてビルオーナーが
法的責任を問われることもあります。
8. 関連機器・材料の紹介
-
自動火災報知設備:
火災を検知して警報を発する設備。
煙感知器の信号が連動制御盤を経由して
防火戸・シャッターの閉鎖を起動させます。
▶ 詳細記事はこちら -
排煙設備:
火災時の煙を建物外に排出する設備。
防火区画と連携して煙の拡散を防ぎ
避難経路の安全を確保します。
▶ 詳細記事はこちら -
耐火区画貫通処理:
防火区画を配管やケーブルが貫通する部分に
施す耐火処理。防火戸と合わせて
防火区画の完全性を維持します。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
デパートの床にある黄色い四角い枠は何のマークですか?
上部から防火シャッターが降りてくる位置を示しています。その枠内や近くには
絶対に立ち止まったり荷物を置いたりしてはいけません。
目の前で防火シャッターが閉まったらどう避難しますか?
シャッターのすぐ横に緑色の非常口マーク付きの小さなドア(くぐり戸)があります。
ノブを回すか押せば開くのでそこを通って避難してください。
マンションの重い鉄のドアも防火戸ですか?
はい。分譲マンションの各住戸の玄関ドアは「特定防火設備」の基準を満たす防火戸です。
火災が共用廊下に広がるのを防ぐ重要な役割を持っています。
防火シャッターに挟まれたらどうなりますか?
現在は危害防止装置が義務化されており座板が人に触れると即座に停止します。
ただし古い建物では装置がない場合もあるため安全区域から離れないでください。
非常階段の重いドアが自動で閉まるのはなぜですか?
常時閉鎖式の防火戸だからです。ドアクローザーで常に閉じた状態を保ち
火災時に炎や煙が階段室に入るのを防いで避難経路を守っています。
防火設備点検員とは何ですか?
防火戸や防火シャッターが正常に作動するか閉鎖を妨げる物がないかを年1回点検し、
特定行政庁へ報告する国家資格者です。平成28年の法改正で新設されました。
シャッターの作動テストはどうやりますか?
連動制御盤や火災報知器から煙感知の擬似信号を送り、
シャッターが自重降下するか確認します。危害防止装置の急停止・再降下もチェックします。
防火扉のラッチがはまりません。原因は何ですか?
建物の歪みや蝶番の摩耗でドアが下がり枠と干渉している可能性があります。
丁番の調整や交換が必要です。閉まらなければ防火戸の意味を成しません。
ドアクローザーの調整ポイントは?
閉鎖速度(全閉まで5〜8秒が目安)とラッチングアクション(最後の数度で
確実にロックさせる力)の2点です。油漏れが見られたら即交換してください。
防火シャッターの座板スイッチが反応しない場合の対処は?
バッテリーの消耗、配線の断線、座板センサーの汚れを点検します。
危害防止装置の不良は人命に直結するため即座に修理・交換してください。
防火区画を貫通する配管はどう処理しますか?
耐火区画貫通処理を施し配管が溶けても国土交通省認定の耐火パテ等で隙間が埋まるように
施工します。認定工法の厳守が必須です。
防火窓に網入りガラスを使うのはなぜですか?
火災の熱でガラスが割れても内蔵金属網がガラスの脱落を防ぎ炎の噴出を20分間防きます。
最近は網なしの耐熱強化ガラスも使われます。
煙感知器の設置位置とシャッターの関係は?
連動用煙感知器はシャッターの両側(区画の内外)に各1個ずつ設置します。
どちら側で火災が発生しても確実に閉鎖信号を発する配置です。
くぐり戸の設計上の注意点は?
有効開口幅75cm以上、高さ1.8m以上が基準です。パニックオープン金物を使い
押すだけで開く構造とし、避難方向に開く外開きにします。
完了検査で防火設備の確認事項は何ですか?
全数の閉鎖作動確認、煙感知連動試験、危害防止装置の停止・再降下試験、
くぐり戸の開閉確認、遮煙性能の確認が主な検査項目です。
テナントがシャッターの下に勝手に棚を置いています。
消防査察で厳しく指導される違反です。管理会社として直ちに撤去を命じてください。
シャッターが閉まり切らず煙が拡散し被害が拡大します。
古いシャッターに危害防止装置がありません。どうすべきですか?
既存不適格でも改修工事時には設置義務が生じる場合があります。
人命に関わるため安全装置のみの後付け工事を早めに検討してください。
防火設備定期検査報告の頻度はどのくらいですか?
年1回の報告が義務です。連動機構の作動確認、閉鎖障害の有無、
危害防止装置の機能確認などを有資格者が点検し行政庁へ報告します。
防火戸のドアクローザーから油が漏れています。
ドアクローザーの寿命(10〜15年)が来ているサインです。油漏れ状態では
閉鎖速度が制御できず確実に閉まりません。速やかに交換してください。
マンションの玄関ドアがきちんと閉まらない住戸があります。
防火戸として機能しない状態のため管理組合として修繕を手配してください。
ドアクローザーの交換、丁番の調整、ドア枠のたわみ修正が主な対策です。