軽量鉄骨下地(LGS / 軽天)とは?
軽量鉄骨を用いて内装の壁や天井の骨組みを作る下地材
【超解説】とても簡単に言うと何か?
マンションやオフィスビルの壁紙の裏には「石膏ボード」がありますが、そのボードを
ビスで留めるための「壁の中の柱」がLGSです。昔は木材で作っていましたが、現代のビルでは
火事に強く施工が早い薄い鉄板を組み立てて
壁や天井の骨組みを作ります。「軽天」とも呼ばれます。
1. 基本概要
そもそも何か
LGSとは「Light Gauge Steel」の略で、軽量形鋼を用いた内装下地のことです。
厚さ0.5mm〜0.8mmの薄い亜鉛メッキ鋼板を曲げ加工して作られており、金切鋏や
専用カッターで簡単に切断できるほど軽量ですが
立体的に組むことで壁として十分な強度を発揮します。
なぜ必要なのか
建物の内装において壁や天井を仕上げるには石膏ボード等の面材を固定する
骨組み(下地)が不可欠です。LGSは不燃材料のため建築基準法の内装制限にも適合しやすく、
現代のビル建築では標準的な下地材料です。
2. 構造や原理
壁下地(間仕切り)の構成部材
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ランナー(コの字型):
床と天井にレールのように固定する横枠。
スタッドの受け溝の役割を果たします。 -
スタッド(Cチャン):
ランナーの間に303mmまたは455mmピッチで
立てる縦の柱。石膏ボードをビス留めする
直接の受け材です。 -
振れ止め:
スタッドの横揺れを防ぐため
スタッドのパンチ穴に通す水平の補強材。
天井下地の構成部材
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吊りボルト:
上階のコンクリートスラブから
インサートを使ってぶら下げる全ネジボルト。 -
ハンガー・野縁受け(チャンネル):
吊りボルトに取り付ける金具と
それに掴まれる大枠の太い鉄骨。 -
野縁(シングル・ダブルバー):
石膏ボードを直接張り付ける細い鉄骨。
野縁受けと直角にクリップで固定します。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
亜鉛メッキ鋼板(SGCC等)を冷間ロール成形したC型・コの字型の断面をしています。
銀色の光沢があり、表面のメッキが錆から鋼板を保護しています。
種類や関連規格
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スタッド幅50mm / 65mm:
一般的な部屋の間仕切り壁に使用。
高さ4m程度までの壁に対応します。 -
スタッド幅75mm:
配管(給水管など)を通すために
壁の厚みが必要な場合に選定します。 -
スタッド幅90mm / 100mm:
天井高の高い壁、PS(パイプスペース)、
高い防音性が求められる界壁に使用します。
JIS A 6517(建築用鋼製下地材)に製品規格が定められています。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
- オフィスビル・商業施設
- マンション・集合住宅
- 病院・学校・公共施設
- ホテル・店舗の内装
- 工場・倉庫の事務所部分
具体的な設置位置
間仕切り壁(部屋と部屋を仕切る壁)の内部骨組み、天井仕上げ材の下地、
PS(パイプスペース)の囲い壁、柱や梁の化粧巻き(カバー)など
内装のほぼすべての下地に使用されます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
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耐火性(不燃材料):
鉄製のため燃えません。石膏ボードと
組み合わせて高い防火性能を発揮します。 -
寸法の安定性:
木材のような反り・曲がり・乾燥収縮、
シロアリ被害がなく壁が真っ直ぐ仕上がります。 -
施工性の高さ:
規格品で現場加工が早く、差し込みやビスで
素早く組み立てられます。 -
環境配慮:
亜鉛メッキ鋼板はほぼ全量リサイクル可能です。
デメリット(短所・弱点)
-
重量物の固定が苦手:
薄い鋼板のためエアコンや手すりなどの
重量物を直接固定できません。
補強下地(合板貼り等)が必要です。 -
遮音性に限界:
中空構造のため単体では遮音性が低く、
グラスウール充填等の対策が必要です。 -
結露リスク:
鋼板は熱を伝えやすいため
外壁側に使う場合は断熱材が不可欠です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
LGS下地は材料費よりも施工手間(人件費)が大きな割合を占めます。
以下は材料+施工費の概算です。
おおよその相場(材料+施工費)
- 壁LGS下地組み: 約2,000〜3,500円/m²
- 天井LGS下地組み: 約2,500〜4,500円/m²
- 石膏ボード張り(別途): 約1,500〜2,500円/m²
- 耐震ブレース追加: 約500〜1,000円/m²
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
LGS自体は亜鉛メッキで保護されているため室内環境では30〜40年以上の耐用年数があります。
ただし漏水や結露で常時湿気にさらされるとメッキが劣化し錆が発生します。
天井の吊りボルトや金具類は耐震点検時に状態を確認してください。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
太い配管を通すためにスタッドを
サンダーで大きく切り欠くこと。
スタッドの強度が著しく低下し
壁が変形・倒壊する危険があります。
LGSスタッドに直接エアコン室内機や
テレビ金具をビス留めすること。
薄い鋼板ではビスが効かず落下して
下にいる人に当たる危険があります。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
スタッドを切り欠きすぎると壁全体がたわみ、石膏ボードにひび割れが入ります。
補強なしの重量物はある日突然落下し、什器の破損や人身事故につながります。
テナント退去時の原状回復費用も大幅に膨らむ結果となります。
8. 関連機器・材料の紹介
-
石膏ボード(PB):
LGSの上にビスで張り付ける面材。
火と音を遮る「壁の肉」の部分で
LGSと石膏ボードは常にセットで使用されます。
▶ 詳細記事はこちら -
断熱材(グラスウール等):
LGS壁の中空部に充填して
断熱性能や遮音性能を高める材料。
界壁や外壁側の壁に必須です。
▶ 詳細記事はこちら -
PF管(合成樹脂可とう管):
スタッドのパンチ穴を通して
電気配線を壁内に這わせるための管。
LGSの組立後に設備配線を行います。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
壁にカレンダーをネジで止めたいのですがLGS壁でも効きますか?
石膏ボードだけではネジが抜けます。「下地探しセンサー」でスタッドを見つけ
そこに軽天ビスを打てば固定できます。石膏ボード用アンカーも有効です。
壁を叩くとコンコンと軽い音がします。薄い壁ということですか?
LGSと石膏ボードで作られた中空の間仕切り壁だからです。防音性を高めるため壁の中に
グラスウールを詰めることもあります。
「軽天屋さん」とは何をする職人ですか?
LGSで壁や天井の骨組みを組みその上に石膏ボードを張るまでを
専門に行う内装工事業者のことです。ビル建築では欠かせない職種です。
マンションの壁に棚を付けたいのですがどこにビスを打てばいいですか?
磁石やセンサーでLGSスタッドの位置を探してください。スタッドは303mm間隔で
入っています。ただし重量のある棚はスタッドだけでは不十分な場合があります。
LGS壁とコンクリート壁はどう見分けますか?
壁を叩いてコンコンと軽い音がすればLGS壁(中空)、ゴツゴツと重い音なら
コンクリート壁(RC壁)です。マンションの戸境壁はRC壁が一般的です。
LGS壁にエアコンを付けるには何が必要ですか?
スタッドだけでは重量物を支えられません。軽天屋さんが壁を塞ぐ前に裏側に
コンパネ(合板)の補強下地を入れてもらう事前依頼が必須です。
スタッドの穴に配管を通したらグラグラになりました。
パンチ穴以外を大きく切り欠くとスタッドの強度が著しく低下します。
太い配管は門型補強を入れるかスタッド幅の広い壁に設計変更します。
埋込型の分電盤をLGS壁に設置するには?
分電盤の開口寸法に合わせて軽天屋さんにスタッドで四角く開口補強を組んでもらいます。
スタッドピッチをまたぐ場合は事前打合せ必須です。
天井点検口の開口補強はどう依頼しますか?
点検口のサイズ(450角や600角等)を軽天屋さんに伝え、野縁を切断した部分に
補強用の野縁受けを追加してもらいます。点検口の位置は設備図面と照合します。
設備配管の支持をLGSに取っていいですか?
LGSは仕上げ材の下地であり重量のある配管の支持材ではありません。
配管の支持はコンクリート躯体から直接インサートやアンカーで取ってください。
界壁(戸境壁)のLGS施工の注意点は?
界壁はスラブ対スラブでコンクリートに完全に達する必要があります。
グラスウールを隙間なく充填しコンセントは背中合わせを避けます。
スタッドのピッチはどう決めますか?
石膏ボード幅(910mm)に合わせて303mm(3等分)か455mm(2等分)です。
耐火性能や壁高さの要求に応じてピッチを狭くします。
天井LGSの耐震補強とは何ですか?
東日本大震災以降、吊り天井の落下防止が強化されました。
V字ブレースの追加と壁とのクリアランス確保が特定天井の基準で求められます。
設備との取り合い調整で重要なポイントは?
LGS組立前に設備(電気・空調・衛生)の壁内配管ルートと開口位置を確定させます。
後から壁を開けると補強が必要になりコストと工期に大きく影響します。
天井インサートの打ち忘れへの対処法は?
あと施工アンカー(メスアンカー)をコンクリートスラブに打って対応します。
ただし鉄筋を傷つけないよう探査機での鉄筋位置確認が必須です。
天井裏で水漏れがありLGSが錆びています。大丈夫ですか?
長期間の浸水でメッキが劣化すると鋼板が腐食し強度が低下します。
まず漏水の原因を止め、腐食が進んだ部材は交換を検討してください。
テナント退去時に原状回復でLGS壁を撤去するのは大変ですか?
LGS壁の解体は比較的容易です。石膏ボードを剥がした後、スタッドと
ランナーをビスを外して解体します。1日で数十m²の壁を撤去可能です。
オフィスのレイアウト変更で壁を増やしたり減らしたりできますか?
LGS壁の最大の利点は間仕切り位置の変更が容易なことです。ただし防火区画に関わる壁は
消防との協議が必要なため注意してください。
天井が地震後に少したわんでいます。点検すべきですか?
はい。吊りボルトの外れやクリップの脱落がないか早急に天井裏を点検してください。
放置すると天井板の落下事故につながる可能性があります。
LGS壁の防音性能を後から向上させられますか?
片側の石膏ボードを剥がしてグラスウールを充填し石膏ボードを二重張りにすることで
遮音等級を1〜2ランク向上させられます。