騒音規制法・振動規制法とは?
工事現場の音と振動を守る、近隣トラブル防止の基本法

1. 超解説

【超解説】とても簡単に言うと何か?
「工事現場や工場から出る騒音と振動を規制する法律」です。建設現場では杭打ち、はつり、重機作業など大きな音や振動が発生しますが、近隣住民の生活環境を守るため、作業時間・区域・届出のルールが定められています。

騒音規制法は1968年、振動規制法は1976年に制定されました。いずれも環境省が所管し、実際の規制事務は都道府県知事(多くは市区町村長に委任)が行います。建設工事に関しては「特定建設作業」に該当する作業を行う場合に届出義務と基準値の遵守が求められます。

2. 法律の目的と適用範囲

騒音規制法の目的

「工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行うとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資すること」

振動規制法の目的

「工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資すること」

規制対象地域:都道府県知事(市区町村長)が指定する「指定地域」内で規制が適用されます。商業地域や工業地域では基準が緩やかで、住居専用地域では厳しく設定されています。

参考:e-Gov法令検索 - 騒音規制法振動規制法

3. 特定建設作業の規制内容

騒音規制法の特定建設作業

作業の種類具体例
くい打機・くい抜機を使用する作業杭打ち(ただし、アースオーガーと併用する圧入式等は除外)
びょう打機を使用する作業鉄骨のリベット打ち
さく岩機を使用する作業岩盤の掘削(1日50m以上の移動は除外)
空気圧縮機を使用する作業電動機15kW以上のコンプレッサー(さく岩機の動力として使用するもの)
コンクリートプラント・アスファルトプラントを設けて行う作業混練容量0.45㎥以上
バックホウを使用する作業原動機80kW以上(低騒音型は除外)
トラクターショベルを使用する作業原動機70kW以上(低騒音型は除外)
ブルドーザーを使用する作業原動機40kW以上(低騒音型は除外)

振動規制法の特定建設作業

作業の種類具体例
くい打機・くい抜機・くい打くい抜機を使用する作業圧入式くい打くい抜機は除外
鋼球を使用して建築物等を破壊する作業解体工事でのウレッキングボール
舗装版破砕機を使用する作業道路舗装の撤去
ブレーカー(手持ち式を除く)を使用する作業油圧ブレーカーによる解体

基準値と作業制限

項目騒音規制法振動規制法
基準値敷地境界線で85dB以下敷地境界線で75dB以下
作業時間(第1号区域)午前7時~午後7時午前7時~午後7時
作業時間(第2号区域)午前6時~午後10時午前6時~午後10時
1日の作業時間(第1号区域)10時間以内10時間以内
連続作業日数6日以内6日以内
日曜・祝日の作業禁止禁止

※第1号区域は住居系地域、第2号区域は商工業系地域が一般的ですが、自治体により異なります。

4. 届出の手続き

特定建設作業を行う場合、作業開始日の7日前までに市区町村長に届出が必要です。

届出に必要な事項:

届出先:工事を行う場所の市区町村(特別区を含む)

5. 実務上の騒音・振動対策

6. 違反時のリスク・罰則

違反内容罰則
届出をしないで特定建設作業を行った場合10万円以下の罰金
虚偽の届出10万円以下の罰金
改善勧告・改善命令に従わない場合騒音:10万円以下の罰金 / 振動:10万円以下の罰金
報告徴収・立入検査の拒否10万円以下の罰金

罰金額は比較的低額ですが、改善命令を受けると工事の中断を余儀なくされるため、工期遅延による損害は罰金を大幅に上回ります。また、近隣住民からの民事訴訟(騒音被害の損害賠償、工事差止め)のリスクもあります。

7. 自治体独自の規制

多くの自治体が騒音規制法・振動規制法よりも厳しい独自の条例を制定しています。

※工事着手前に、必ず工事場所の自治体の条例・要綱を確認してください。

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9. 多角的なQ&A

一般の方向け

近所の工事がうるさすぎます。どこに相談すればいいですか?

まず工事現場の掲示板に記載されている施工者の連絡先に直接相談してください。改善されない場合は、市区町村の環境担当課に苦情を申し立てることができます。市区町村は騒音測定を行い、基準超過があれば施工者に改善勧告を出します。

工事の騒音で85dBとはどの程度の音ですか?

85dBはパチンコ店内や地下鉄の車内と同程度の音量です。普通の会話が困難なレベルです。ただし、この基準値は「敷地境界線上」での値であり、距離が離れるほど音は減衰します。一般的に距離が2倍になると約6dB下がります。

夜間工事は法律で禁止されていますか?

特定建設作業については、第1号区域で午後7時~翌午前7時、第2号区域で午後10時~翌午前6時の作業が禁止されています。ただし、災害復旧工事や鉄道・道路工事など、やむを得ない事情がある場合は例外が認められることがあります。その場合も近隣への事前通知が求められます。

日曜日に工事をしている現場があります。違法ですか?

特定建設作業に該当する作業(杭打ち、大型重機の使用等)を日曜・祝日に行うことは禁止されています。ただし、特定建設作業に該当しない軽作業(内装仕上げ、手作業の塗装等)は法律上の制限はありません。とはいえ、多くの自治体の条例や近隣協定で日曜の作業自体を制限している場合もあります。

工事の振動で家にひびが入りました。補償してもらえますか?

工事による振動と建物の損傷に因果関係が認められれば、施工者に対して民法上の損害賠償を請求できます。証拠として、①工事前の建物の状態(写真等)、②ひび割れの発生時期と工事の時期の一致、③振動の測定記録などが重要です。施工者が事前に家屋調査を行っている場合は、比較が容易になります。

業界関係者向け

低騒音型建設機械とは何ですか?指定のメリットは?

国土交通省が指定する基準値以下の騒音レベルの建設機械です。低騒音型と超低騒音型の2段階があります。指定機械を使用することで、①特定建設作業の届出が不要になる場合がある(バックホウ80kW以上等)、②NETIS登録加点、③自治体の入札時の加点評価、④近隣対策としてアピールできるなどのメリットがあります。

騒音測定の方法と頻度はどう決めればいいですか?

JIS Z 8731に準拠した騒音計(普通騒音計または精密騒音計)を使用し、敷地境界線上の地上1.2~1.5mの位置で測定します。測定頻度は特定建設作業の実施期間中は毎日が望ましいですが、実務上は①作業開始日、②苦情発生時、③定期的(週1回程度)に実施するのが一般的です。

届出を忘れて特定建設作業を始めてしまった場合はどうなりますか?

速やかに届出を行ってください。届出義務違反は10万円以下の罰金ですが、通常は行政指導(口頭注意や指導書の交付)で対応されます。ただし、基準値を超過する騒音・振動が発生していた場合は改善勧告の対象となり、最悪の場合は工事の一時中断を求められます。

家屋事前調査はどのように行うべきですか?

杭打ちや大規模掘削を行う場合、工事着手前に周辺の建物(通常は敷地境界から30~50m程度)の家屋調査を実施します。調査内容は、外壁・基礎のひび割れ、建物の傾斜、窓ガラスの状態等を写真と図面で記録します。第三者機関に委託することが望ましく、費用は1件あたり5~15万円程度です。

近隣説明会の実施は法律上の義務ですか?

騒音規制法・振動規制法には近隣説明会の義務規定はありません。ただし、多くの自治体の条例や要綱で一定規模以上の工事には説明会の実施が求められています。また、法的義務がなくても、近隣トラブルの予防として実施することが業界の常識であり、工事後のクレーム対応コストと比較すれば、事前の説明会は費用対効果が高い投資です。

解体工事での騒音・振動対策のポイントは?

①圧砕機(ニブラ)による低騒音解体の採用、②防音シートと防音パネルの併用、③散水による粉じん・騒音の低減、④ブレーカーの使用時間の制限(1日の中で集中させる)、⑤搬出車両の走行ルートの配慮(住宅地を避ける)が重要です。特にRC造の解体ではブレーカーの振動が大きいため、近隣家屋の事前調査は必須です。