ケーブルラックとは?
多数の配線を支える強固なハイウェイ
【超解説】とても簡単に言うと何か?
天井裏で大量の電線ケーブルをまとめて載せる、金属製のハシゴ状の棚です。
1. 基本概要
そもそも何か
ケーブルラックは、キュービクルから各階へ延びる太い電力幹線や大量の通信線などを、
空間内でまとめて長距離にわたり支持・配線するための構造物です。
なぜ必要なのか
大規模な建物では何十本もの太いケーブルが行き交うため、配管に1本ずつ通すのは
現実的ではありません。ラックを使えば一括で敷設でき保守点検も容易になるためです。
2. 構造や原理
基本的な構造
2本の頑丈な「親桁(サイドレール)」の間に、ケーブルを載せて縛り付けるための
「子桁(ラング)」が等間隔で渡されている「梯子(ハシゴ)状」の構造体です。
設置と配線の仕組み
これを天井から吊り降ろした全ねじボルトに合わせてブラケットで固定しつつ、
直線、コーナー、分岐などの専用パーツをボルトで繋ぎ合わせて長大な道を形成します。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
最も広く普及しているのは軽量で取り回しが良いアルミニウム製のラックです。
高い強度や耐食性が求められる現場では、溶融亜鉛めっき等のスチール製が選ばれます。
種類や関連規格
梯子状のハシゴ型だけでなく、ホコリやネズミを防ぐためのカバー付きや、
細かい線が落ちないように底に穴のないソリッドトレイ型など多数の種類があります。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
工場や病院、データセンター、大型商業施設など、数百本単位のケーブルが
集中する建物で、配管の束では処理しきれない部分に必ず採用されます。
具体的な設置位置
主に廊下の天井裏や、サーバールームの床下(アクセスフロア内)、または建物を
縦に貫く電気用パイプシャフト(EPS)内にて、垂直および水平に設置されます。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
ラックの上にケーブルを載せて縛るだけなので放熱性が抜群に良く、金属管内に比べて
将来的な配線の増設やルート変更のメンテナンスが圧倒的に簡単であることです。
デメリット(短所・弱点)
ケーブルがむき出しのためネズミに囓られたり水漏れの被害を受けやすい点と、
大量のケーブルが乗ると数百キロの荷重になるため強固な耐震支持が必須となる点です。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
配線を1本1本電線管に通すよりも、ラックを1列通してそこに束ねて転がす方が
結果的に材料費・人工(労務費)ともに圧倒的に安く済みます。
おおよその相場(アルミラック 1本=3mあたり)
- 材料費 (W=300mm幅クラス): 約3,000〜5,000円
- 材料費 (W=600mm幅クラス): 約6,000〜9,000円
- 吊りボルト・支持金具等: 数千円程度
合計目安: 長さと幅、および段数(ラック何段積みか)によって総費用を計算します。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
一度設置すれば屋内環境であれば数十年に渡ってそのまま使用可能ですが、
沿岸部の塩害や化学プラント等では10〜20年で腐食による更新が必要です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
ノイズの発生源となる強い電力線と、
LAN等の通信線を同じラック内に隔離せず密着させると
深刻な通信障害を引き起こします。また空きスペースにケーブルを載せすぎるのも厳禁です。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
積載率を無視して過積載にした状態で大地震が発生すると、吊りボルトが破断して
ラック本体ごと配線設備全体が天井裏から崩落し、復旧不可能な大規模停電と
建物の深刻な損壊事故を引き起こします。
8. 関連機器・材料の紹介
ケーブルラックの上に敷設される線材や、代用となる部材の紹介です。
-
低圧幹線ケーブル(CV・CVT):
このケーブルラックの上に最も多く敷設される、太くて重い主力ケーブルです。
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バスダクト:
ラックでも載せきれないほどの超大電流を送る際に代わりに使用される、
金属ケースで強固に保護された電力母線システムです。
▶ 詳細記事はこちら -
金属電線管:
ラックから分かれて各個別の機器へケーブルを保護しながら下ろす
際に使われる、防護力が非常に高い鉄のパイプです。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
駅の天井に金属のハシゴみたいなものがありますが何ですか?
それがケーブルラックです。照明や機械を動かすためのたくさんの電線を
安全に束ねて支えています。
電線がむき出しで埃が積もりそうですが火事になりませんか?
電線自体は分厚い絶縁カバーで守られているため、埃だけで発火することはありません。
人がぶら下がっても落ちませんか?
電線の重さには耐えられますが、予期せぬ方向への力に弱いため、
人がぶら下がると変形したり落下する危険があります。
なぜ床下ではなく天井に吊っているのですか?
人が歩く邪魔にならず、また水漏れ時に電線が濡れるのを防ぐため、
安全でスペースにゆとりのある天井裏を利用します。
家の中にもラックはありますか?
家庭内で使う電線は非常に少ないためラックは使いません。
ビルや工場など大きな建物専用の設備です。
アルミラックを切断する際の注意点は?
高速カッターで切るとバリが出やすいため、金鋸や専用カッターで切り、
必ずヤスリでバリ取りをして電線を傷つけないようにします。
ラックからラックへ接続するときのポイントは?
接続金具をしっかりボルトで締め、アースの連続性を保つために
各継ぎ目ごとにボンディング線(アース線)で確実に接続します。
ラック上でのケーブルの縛り方(バインド)の基準は?
垂直部分はケーブルが自重でずり落ちないよう各子桁で全て結束し、
水平部分もおおむね2m以内の間隔で結束します。
防火区画の壁を貫通する際の処理(区画貫通措置)は?
耐火パテ等で隙間を完全に埋め、火災時の炎や煙が隣の部屋へ
回らないように法的に厳しく処理を行います。
ラックを吊るボルト(吊りボルト)の間隔は?
原則として1.5mから2.0m以内で支持し、重量がかかる交差点や
曲がり角の近くは追加で吊って強度を確保します。
ラックの段積み(多段化)で空調ダクトと干渉しました。
ラックは途中で段差をつけて交わす「オフセット加工」が可能です。
専用の継ぎ金具や切断斜め加工で対応します。
ラックの耐震支持はどのように計算しますか?
国交省の「建築設備耐震設計・施工指針」に基づき、ケーブルの自重と
ランクに応じた水平震度から支持部材の強度を算出します。
高圧ケーブルと低圧ケーブルを同じラックに乗せられますか?
原則は別の独立したラックに分けます。ルート上どうしても同じになる場合は、
頑丈な金属セパレータで物理的に隔離します。
スチール(亜鉛めっき)製を選ぶべき現場とは?
化学工場や塩害地域、または極端に重量の重いケーブルが集中する立坑などで
強度と耐食性が強く求められる場合です。
施工後の検査で指摘されやすいポイントは?
吊りボルトのナットの緩み止め(ダブルナット処理)、
切断面の防錆スプレー処理、そして交番部のアース線の取り忘れです。
後から新しくケーブルを敷きたいのですが、ラックに隙間がありません。
規定の積載率を超えているため、そのラックに無理に乗せることはできません。
違反になるため新たなラックを増設するかルートを変更します。
ラックに錆が発生していますが危険ですか?
強度が落ちて落下の原因になるため放置は危険です。また錆が被覆を傷つける
恐れもあるため、ケレンと錆止め塗装が必要です。
ラックの上にネズミのフンがあります。
ネズミの通り道になっています。ケーブル被覆を囓られて漏電・火災になる前に、
早急に駆除業者を手配してください。
ラック本体をアース(接地)する理由は?
万が一ケーブルから漏電して金属のラック全体に電気が流れた際、感電事故を
防ぐため確実に電気を大地へ逃がすためです。
耐用年数はどのくらいですか?
屋内環境が良ければ半永久的に持ちますが、沿岸部や湿気の多い地下などでは
15〜20年で腐食が進み更新が必要になることがあります。