A種接地(A種接地工事)とは?
高圧機器の外箱等を接地する重要な保安用アース
【超解説】とても簡単に言うと何か?
避雷器や高圧機器の筐体から雷や異常電圧を大地へ逃がす、最も厳格なアース工事です。
1. 基本概要
高電圧用の特別なアース工事
A種接地工事(えーしゅせっちこうじ)とは、600Vを超える
高圧または特別高圧の電気設備において、事故発生時に
人間への感電被害を防ぐために義務付けられたアース工事です。
避雷器(LA)や高圧機器の金属製外箱などに施されます。
家電用のD種接地とは比べ物にならないほど厳しい基準で施工されます。
なぜ「A種」が必要なのか
高圧電気が漏電した場合、家庭用の電気よりも桁違いの大電流が流れ、
一瞬で人が黒焦げになるため、電気を「少しでも早く地面に捨てる」
必要があります。そのため、電気の通りやすさの基準が
最も厳しく設定されているのがこの「A種」にあたります。
2. 構造や原理
地面深くへの埋設
太いアース線(緑色の電線)の先に、銅板などの金属の板や
銅の棒(接地極)を取り付け、それを地面の深いところへ
埋め込みます。地面自体が巨大な電気の吸い込み口となります。
大地という無限の容量を持つタンクへ電気を捨てる原理です。
接地抵抗値「10Ω以下」のルール
電気の通りにくさを表す数値を「抵抗(Ω:オーム)」と呼びます。
A種接地は、この抵抗値を「10Ω以下」にしなければなりません。
(D種接地は100Ω以下)。数字が小さいほど電気が地面に逃げやすく、
人間側へ逆流してこないため、圧倒的に安全と言えます。
3. 素材・形状・規格
使用される材料と電線
地面に埋める金属(接地極)には、腐食しにくい銅板や銅被覆鋼棒(アース棒)が使われます。
接続する電線(接地線)は、雷などの巨大な電流に耐えるため、
引張強さや太さが法令(内線規程など)で厳格に定められており、
直径2.6mm以上の軟銅線などが用いられます。
大地を改良する低減材
岩山や乾燥した砂地など、どうしても10Ω以下という厳しい数値を
出せない場合、土の電気の通りを良くする薬品の粉
(接地抵抗低減材)を土に混ぜて施工することもあります。
4. 主に使用されている場所
PASやLA(避雷器)の土台
電柱の上のほうにあるPAS(気中開閉器)の内蔵LAが受け止めた
数百万ボルトの雷サージを真っ直ぐ地面に捨てるため、
電柱に沿って太いアース線が下りて地中に埋まっています。
キュービクル内のトランス外箱
キュービクルに収められた高圧トランス(変圧器)の金属ケースや、
ZCT・ZPDといった高圧のセンサー類にも、
漏電時の感電事故を防ぐためにA種接地が施されています。
5. メリット・デメリット
メリット(究極の保護性能)
雷や落雷による機器の破壊、また高圧漏電による人身事故を
ほぼ確実に防ぐことができる建物の最重要設備のひとつです。
これがあるからこそ安心して高圧の電気を利用できます。
デメリット(施工が過酷で困難)
岩盤が硬い土地や砂利だらけの土地では、どれだけ深く棒を打っても
「10Ω以下」という非常に厳しい測定値が出ないことがあります。
その場合は数メートルも穴を掘ったり、薬品を撒いたりと、
工事費用と手間が際限なく膨れ上がるリスクを抱えています。
6. コスト・価格の目安
施工環境による費用のブレ
良い土なら数分で終わりますが、悪い土なら重機が必要になります。
おおよその相場(新設・改修工事の場合)
- 土質が良くアース棒数本で済む場合: 3万〜5万円前後
- ボーリングや低減材が必要な難工事: 15万〜50万円以上
合計目安: 5万〜30万円程度(現場により激変)
※地面の中に何本も棒を打ち込んだり、銅板を埋め込むために
アスファルトを直して掘削する費用などが追加になると高額になります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
地中に埋まっている部分は半永久的ですが、地上に出ているアース線は
紫外線やサビなどで腐食・断線するため、年次点検の際に切れていたら
すぐに張り直す必要があります。明確な寿命の年数はありません。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
LAが捉えた雷の何万ボルトという電流が、繋がっているD種接地を
逆流してオフィス内のパソコンや家電へ流れ込み一瞬で破壊します。
等電位ボンディング等の高度な設計思想を使わない限り、
A種は基本「単独で」地面に下ろすルールになっています。
8. 関連機器・材料の紹介
接地工事と比較検討される関連用語や機器をご紹介します。
-
B種接地:
トランス(変圧器)の混触防止のために施される接地です。
▶ 詳細記事はこちら -
C種接地:
300Vを超える低圧機器に施す、A種と同じ「10Ω以下」の厳しい接地です。
▶ 詳細記事はこちら -
D種接地:
300V以下の低圧機器(冷蔵庫や洗濯機など)に施す身近な接地。
100Ω以下で良いため、A種接地に比べると基準は緩いです。
▶ 詳細記事はこちら -
ELCB(漏電遮断器):
アース線(接地工事)が正しく施工されて電気を逃がす道が
できているからこそ、この安全ブレーカーも正常に作動します。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
家の洗濯機についている緑の線と同じものですか?
目的は同じ「アース」ですが、洗濯機はD種接地というランクです。
A種は雷なども逃がすため、ずっと太くて強固なプロ用の設備です。
電柱の横を走っている緑色の線に触っても大丈夫ですか?
基本は安全なために設置されていますが、もし雷が落ちた瞬間や
事故が起きた瞬間に触っていると感電する恐れがあるので触らないでください。
なぜ地面に電気を逃がせるのですか?
地球(大地)は無限の大きさを持った導体(電気を通すもの)として
扱えるため、どれだけ電気を流し込んでも溢れることがないからです。
A、B、C、Dとあるのですか?
はい。A種(高圧)、B種(トランスの混触防止)、C種(保護用)、
D種(低圧家庭用)の4種類が電気設備技術基準で決められています。
工事現場で銅板を土に埋めているのを見ました。
まさにそれがA種接地の工事です。
表面積が広い銅板を深く埋めることで、電気を逃がしやすくしています。
なかなか10Ω以下が出ない時の対処法は?
まずはアース棒を延長して深く打ち込む(連結打ち)ことです。
それでもダメなら複数本打って並列に繋ぐか、低減材を検討します。
A種接地の線を塩ビパイプ等で保護する理由は?
地下75cmから地表2mまでの部分は、人間が触れる恐れがあり、
また草刈り機などで線を切ってしまわないための物理的防護ルールです。
接地線をガス管や水道管に繋いでもいいですか?
絶対禁止です。万が一電気が流れた時にガス爆発を起こしたり、
水道利用者が感電する恐れがあるため必ず専用の極を埋めます。
B種接地とA種接地の違いは何ですか?
B種はトランス内部で高圧と低圧が混線した際、低圧側に
高圧が流れ込むのを計算して防ぐ特殊な防波堤的な設計アースです。
アーステスター(接地抵抗計)の使い方のコツは?
補助接地極(PとCの黄色と赤の線)を、対象から10mほど離し、
なるべく他の金属配管等から遠ざけて直線上に打ち込むことです。
A種接地工事の費用見積もりはどうやれば安全ですか?
事前の土質データや地盤調査結果があれば必ず確認します。
不明な場合は「難工事の場合は追加費用」という条件を必ず入れます。
複数の高圧盤がある場合、どの盤にも10Ωが必要ですか?
基本的には高圧盤同士のA種接地母線を太い線で繋ぎ合わせ、
設備全体として建物のどこかで10Ω以下が確保されていればOKです。
低減材(薬品)を使う上でのデメリットは?
年数が経つと雨で成分が地中に流れ出してしまい、
再び10Ωをオーバーしてしまう「効果の寿命」があることです。
避雷針のアースとA種接地は兼用できますか?
避雷針(建築基準法基準)と高圧機器(電気事業法)のアースは、
雷が逆流して機器を壊すのを防ぐため、最低でも2m以上離して別々に打ちます。
竣工検査で10Ωを超えてしまったら?
法的な違反となるため電力会社からの送電が許可されません。
どうにかして追加の接地工事を行い、数値をクリアする必要があります。
毎年の点検で「11オームです」と言われました。停電しますか?
すぐに停電はしませんが、安全の大前提が崩れている状態です。
早急に専門業者を手配し、接地極の追加打ち込み(改修)をしてください。
どうして年数と共に抵抗値が悪くなるのですか?
地中の銅板が長い年月の間にサビ(酸化)して電気を通しにくく
なったり、土の水分が抜けて乾燥してしまったりするからです。
草刈り機で緑色の太い電線を切ってしまいました。
大至急、電気保安担当者に連絡して修理させてください。
その間に雷や漏電が起きると、電気が逃げ場を失って重大事故になります。
キュービクル移設の際、アース線だけ引っ張ってきてもいいですか?
距離が長くなりすぎると電圧の降下が起きて安全に逃がせません。
基本は移設した先の地面に新しくA種接地を打ち直す設計を出します。
A種とB種とC種とD種、全部点検で測らないといけないのですか?
はい。どれか一つでも基準値をオーバーしていれば法律違反となり、
万が一の感電や火災時に管理責任を問われるため、毎年すべて測定します。