伝送ユニット(TU・親機)とは?
照明のオンオフ信号を2本の伝送線で各リレーに送る伝送ユニット

【超解説】とても簡単に言うと何か?

フル2線式リモコンシステムで、
たった2本の線から全照明を一括管理・制御する親機(CPU)です。

1. 基本概要

そもそも何か

伝送ユニット(TU:Transmission Unit)とは、照明の「フル2線式リモコンシステム」において、
全体の制御を司る主装置(親機)です。システム内に散らばるすべての
スイッチやセンサーからの信号を受け取り、どこの照明をつけるか判断して、
分電盤内のリモコンリレーなどに実行命令を送ります。

なぜ必要なのか

従来のワンショット式リモコンでは、スイッチとリレーを1対1で個別に配線するため、
大規模なビルになると配線が蜘蛛の巣のように膨大になってしまいます。
伝送ユニットを導入すると、わずか2本の共通線(信号線)をすべての機器に数珠つなぎ
するだけで済むようになります。多数の信号を交通整理して、正しい宛先へと
正確に命令を届けるために、この強力な頭脳が必要になるのです。

2. 構造や原理

内部の構造

伝送ユニットは、CPUやメモリを内蔵したマイコン基板から構成されており、
多くの場合、制御盤や幹線用の分電盤内に設置されるボックス型の機器です。
内部には各スイッチやリレーに割り当てられた「アドレス(住所)」のデータや、
どのスイッチでどの照明を連動させるかというパターン設定が記憶されています。

動作原理

伝送ユニットは、2本の共通信号線に対して常にパルス信号(デジタルデータ)という形で
「誰かボタンを押したか?」と全体に呼びかけ(ポーリング)を連続して行っています。
スイッチが押されると、そのアドレス情報付きのパルスが返ってきます。
伝送ユニットはそれを受け取り、「アドレス1番のスイッチが押されたので、アドレス2番の
リレーをONにする」というパルス信号を作り、再び信号線へ送り出します。

3. 素材・形状・規格

外観形状と素材

金属製または厚手樹脂製の筐体を持ち、分電盤のDINレールや盤の背面板に
直接ビス止めできる形状が一般的です。表面には稼働状態や異常を示すLEDランプの他、
パソコンなどを接続してシステム設定を行うための通信専用ポート(USB等)が備わっています。

種類や関連規格

接続できるリレーやスイッチの数によって規模が分かれます。
一般的には1台の伝送ユニットにつき、制御できるアドレス数には上限があり
(例:256回路や512回路など)、それを超える超大型施設では、さらに上位の
パソコン(集中制御盤・BAシステム)を用いて複数の伝送ユニットを束ねて管理します。
パナソニックの「フル2線式リモコン」製品群が国内で圧倒的なシェアを持ちます。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

ワンショット式では対応しきれないような、中〜大規模のオフィスビル、大学キャンパス、
大型商業施設、総合病院、スタジアムなどの大規模建築物に広く採用されます。近年では、
スケジュール制御(定時消灯)など省エネ管理が厳格に求められる施設での必須機器です。

具体的な設置位置

各フロアのEPS(電気パイプシャフト)内にある盤の中や、建物の地下・1階にある
中央監視室側の制御盤内に設置されます。一般の人が操作するものではないため、
施錠された盤の中に隠れており、日常的に目にすることはありません。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

配線量を劇的に削減できるのが最大のメリットです。また、伝送ユニット内でプログラムを
書き換えるだけで、配線を触らずに「このスイッチで点灯する場所を変更する」
「一斉消灯のグループを変える」といった設定変更が容易に行えます。
外部のビル管理システム(BEMS)と連動して高度な省エネ制御を行う要にもなります。

デメリット(短所・弱点)

システム全体を1台の伝送ユニットで管理するため、この機器が故障すると
システム全域の照明スイッチが一切機能しなくなるという致命的な弱点があります。
また、導入機器自体が高価であり、設定調整にパソコンと専門知識を持った
メーカー技術者(システムエンジニア)が必要となるため、敷居が高くなります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

伝送ユニット本体のみならず、設定ツールやエンジニアリング費用(プログラミング費)が
大きくかかってきます。小規模には向かず、全体コストで判断する必要があります。

おおよその相場(機器本体費用の目安)

  • 伝送ユニット本体(小規模用): 約10万〜20万円程度
  • 伝送ユニット本体(大規模・機能拡張用): 約30万〜60万円以上
  • 設定ソフト・エンジニア出張作業費: 別途数十万円〜(規模による)

※付帯する中継器・ターミナル群のコストが別途かかります。

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

メーカー推奨の更新推奨時期は約10〜15年です。
内部はパソコンと同等の電子基板であるため、コンデンサの劣化などで突然死する
リスクがあります。重要施設では、完全に壊れる前にシステム一式の予防保全更新が
推奨されます。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】バックアップデータの未保存・紛失

伝送ユニット内のプログラムデータ(設定データ)のバックアップを取らずに長期間
放置する行為は厳禁です。機器が突然故障して基板を交換した際、データがないと
全スイッチの宛先を手作業で一から解読・再設定することになり、
復旧に莫大な時間と費用がかかります。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

落雷や電子部品の寿命でデータが消失した時、バックアップデータがないと
「昨日まで点いていたスイッチがどこを操作するものか誰にも分からない」状態に陥り、
営業再開不能レベルの大トラブルに発展します。

8. 関連機器・材料の紹介

伝送ユニットと組み合わせてシステムを構成する主要な部材です。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

ビルの中で伝送ユニットを見る機会はありますか?

基本的にはありません。関係者以外立入禁止の電気室や、鍵の掛かったEPSという
配管用スペースの中にある盤の中に隠れています。

家の照明操作とどう違うのでしょうか?

家庭のスイッチは直接コードを繋ぎますが、伝送ユニットがあると「LAN回線経由で
パソコンから照明にメールを送って点灯させる」ようなイメージになります。

ビルの電気が一斉について一斉に消えるのもこれのおかげですか?

はい、そうです。伝送ユニットが「朝8時になったら全て點灯」「夜10時で消灯」と
いうスケジュールを記憶していて、全フロアに号令を出しています。

一部だけ電気がつかないのは本体の故障ですか?

一部だけなら、本体の故障ではなくその場所付近のスイッチ自体の不具合か、
配線の問題である可能性が高いです。

パソコンのようにフリーズすることはありますか?

非常に稀ですが、雷ノイズや強い電磁波の影響で内部の計算処理がフリーズし、
照明が一切操作できなくなるトラブルが発生することはあります。

職人(施工者・電気工事士など)目線

伝送ユニットへの信号線の配線で気をつける事は?

信号線(通常はCPEV等)の極性はありませんが、配線の総延長距離や機器の
接続台数にはメーカー規定の厳格な上限があるため設計図の確認が必須です。

伝送ユニットの電源はどこから取りますか?

一般的に専用の操作電源用トランス(リモコントランス等)からAC24Vを取り、
安定した電源を供給します。

アドレス設定は工事士が勝手に行ってもいいですか?

設定ツールを用いたパソコンでのプログラミングや、アドレス振り分けの
ルールがあるため、勝手に変更せず必ずメーカーか専門の調整員と相談します。

信号線がショート(短絡)するとどうなりますか?

信号が全体に届かなくなり、伝送異常エラーが発生します。多数の機器が
操作不能になるため、施工時の被覆への傷や結線ミスには細心の注意が必要です。

ノイズ対策のために必要な施工はありますか?

強電線(動力・照明電源線)と信号線は法的な離隔は不要な範囲ですが、
ノイズ誤動作を防ぐため、可能な限り別配管とするか一定距離を離して施工します。

施工管理者目線

試運転調整は誰がどのように行いますか?

工事完了後、照明器具の通電を確認したうえで、メーカーの技術員がノートパソコンを
伝送ユニットに接続して設定データを流し込み、現場でON/OFFのテストを実施します。

設定データの作成に必要な資料は何ですか?

照明器具の配置図、スイッチの位置図、どのスイッチでどこを点けるかをまとめた
グループ設定表(照査表・アドレス表)が事前に完全に決まっている必要があります。

工期に遅れが出やすいポイントはどこですか?

テナント入居ビルなどで、各部屋のレイアウトが直前まで決まらず、スイッチの
グループ設定情報がメーカーに提出できないと、基板の準備ができず遅延します。

伝送ユニットからの信号線はリング状に繋いでもいいですか?

ループ状に繋ぐと信号が干渉して誤動作を起こすため、絶対にループ配線にならないよう
トリー(枝分かれ)状で施工するよう職人に徹底させます。

引き渡し書類として用意すべきものは?

竣工図のほかに、最終確定した「アドレス設定表」と、USBメモリ等に格納した
「設定プログラムのバックアップデータ」を必ず施主へ提出します。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

突然ビル全域の照明スイッチが効かなくなりました。

伝送ユニット本体がフリーズまたは故障している可能性が極めて高いです。まずは
ユニットの電源を一度切り、再起動(リセット)して復旧するか確認します。

レイアウト変更時にスイッチの役割を変えられますか?

はい、配線をいじらなくても設定データを書き換えるだけで対応可能です。
設定ソフトと専門知識が必要なので、多くはメーカーか代理店に依頼します。

メーカーから更新を推奨されましたが交換の手間はどれくらいですか?

互換性のある後継機なら、機器交換は数時間で終わりますが、古い設定データを
新しい機器に引き継げるかが最重要です。旧世代すぎると引き継げない事もあります。

バックアップデータが紛失してしまっています。

今の伝送ユニットが稼働しているうちに、必ずメーカー手配をして
今の機器からデータを吸い出して(アップロードして)保存し直しておいてください。

停電すると記憶している設定は消えてしまいますか?

内部の不揮発性メモリに書き込まれているため、停電しても設定データは消えません。
復電後は自動的に停電前の動作状態に復帰するように作られています。