VCT(電力需給用計器用変成器)とは?
大口需要家の電力料金を計量するため、高電圧・大電流を安全値に変換する計器用変成器
【超解説】とても簡単に言うと何か?
高圧電力の電圧と電流を同時に変換し、
電力量計による電気料金計量の基準となる計器用変成器です。
1. VCTの基本概要
VCTとは何か・どのようなものか
VCT(Voltage and Current Transformer)は、
日本語で「電力需給用計器用変成器」と呼ばれます。高圧受電(6,600V等)
を行う事業場の受電点付近である、第一柱のパス(PAS)のすぐ下や、
キュービクル内の受電盤(第一面)に設置される機器です。箱体の中に電圧を下げるPTと、
電流を下げるCTが一つにまとめられています。
何をするための物か・なぜ必要なのか
工場などに流れる6,600Vの高電圧や数百アンペアの大電流を、
そのまま電気メーター(電力量計)に流し込むと、メーターが一瞬で破裂・焼損してしまいます。
そのため、VCTを使って電圧を110Vに、電流を5Aという安全で扱いやすい大きさに
比例縮小します。メーターはこの縮小された電気から使用量を計算し、
毎月の高額な電気料金の請求額を決定します。つまり、お金に関わる極めて重要な測定器です。
2. 構造や原理
VCTの箱の中には、前述した「電圧を下げるVT部品」と「電流を絞るCT部品」
の両方がコンパクトに詰め込まれています。6,600Vの高圧がVCTに入ると、
内部のVTが「110V」の電圧信号を作り、CTが「5A」の電流信号を作って、
セットで外部の電力量計(WHM)に送ります。電力量計は、送られてきた「電圧×電流」
の掛け算をリアルタイムに行い、施設で使用された正確な電力(kW)と電力量(kWh)
を算出する仕組みになっています。
3. 素材・形状・規格
外見と素材
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屋外用VCT(気中・油入型): 第一柱(電柱)などに取り付けるタイプ。
雨ざらしになるため頑丈な鉄箱に入っており、上部に碍子(ツノ)
が生えているのが特徴です。 -
屋内用VCT(モールド型): キュービクル内部に設置するタイプ。
エポキシ樹脂でカチカチにモールド(成型)されており、
油を含まずコンパクトで安全性が高くなっています。
所有区分による違い(極めて重要)
地域や電力会社によって、VCTの「持ち主」が変わります。
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電力会社支給品: メーターと同様に電力会社が用意し、
定期的な交換も電力会社の費用で行われます。絶対に勝手に触ったり封印を切っては
いけません。 -
需要家持ち(お客様負担): 東京電力エリアの一部などでは、
需要家側がVCTを購入して設置するルールです。更新費用もすべて需要家負担となります。
4. 主に使用されている場所
電気料金を計算するため「電気の入り口」に設置されます。
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受電点の第一柱: 架空引込(電柱から建物の屋上へ線を飛ばす)の場合、
責任分界点となる電柱の上に設置されます。 -
キュービクルの第一面: 地中引込の場合など、キュービクルの一番最初の扉(受電盤)
を開けた真正面に設置されます。
5. メリット・デメリット
メリット
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省スペース化: 超高精度のVTとCTが1つの箱にまとめられているため、
機器を別々に設置するよりも受電部のスペースを大幅に節約できます。 -
高精度な料金計算: 電気料金の計算を目的とした「需給計器」であるため、
一般的な保護用CTなどよりも遥かに高い精度階級を持っています。
デメリット
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取扱いのタブー: 内部にCT回路を含むため、通電中に二次側を開放すると死亡事故に
直結するシビアな取り扱いが求められます。 -
所有区分の複雑さ: 前述の通り、「誰の持ち物か」がエリアによって異なるため、
改修工事の際の費用負担や手配先でトラブルになりやすい側面があります。
6. コスト・価格の目安
需要家持ち(お客様が手配する)エリアの場合にかかる費用です。
※電力会社支給エリアの場合は製品代はかかりません。
おおよその相場(機器+工事・更新の場合)
- 屋内用VCT(モールド型)本体: 15万〜25万円前後
- 屋外用VCT本体: 25万〜35万円前後
- 交換工事費・試験調整費: 15万〜30万円前後
合計目安: 30万〜65万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
日本電気工業会(JEMA)の推奨更新時期(寿命)は、モールド型で約15年です。
電力会社持ち(支給品)エリアの場合は電力会社が計画的に交換してくれますが、
需要家持ちの場合はオーナーが自費で15年ごとに交換工事を手配する必要があります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
VCT内に組み込まれている電流変成器(CT回路)の2次側を、
電気が流れている状態で外したり切断すること。
また、電力会社が施した「鉛のワイヤー(封印)」を勝手にペンチ等で切断することです。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
内部のCT回路の2次側を開放すると、行き場を失った磁束によって2次側端子に
数千ボルトから数万ボルトの異常高電圧が発生します。これにより、
端子間で激しい放電(アーク)が起こり、作業員が重篤な感電事故の危険性が極めて高いです。
また、VCT内部が絶縁パンクを起こして発火・炎上し、「波及事故」
を引き起こして周辺一帯を停電させます。また、検針用メーターやVCTの「封印」
を無断で破壊すると、数値を誤魔化す不正改造(盗電)を疑われ、
警察沙汰や莫大な違約金の請求を受ける深刻な法的トラブルに発展します。
8. 関連機器・材料の紹介
VCTと一緒に取り扱われることが多い関連機器をご紹介します。
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VT(計器用変圧器):
VCTの中にも入っている、電圧を精密に下げるための機器です。▶ 詳細記事はこちら -
CT(変流器):
VCTの中にも入っている、電流を精密に下げるための機器です。▶ 詳細記事はこちら -
WHM(証明用電力量計):
VCTで作られた110V・5Aの電気を受け取って、実際に電気の使用量(kWh)
を表示するメーター本体です。▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
検針の人が見ているメーターとは違うんですか?
メーターそのものではなく、そのメーターに送る電気を作る裏方の装置がVCTです。
VCTがないとメーターが測れません。
電柱に乗っているあの黒い大きな箱ですか?
はい、高圧受電の電柱(第一柱)にある箱の場合が多いです。ただし、
PASという別のスイッチであることもあります。
VCTが壊れたら電気代はどうなるんですか?
正確に測れなくなるため、過去の使用量などから電力会社との協議で「みなし請求」
などに計算し直されます。
VCTから音が鳴ることはありますか?
変圧器の一種なので「ジー」という小さな音が鳴りますが、
バチバチと放電音がする場合は故障の可能性が高く危険です。
VCTのメーターの数値を勝手にいじれませんか?
厳重に封印(金属のワイヤー等)がされています。故意に破壊して数値を操作すると
窃盗(盗電)で捕まります。
CT回路の配線で最も重要な安全作業は何ですか?
絶対に2次側を開放(オープン)にしないことです。作業前は必ず専用の端子台等で
CT回路を短絡させます。
VCTの極性を間違えるとどうなりますか?
メーターの円盤が逆回転したり、電力量が正しく計測されず、電力会社に大損害を与えたり、
過大請求する事故になります。
VCTの接地工事での指定はありますか?
高圧側の混触を防ぐため、2次側の共通線には必ず指定された接地(D種接地等)
を確実に行う必要があります。
屋内用VCTの搬入で気をつけることは?
モールド型でも数十kgの重量があります。端子部分を持たず、
吊り具等を使って慎重に配置します。
封印の鉛線が切れてしまった場合はどうする?
絶対に隠さず、直ちに電力会社へ報告してください。黙っていると不正改造(盗電)
を疑われる深刻な問題になります。
VCTは自分たちで購入するのですか?
管轄の電力会社によって異なります(電力会社支給か需要家か)。
必ず着工前に電力会社との需給協議で確認してください。
発注から納品までのリードタイムは?
需要家持ちの特殊仕様の場合、数ヶ月かかることがあります。
受電の時期に間に合わないケースが多いため早期発注が必須です。
キュービクル内のVCTスペースで指定はありますか?
電力会社の仕様書に従い、検針員が見やすい位置や高さを守り、
さらに封印が確実にできる構造にする必要があります。
VCT据付前のメーカー試験成績書は必要ですか?
需給計器(お金に関わるもの)であるため、型式承認の証明や成績書の提出が厳格に
求められます。
配線の色が指定されることはありますか?
はい、計器用配線は相(赤白青など)と極性が重要です。電力会社の「内線規程」
等に基づき厳格な色分けが必要です。
VCTの更新周期(寿命)はどれくらいですか?
法定での決まりや推奨更新時期は約15年です。需要家持ちの場合、
時期が来ると自費で交換が必要になります。
検針のメーターと一緒にVCTも交換してくれますか?
電力会社支給エリアであれば、指定の検定満了時期に合わせて電力会社がVCTも一緒に
無料で交換してくれます。
VCTが劣化するとどのようなトラブルが起きますか?
絶縁が劣化して漏電し、全館停電を引き起こす恐れがあります。
年次点検での絶縁抵抗測定が非常に重要です。
電気代が急に上がったのですがVCTの故障ですか?
故障ゼロではありませんが、計器類は非常に堅牢です。大半は空調の使いすぎや、
構内での漏電が原因です。
VCTの清掃は自分たちでしても良いですか?
絶対にやめてください。高圧部が露出しており重篤な感電事故になります。
必ず電気主任技術者に依頼して停電状態で行います。