廃棄物処理法(建設廃棄物)とは?
建設現場のゴミを正しく処理する、環境犯罪で最も重い罰則を持つ法律
1. 超解説
【超解説】とても簡単に言うと何か?
「ゴミ(廃棄物)を正しく処理するためのルール」を定めた法律です。建設現場からは大量のがれき・木くず・金属くず・廃プラスチックなどが排出されますが、この法律により排出事業者(元請業者)に分別・運搬・処分の責任が課されています。不法投棄には最大で懲役5年・罰金1,000万円(法人は3億円)という極めて重い罰則があります。
正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)で、1970年に制定されました。環境省が所管し、建設業から排出される産業廃棄物は全産業の約2割を占めるため、建設業者にとって最も身近な環境法令の一つです。
2. 法律の目的と廃棄物の分類
「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」が目的です。
廃棄物の分類
| 分類 | 内容 | 建設業の例 |
|---|---|---|
| 一般廃棄物 | 産業廃棄物以外の廃棄物 | 現場事務所の生活ごみ、弁当がら |
| 産業廃棄物 | 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち法令で定める20種類 | がれき類、木くず、金属くず、廃プラ等 |
| 特別管理産業廃棄物 | 爆発性・毒性・感染性のある産業廃棄物 | 石綿含有廃棄物、廃石綿、PCB廃棄物 |
建設廃棄物の主な種類
- がれき類:コンクリート破片、アスファルト殻(最も排出量が多い)
- 木くず:型枠材、仮設材、解体木材
- 金属くず:鉄筋の端材、配管の切れ端、ボルト・ナット
- 廃プラスチック類:塩ビ管の端材、養生シート、梱包材
- ガラスくず・陶磁器くず:窓ガラス、タイル、便器の破片
- 繊維くず:断熱材のロックウール(建設業に限り産業廃棄物)
- 石膏ボード:「ガラスくず等」として管理(最終処分場の区分に注意)
3. 排出事業者責任の原則
建設廃棄物の処理責任は元請業者にあります(2010年改正で明確化)。下請業者が実際に施工して廃棄物を出しても、法律上の排出事業者は元請です。
- 自ら処理の原則:排出事業者は自ら処理するか、許可を持つ処理業者に委託
- 適正処理の確認義務:委託先が適正に処理しているか確認する義務
- 最終処分までの責任:中間処理だけでなく最終処分が完了するまで責任を負う
4. マニフェスト制度(産業廃棄物管理票)
産業廃棄物を処理業者に委託する場合、マニフェスト(管理票)の交付が義務付けられています。
紙マニフェストの流れ
- 排出事業者がA票~E票の7枚綴りを作成・交付
- 収集運搬業者がB1・B2票を排出事業者に返送(運搬終了後10日以内)
- 処分業者がD票を排出事業者に返送(処分終了後10日以内)
- 最終処分業者がE票を排出事業者に返送
- 排出事業者が返送されたマニフェストを5年間保管
電子マニフェスト
JWNET(日本産業廃棄物処理振興センター)が運営する電子マニフェストシステムも利用可能です。2020年4月から特別管理産業廃棄物を年間50トン以上排出する事業者は電子マニフェストの使用が義務化されています。
5. 建設リサイクル法との関係
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)は、一定規模以上の解体・新築工事について、特定建設資材の分別解体と再資源化を義務付けています。
| 対象工事 | 規模要件 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 床面積80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築 | 床面積500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替え | 請負金額1億円以上 |
| 土木工事等 | 請負金額500万円以上 |
特定建設資材:コンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの4品目は分別解体と再資源化が義務です。
6. 違反時のリスク・罰則
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 不法投棄 | 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または併科(法人は3億円以下) |
| 不法焼却 | 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または併科 |
| 無許可の処理業 | 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金 |
| マニフェスト違反 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 委託基準違反 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金 |
不法投棄は環境犯罪の中で最も重い罰則です。排出事業者は、委託先が不法投棄した場合でも「措置命令」(原状回復命令)の対象となり、数千万円~数億円の撤去費用を負担させられた事例があります。
7. 実務上のポイント
- 委託契約書の締結:収集運搬業者・処分業者それぞれと書面で委託契約を締結(法定記載事項あり)
- 許可証の確認:委託先の許可証の有効期限・対象品目を必ず確認
- 現場での分別:混合廃棄物は処理費が高くなるため、現場での分別が経済的にも有利
- 石膏ボードの管理:水分と接触すると硫化水素が発生するため、管理型最終処分場での処分が必要
- 石綿含有廃棄物:飛散性(レベル1・2)は特別管理産業廃棄物、非飛散性(レベル3)は産業廃棄物として管理
8. 関連記事リンク
9. 多角的なQ&A
一般の方向け
自宅のリフォームで出た廃材は誰が処分するのですか?
リフォーム工事を請け負った元請業者が排出事業者として処分する責任を負います。見積書に廃棄物処理費が含まれているか確認してください。「処分費を安くするから自分で捨ててほしい」と言う業者は法律違反の可能性があります。
不法投棄を見つけたらどこに通報すればいいですか?
市区町村の環境担当課、都道府県の環境部局、または警察に通報してください。環境省の「不法投棄ホットライン」も利用できます。場所、投棄物の種類、量、写真などの情報があると対応が早くなります。
建設現場のごみと家庭ごみの処理の違いは?
家庭ごみは「一般廃棄物」として市区町村が収集・処理しますが、建設現場の廃棄物の多くは「産業廃棄物」であり、排出事業者が自ら又は許可業者に委託して処理する義務があります。産業廃棄物を家庭ごみとして出すことは違法です。
解体工事の見積もりで「廃棄物処理費」が高いのですが妥当ですか?
解体工事費の30~50%が廃棄物処理費というのは一般的です。特にアスベスト含有建材がある場合は特別な処理が必要で、費用がさらに増加します。複数の業者から見積もりを取り、処理費の内訳(品目別の単価・数量)を確認することをお勧めします。
DIYで出た廃材はどう処分すればいいですか?
個人のDIYで出た少量の廃材は一般廃棄物として市区町村のルールに従って処分できます。ただし、大量のコンクリートがら、石膏ボード、断熱材などは一般ごみとして出せない場合があるため、自治体の粗大ごみ受付や廃棄物処理施設に事前確認してください。
業界関係者向け
元請の排出事業者責任と下請の役割分担は?
法律上の排出事業者は元請ですが、実務では下請が現場で分別し、元請の指示のもと集積場に運搬するのが一般的です。下請が自ら廃棄物を運搬する場合でも、元請名義のマニフェストが必要です。下請が独自に処理業者に委託することは認められません。
マニフェストの返送期限が過ぎても届かない場合はどうすればいいですか?
紙マニフェストの場合、交付日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)以内にD票が返送されない場合は、処理状況を確認し、都道府県知事に「措置内容等報告書」を提出する義務があります。放置すると排出事業者も行政処分の対象となります。
混合廃棄物と分別のコスト比較は?
混合廃棄物の処分費は分別した場合の2~3倍になるのが一般的です。例えば、がれき類の処分費が1トンあたり3,000~5,000円であるのに対し、混合廃棄物は1トンあたり15,000~30,000円です。現場で分別する手間はかかりますが、トータルコストでは分別が有利です。
石膏ボードの処分で注意すべき点は?
石膏ボードは水分と接触すると硫化水素(有毒ガス)が発生するため、管理型最終処分場での処分が必要です。安定型処分場への搬入は禁止されています。また、リサイクル施設への搬入も可能ですが、壁紙付きの石膏ボードはリサイクル困難なため、解体時に壁紙を剥がすことが推奨されます。
建設リサイクル法の届出手続きは?
対象工事の発注者または自主施工者は、工事着手の7日前までに都道府県知事(多くは市区町村長に委任)に届出が必要です。届出内容は、工事の概要、分別解体の計画、再資源化等の計画です。届出をせずに工事を行った場合は、20万円以下の罰金です。
廃棄物処理の委託契約書に必要な記載事項は?
法定記載事項として、①廃棄物の種類・数量、②委託契約の有効期間、③委託者が支払う料金、④許可証の写し、⑤適正処理のために必要な情報(有害物質の含有等)などがあります。書面での契約が義務で、口頭契約は違法です。契約書は契約終了後5年間保存義務があります。