給水方式とは?
直結直圧式、受水槽式、直結増圧式など、建物へ水道水を供給する方式の違い
【超解説】とても簡単に言うと何か?
水道本管から建物の各蛇口まで水を届ける方法のことです。大きく分けて「水道の圧力だけで直接届ける方式」「ポンプで圧力を足して届ける方式」「一度タンクに貯めてから届ける方式」の3種類があり、建物の高さや規模で使い分けます。
1. 基本概要
そもそも何か
給水方式とは、水道事業者の配水管(道路の下の水道本管)から建物の各給水栓(蛇口)まで、どのような仕組みで水を供給するかを定めた方式のことです。建物の階数、使用水量、水道本管の水圧、断水時の対応方針などを総合的に考慮して選定します。
2. 構造や原理・3つの給水方式
① 直結直圧方式
水道本管の水圧だけで各階の蛇口まで水を届ける方式です。ポンプも受水槽も使わないため最もシンプルでコストが低い方式です。
- 適用建物: 戸建住宅、2〜3階建ての小規模ビル・アパート
- メリット: 設備費・維持管理費が最も安い。新鮮な水道水がそのまま届く。設置スペース不要。
- デメリット: 水道本管の水圧に依存するため高層階には不向き。断水時は即座に使えなくなる。
- 水圧の目安: 水道本管の水圧0.15〜0.3MPa程度で2〜3階まで対応可能。
② 直結増圧方式
水道本管に直結した増圧ポンプで水圧を高めて各階に給水する方式です。受水槽が不要で、中高層建物に対応できます。
- 適用建物: 3〜15階程度の中高層マンション・ビル(自治体により上限が異なる)
- メリット: 受水槽不要で省スペース。水道水が直接届くため衛生的。受水槽の清掃・点検が不要。
- デメリット: 増圧ポンプの設置費・電気代・メンテナンス費が必要。停電時はポンプが停止。
- 増圧ポンプ: インバーター制御で使用量に応じた回転数制御を行い省エネを実現。
③ 受水槽方式
水道本管から一度受水槽に水を貯め、そこから加圧給水ポンプで各階に給水する方式です。
- 適用建物: 大規模ビル、超高層マンション、病院、工場など
- メリット: 断水時でも受水槽の貯水分は使用可能。大量使用にも安定供給。水道本管の水圧に左右されない。
- デメリット: 受水槽の設置スペースが必要。年1回の清掃・水質検査が法的に義務。維持管理費が高い。
- 法的要件: 水道法・ビル管理法により有効容量10m³超の受水槽は簡易専用水道として届出・検査が必要。
3. 素材・選定のポイント
建物規模別の推奨方式
- 2〜3階(戸建・小規模): 直結直圧方式
- 3〜10階(中層マンション・ビル): 直結増圧方式
- 10階以上(高層・超高層): 受水槽方式(ゾーニング併用)
- 病院・工場: 受水槽方式(断水対策・大量使用対応)
高層建物のゾーニング
超高層ビルでは水圧が高くなりすぎるのを防ぐため、建物を高さ方向にいくつかのゾーンに分けて給水します。各ゾーンに減圧弁を設け、適正水圧(0.3MPa以下)に調整します。
4. 主に使用されている場所
- すべての建築物(給水方式はすべての建物で必ず選定が必要)
- 直結直圧: 一般住宅、2〜3階の店舗・事務所
- 直結増圧: 中高層マンション(近年急速に普及)
- 受水槽方式: 大規模商業施設、ホテル、病院、工場
5. メリット・方式別コスト比較
おおよその相場(50戸マンション想定)
- 直結直圧方式: 初期費用 最も安価(配管工事のみ)/ 年間維持費 ほぼゼロ
- 直結増圧方式: 増圧ポンプユニット 約100〜300万円 / 年間維持費 約10〜30万円
- 受水槽方式: 受水槽+ポンプ 約200〜500万円 / 年間維持費 約30〜60万円(清掃・水質検査含む)
6. 注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
受水槽方式で法定の年1回の清掃・水質検査を実施しないこと。水質の悪化(残留塩素の低下、細菌の繁殖)が発生し、利用者の健康被害につながるリスクがあります。水道法違反でもあります。
水道事業者への届出なしに増圧ポンプを設置すること。水道本管の水圧に影響を与え、近隣の建物の水圧低下を引き起こす可能性があります。
7. 関連機器・材料の紹介
- 受水槽: 受水槽方式で使用する貯水タンク。▶ 詳細記事はこちら
- 加圧給水ポンプ: 受水槽方式・直結増圧方式で使用するポンプ。▶ 詳細記事はこちら
- 減圧弁: 高層階のゾーニングで使用する水圧調整弁。▶ 詳細記事はこちら
- 量水器: 建物への給水量を計量するメーター。▶ 詳細記事はこちら
8. 多角的なQ&A(20連発)
マンションの給水方式はどうやって調べられますか?
管理組合の書類や重要事項説明書に記載されています。地下や1階に受水槽があれば受水槽方式、ポンプ室に増圧ポンプがあれば直結増圧方式です。
断水に強い給水方式はどれですか?
受水槽方式です。受水槽に貯まっている水を使えるため、短時間の断水なら影響を受けません。直結方式は断水=即供給停止です。
高層マンションの上階は水圧が弱くなりますか?
適切に設計された建物であれば、どの階でも概ね同じ水圧が得られます。減圧弁やゾーニングで各階の水圧を適正に調整しています。
受水槽の水は安全ですか?
年1回の清掃と定期的な水質検査が法律で義務づけられています。適切に管理されていれば安全です。残留塩素が維持されているかが重要な指標です。
停電したらどの方式でも水が出なくなりますか?
直結直圧方式は水道本管の水圧で供給するため停電の影響を受けません。直結増圧・受水槽方式はポンプが停止するため影響を受けますが、低層階は直圧で供給できる場合があります。
直結増圧方式の増圧ポンプの設置位置は?
1階のメーター周辺またはポンプ室に設置します。凍結対策と騒音対策を考慮し、屋内設置が望ましいです。逆流防止装置の設置も必須です。
受水槽の有効容量はどう計算しますか?
1日当たりの使用水量の4/10〜6/10が有効容量の目安です。事務所ビルで1人1日あたり100L、マンションで250L程度で想定します。
直結増圧方式の逆流防止はどうしますか?
増圧ポンプの一次側に減圧式逆流防止器(RPZ弁)を設置するのが一般的です。水道事業者の指定する機器を使用してください。
水道メーターの口径選定の注意点は?
瞬時最大使用水量に基づいて選定します。直結増圧方式では増圧ポンプの処理能力と合わせて、メーター口径を水道事業者と協議します。
給水管の管種選定は給水方式で変わりますか?
基本的には同じですが、直結増圧方式では増圧ポンプの吐出圧力に耐えられる管材・継手の選定が必要です。耐圧試験の圧力も確認してください。
受水槽方式から直結増圧方式への変更は可能ですか?
可能ですが、水道事業者との協議が必要です。水道本管の口径・水圧が十分であること、建物の階数が自治体の上限以内であることが条件です。
自治体による直結増圧方式の階数制限は?
東京都は原則15階以下(一部条件で20階まで)、大阪市は10階以下など、自治体で大きく異なります。計画段階で水道事業者に確認が必須です。
超高層ビルのゾーニング設計のポイントは?
各ゾーンの最下階で水圧が0.3MPa以下になるよう分割します。通常5〜10階ごとに1ゾーンとし、各ゾーンに減圧弁を設けます。
病院で直結方式は採用できますか?
断水時の給水確保が重要な病院では受水槽方式が基本です。受水槽の有効容量を多めに設定し、緊急時の給水車からの受入口も設けます。
給水方式の選定は誰が行いますか?
設備設計者が建物の用途・規模・水道本管の条件を考慮して選定し、水道事業者と協議のうえ決定します。建主の要望(断水対策等)も重要な選定要素です。
受水槽の清掃はどうやって行いますか?
専門業者に委託し、槽内の排水→高圧洗浄→消毒→水張り→水質検査の手順で実施します。作業中は断水になるため、入居者への事前通知が必要です。
増圧ポンプの故障時の対応は?
多くの増圧ポンプユニットは2台以上のポンプで構成され、1台故障時も残りで運転継続します。メーカーのメンテナンス契約で24時間対応を確保しておくことを推奨します。
受水槽方式で水質が悪化する原因は?
受水槽の清掃不足、有効容量が大きすぎて滞留時間が長い、直射日光による藻の発生、マンホール蓋の密閉不良などが主な原因です。
受水槽を廃止して直結増圧に切り替えるメリットは?
受水槽の清掃・点検費用の削減、設置スペースの有効活用、水質の向上(新鮮な水道水が直接届く)が主なメリットです。
災害時の給水確保はどの方式が有利ですか?
受水槽方式が最も有利です。貯水分を非常用として活用できます。直結方式の建物では、別途非常用貯水槽の設置を検討してください。