送風機(シロッコ・ターボ・軸流)とは?
空調設備の「心臓」─ 空気を動かす3つの羽根の使い分け
【超解説】とても簡単に言うと何か?
空気を送り出す
「大きな扇風機」です。
エアコンや換気扇の中に入っていて
空気をダクト(管)に押し込んだり
建物の外に排出したりします。
羽根の形によって
シロッコ・ターボ・軸流の
3種類に分かれます。
1. 基本概要
そもそも何か
送風機(ファン・ブロワー)は、モーターの回転力で羽根車を回し、空気に圧力と速度を与えて輸送する機械です。
空調機(AHU)、換気扇、排煙設備、クリーンルームなど、空気を動かすすべての設備の核心部品です。
なぜ必要なのか
空調や換気は「空気を移動させること」が本質です。
ダクトの中を空気が流れるためには送風機の「押す力(静圧)」と「送る量(風量)」が不可欠です。
送風機の性能が空調設備全体の性能を左右するため「空調の心臓」と呼ばれます。
2. 構造や原理
シロッコファン(多翼送風機)
小さな羽根を多数(40〜60枚)並べた円筒形の羽根車です。
低騒音・中風量・中静圧が特徴で、最も多く使われるタイプです。
AHUの内部、天井埋込換気扇、レンジフードなどに採用。
ターボファン(後向き羽根送風機)
羽根の枚数は少なく(8〜16枚)、後ろ向きに湾曲しています。
高効率・高静圧・低騒音が特徴で、大型AHUやクリーンルーム用に採用。
効率が高い(80%以上)ためランニングコストが最も安いタイプです。
軸流ファン(プロペラ送風機)
扇風機のような4〜8枚の羽根が軸方向に空気を送ります。
大風量・低静圧が特徴で、壁付け換気扇・冷却塔・トンネル換気に使用。
ダクト抵抗が大きい系統には不向きです。
3. 素材・形状・規格
羽根車素材:鋼板(一般)、アルミ(軽量型)、SUS(耐食型)、FRP(耐薬品型)。
ケーシング:鋼板製。溶融亜鉛めっき鋼板が標準。
モーター:全閉外扇型(IP44以上)。直結式またはベルト駆動式。
規格:JIS B 8330(送風機の試験および検査方法)。
騒音値:比騒音レベル(Ks値)で評価。
風量:10〜100,000m³/h(用途により大幅に異なる)。
4. 主に使用されている場所
AHU内部の給気ファン・還気ファン、
天井埋込型換気扇の内部、
排煙設備の排煙機、
冷却塔のファン、
クリーンルームのFFU(ファンフィルターユニット)、
トンネル・駐車場の換気設備。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
シロッコの汎用性:低騒音で住宅〜業務用まで最も幅広く使え、サイズの選択肢も豊富です。
ターボの高効率:大型空調で省エネ効果が最も高く、長期のランニングコストを大幅に削減できます。
軸流の大風量:ダクト抵抗の小さい系統で最も大きな風量を経済的に得られます。
デメリット(短所・弱点)
シロッコの効率の低さ:ターボに比べて効率が60〜70%程度と低く、大型では電力消費が増えます。
ターボのコスト:高精度な羽根加工が必要でシロッコより高価。小型では選択肢が少ないです。
軸流の騒音:高速回転時の風切り音が大きく、静粛性が求められる空間には不向きです。
6. コスト・価格の目安
おおよその相場
- シロッコファン(小型、300〜1,000m³/h): 3万〜10万円程度
- シロッコファン(中型、1,000〜5,000m³/h): 10万〜30万円程度
- ターボファン(大型、5,000〜30,000m³/h): 30万〜150万円程度
- 軸流ファン(壁付型): 1万〜10万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
ベアリング交換は3〜5年ごと、ベルト交換は1〜2年ごとが目安です。
ファン本体は15〜20年で更新を検討します。
異音・振動が増加したら早期のベアリング交換または本体更新を検討してください。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
ベルト駆動式のファンでベルトが
伸びたまま運転すると
スリップして風量が大幅に低下。
さらにベルトの発熱で
火災のリスクもあります。
ベルトの張り具合は月1回
目視と手触りで確認してください。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
ベルトのスリップで風量が設計値の50%以下に低下し、換気不足や空調能力不足が発生します。
ベルトの発熱は最悪の場合、ダクト内の粉じんに引火して火災事故に至ります。
ベアリング摩耗を放置するとシャフトが偏心し、羽根車がケーシングに接触して破損します。
8. 関連機器・材料の紹介
送風機と関連する機器です。
- AHU(エアハンドリングユニット):
送風機を内蔵する大型空調機。
▶ 詳細記事はこちら - ダクト:
送風機で押し出した空気を運ぶ管。
▶ 詳細記事はこちら - エアフィルター:
送風機の上流で空気を清浄化する。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
エアコンの中にも送風機が入っている?
はい。ルームエアコンにはクロスフローファン、業務用にはシロッコファンが内蔵されています。
送風機がなければ冷温風を室内に送ることができません。
換気扇も送風機の一種?
はい。壁付け換気扇は軸流ファン、天井埋込型換気扇はシロッコファンを使っています。
用途に応じた送風機が選ばれています。
「ゴーッ」という音の原因は?
送風機のベアリング劣化、ファンの汚れによるアンバランス、ダクトの振動が主な原因です。
異音は故障の前兆ですので設備管理者に報告してください。
風量を調整する方法は?
インバータ(回転数制御)で無段階に調整するのが最も省エネな方法です。
ダンパー(風量調整弁)で絞る方法もありますが、エネルギーの無駄が生じます。
送風機が止まるとどうなる?
換気が停止して室内のCO2濃度が上昇し、空調も効かなくなります。
排煙設備の送風機停止は火災時に煙の排出ができず人命に関わります。
ベルトの張り調整方法は?
モーター台のスライドボルトでテンションを調整します。
ベルトの中央を指で押して10〜15mmたわむ程度が適正です。
防振架台の選定は?
送風機の重量と回転数に応じた固有振動数の防振ゴムまたは防振スプリングを選定します。
防振効率80%以上を目安に設計してください。
ダクト接続の注意点は?
送風機の吐出口にはキャンバス継手(フレキシブル)を挟み、振動がダクトに伝わるのを防ぎます。
吐出口直後の急縮小・急拡大は圧力損失と騒音の原因になります。
回転方向の確認方法は?
三相モーターは結線を間違えると逆回転します。
試運転時に回転方向を確認し、逆の場合はR-S-TのうちR-Tを入れ替えてください。
Vベルトの本数の決め方は?
伝達動力と回転数からメーカーの選定表でベルト本数を決めます。
1本で伝達できる動力を超える場合は複数本(2〜5本)で使用します。
シロッコとターボの選定基準は?
風量5,000m³/h以下→シロッコ、5,000m³/h以上→ターボが目安です。
大型でも騒音制約がある場合はシロッコにすることもあります。
インバータ制御の採用基準は?
消費電力2.2kW以上のファンにはインバータ制御を採用すると省エネ効果が大きいです。
VAVシステムではインバータ制御が必須です。
騒音対策の設計は?
送風機の比騒音レベル(Ks値)を基に、ダクト内の消音器(サイレンサー)を計画します。
居室に近い場所ではダクトの防音ラッキングも検討してください。
排煙機の選定基準は?
280℃で30分以上運転可能な耐熱仕様が建築基準法で要求されます。
排煙風量は法令に基づく排煙区画の面積で算出します。
直結式とベルト駆動式の違いは?
直結式はメンテナンスが少なく効率的ですが回転数の変更ができません。
ベルト駆動式はプーリー交換で回転数調整が可能。現場調整の自由度で選びます。
振動測定の基準値は?
JIS B 0906に基づく振動速度で評価します。
許容値は通常10mm/s以下。15mm/s以上は要注意、25mm/s以上は即停止です。
ベアリング交換の判断は?
異音(ゴロゴロ音)、発熱(手で触れないほど熱い)、振動増大のいずれかで交換を判断します。
予防保全として稼働時間20,000〜30,000時間で定期交換するのが理想です。
ファンの清掃方法は?
シロッコファンの羽根間に溜まった粉じんはブラシとエアブローで除去します。
油汚れがひどい場合は分解してアルカリ洗剤で洗浄してください。
風量の測定方法は?
ダクト内にピトー管を挿入して動圧を測定し、風速を算出します。
ダクト断面積×風速で風量(m³/h)を計算します。
モーターの絶縁抵抗測定は?
500Vメガーで1MΩ以上が正常値です。
0.5MΩ以下は絶縁劣化が進んでおり、巻き替えまたはモーター交換を検討してください。