冷温水配管(SGP・SUS)とは?
チラーの冷水をFCUまで運ぶ「空調の血管」

【超解説】とても簡単に言うと何か?

チラーやボイラーで作った
冷たい水や温かい水を
建物の各階・各室のエアコンまで
届けるための配管です。
人間の血管と同じように
建物中に張り巡らされた
「空調の動脈と静脈」です。

1. 基本概要

そもそも何か

冷温水配管は、中央熱源方式の空調システムで冷水(7〜12℃)や温水(40〜60℃)を搬送するための配管です。
チラー・ボイラーからAHU・FCU等の空調端末まで冷温水を循環させる往きと還りの2本で構成されます。

なぜ必要なのか

大規模ビルでは各室にチラーやボイラーを置くことは不可能です。
中央の機械室で冷温水を作り、配管で各室まで搬送する方式が最も合理的です。
配管の材質・口径・ルート設計が空調システムの性能とコストを大きく左右します。

2. 構造や原理

SGP(配管用炭素鋼鋼管)

最も一般的な空調配管材料です。
安価で加工しやすく大口径にも対応。
ただし腐食しやすいため
内面被覆管(SGP-VA、SGP-VB)や
水処理装置との併用が必須です。

SUS(ステンレス鋼管)

SUS304またはSUS316Lが使用されます。
耐食性に優れ長寿命ですが価格が高い。
薄肉ステンレス管はメカニカル継手で
施工が容易なため近年採用が増えています。

その他の配管材料

STPG(圧力配管用炭素鋼鋼管):高圧系統に使用。
塩ビライニング鋼管(SGP-VA/VB):内面を塩ビで被覆した防食管。
架橋ポリエチレン管:小口径の末端配管に使用。

3. 素材・形状・規格

SGP:JIS G 3452、口径15A〜300A。
SUS304TP:JIS G 3459、口径15A〜200A。
SGP-VA:JWWA K 116、内面硬質塩ビライニング。
接続方法:ねじ込み(小口径)、フランジ(大口径)、溶接、メカニカル。
使用圧力:1.0MPa以下(一般空調)。
流速:1.5〜3.0m/s(推奨)。

4. 主に使用されている場所

ビル空調の冷水往き・還り配管、
温水暖房の往き・還り配管、
冷却水配管(チラー→冷却塔)、
蒸気・復水配管、
地域冷暖房の搬送配管。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

大量の熱搬送が可能:水は空気の約3,400倍の熱容量を持つため、少ない流量で大量の熱を搬送できます。
長距離搬送に適する:ダクトに比べて圧倒的にコンパクトで、長距離の熱搬送に適しています。
配管材料の選択肢が豊富:用途・予算に応じてSGP・SUS・樹脂管等から選択できます。

デメリット(短所・弱点)

腐食リスク:SGP管は水質管理が不十分だと内面腐食が進行し、赤水や漏水の原因になります。
漏水事故のリスク:配管の漏水は建物の浸水被害に直結するため、高い施工品質が求められます。
施工コスト:配管工事は溶接や保温を含むため工事費が高く、工期も長くなります。

6. コスト・価格の目安

おおよその相場

  • SGP(50A、材料1mあたり): 1,000〜2,000円程度
  • SGP-VA(50A、材料1mあたり): 2,000〜4,000円程度
  • SUS304TP(50A、材料1mあたり): 3,000〜6,000円程度
  • 配管工事費(材工、1mあたり): 5,000〜20,000円程度(口径・仕様による)

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

SGP管は20〜30年(水質管理次第)。
SUS管は40〜50年以上。
SGP-VA管は25〜35年

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】異種金属を直接接続する

SGP管とSUS管を直接接続すると
異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が
発生し、電位の低い方(SGP側)が
急速に腐食します。
必ず絶縁フランジや
絶縁ユニオンを介して
接続してください。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

異種金属接触腐食は通常の腐食の5〜10倍の速度で進行します。
5年以内にピンホール漏水が発生し、天井からの浸水事故に至ります。

8. 関連機器・材料の紹介

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者等)目線

冷温水配管はどこにある?

主にPS(パイプシャフト)と天井裏を通っています。
通常は保温材に覆われているため、銀色や白色の筒状のものが配管です。

赤い水が出るのはなぜ?

SGP管の内面腐食(錆び)が原因です。
水処理装置の故障や水質管理の不備で発生することがあります。

配管の寿命はどのくらい?

SGP管で20〜30年、SUS管で40〜50年以上です。
水質管理が良ければさらに長持ちします。

漏水したらどうなる?

天井からの浸水、壁のシミ、機器の故障など大きな被害が出ます。
漏水を発見したら直ちに設備管理者に連絡してください。

配管の更新工事は大変?

はい。天井や壁を壊して配管を交換するため、大規模な工事になります。
計画的な部分更新で費用と影響を分散させるのが一般的です。

職人(配管工事者)目線

溶接の品質管理は?

大口径(100A以上)の溶接部は放射線透過試験(RT)で内部欠陥を確認します。
小口径は外観検査と水圧試験で品質を保証します。

配管の勾配は?

冷温水配管は1/200〜1/250の勾配でエア抜き弁に向かって上り勾配を付けます。
最高部にエア抜き弁、最低部にドレン弁を設置してください。

フラッシングの方法は?

配管施工後に大量の水を流してスケール・切粉・異物を洗い流します。
フラッシング水の排出先と排水量を事前に確認してください。

メカニカル継手の利点は?

火気不使用(無溶接)で施工でき、火災リスクがありません。
SUS薄肉管のメカニカル継手は施工速度が溶接の2〜3倍です。

伸縮対策は?

冷温水の温度変化で配管が伸縮するため、伸縮継手やスイベルジョイントを設けます。
固定点と可動点を設計図で確認してください。

施工管理者(現場監督)目線

配管口径の選定は?

流速1.5〜3.0m/sの範囲で所要流量を搬送できる口径を選定します。
流速が速すぎると騒音・浸食、遅すぎると配管が太くなりコスト増です。

水圧試験の基準は?

設計圧力の1.5倍以上の圧力で最低60分間保持し、圧力低下がないことを確認します。

配管材料の選定基準は?

コスト→SGP-VA、長寿命→SUS、施工性→メカニカル継手付SUS薄肉管が主な選択肢です。

BIMでの確認は?

3Dモデルで配管ルート・口径・支持間隔・バルブ位置を確認し、他設備との干渉チェックを行います。

配管の耐震対策は?

耐震支持(振れ止め)を設計図に基づいて設置してください。
建物のエキスパンションジョイント部にはフレキシブル継手が必須です。

設備管理者(ビル管理者)目線

水質管理の重要性は?

閉鎖循環系の冷温水もpH・導電率・鉄分を定期的に分析してください。
水処理装置の薬注量が適切かの確認も重要です。

配管の更新判断は?

超音波厚さ計で配管の残存肉厚を測定し、初期肉厚の50%以下になったら更新時期です。
漏水頻度が年3回以上になったら全面更新を検討してください。

エア溜まりのトラブルは?

エア溜まりは循環不良と異音の原因になります。
自動エア抜き弁の動作確認を月1回実施し、手動エア抜きも定期的に行ってください。

バルブの管理は?

年1回の全バルブ開閉確認を推奨します。
長期間操作していないバルブは固着していることがあり、緊急時に操作不能になります。

配管更新の部分更新は?

腐食が進行した部分だけを切断してSUS管に更新する方法があります。
絶縁継手を使って異種金属腐食を防止してください。