空調用循環ポンプとは?
冷温水を建物中に届ける「空調の血液ポンプ」
【超解説】とても簡単に言うと何か?
チラーやボイラーで作った
冷たい水や温かい水を
配管を通じて建物の各階や各室の
エアコン(FCU)に届けるための
ポンプです。
人間の体で言えば「心臓」のように
冷温水という「血液」を
循環させる役割を担っています。
1. 基本概要
そもそも何か
空調用循環ポンプは、中央熱源方式の空調設備で冷温水を熱源機器(チラー・ボイラー)からFCUやAHUまで循環させるための遠心ポンプです。
ビル空調の冷温水配管系統において、水を強制的に循環させることで各室に熱エネルギーを供給します。
なぜ必要なのか
チラーで7℃の冷水を作っても、それをFCUまで届けなければ空調は成り立ちません。
配管の摩擦抵抗やバルブ・機器の圧力損失に打ち勝って水を循環させるのがポンプの役割です。
ポンプの消費電力は空調システム全体の20〜40%を占めるため、省エネ設計が極めて重要です。
2. 構造や原理
渦巻きポンプ(ボリュートポンプ)
最も一般的な形式です。
インペラー(羽根車)の回転で
水に遠心力を与え、
渦巻き状のケーシング内で
速度エネルギーを圧力に変換します。
中〜大流量・中揚程に最適です。
ラインポンプ(インラインポンプ)
吸込口と吐出口が一直線上にある
配管直結型のポンプです。
省スペースで設置でき、
小〜中規模系統に使われます。
インバータ制御
モーターの回転数を可変制御する技術です。
負荷の変動に合わせてポンプの回転数を下げることで、消費電力を大幅に削減します。
ポンプの消費電力は回転数の3乗に比例するため、回転数を20%下げると電力は約50%削減できます。
3. 素材・形状・規格
ケーシング素材:FC(ねずみ鋳鉄)またはFCD(ダクタイル鋳鉄)。
インペラー素材:CAC(青銅鋳物)またはSUS(ステンレス)。
口径:25A〜300A。
揚程:5〜50m程度。
流量:100〜10,000L/min。
モーター:全閉外扇型、IE3以上の高効率モーターが標準。
規格:JIS B 8313(小形渦巻ポンプ)。
4. 主に使用されている場所
ビル空調の冷水一次・二次ポンプ、
温水暖房の循環ポンプ、
冷却水ポンプ(チラー→冷却塔)、
地域冷暖房プラントの搬送ポンプ、
ボイラーの給水ポンプ、
太陽熱温水器の循環ポンプ。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
大流量の安定搬送:遠心力を利用して大量の冷温水を安定的に循環させることができます。
インバータで大幅省エネ:回転数制御により部分負荷時の電力消費を50〜70%削減できます。
長寿命:適切なメンテナンスで20年以上の使用が可能です。
デメリット(短所・弱点)
大きな電力消費:空調システムの搬送動力(ポンプ+ファン)は全体の30〜40%を占めます。
騒音・振動:機械室内に設置しますが、防振対策が不十分だと上階に振動が伝わります。
キャビテーションのリスク:吸込圧力が不足すると気泡が発生し、インペラーが損傷します。
6. コスト・価格の目安
おおよその相場
- ラインポンプ(小型、0.4〜2.2kW): 10万〜30万円程度
- 渦巻きポンプ(中型、3.7〜11kW): 30万〜80万円程度
- 渦巻きポンプ(大型、15〜55kW): 80万〜300万円程度
- インバータ盤: 10万〜50万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
メカニカルシール交換は3〜5年、ベアリング交換は3〜5年が目安です。
ポンプ本体は15〜20年で更新を検討します。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
配管に水が入っていない状態で
ポンプを運転すると
メカニカルシールが焼損し
数分で使用不能になります。
試運転前は必ず配管に
水を充填し、エア抜きを
完了させてから起動してください。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
ドライランでメカニカルシールが焼損すると、水漏れが発生して機械室が浸水する事故に至ります。
シール交換費用は5〜15万円ですが、浸水被害は数百万円規模になることもあります。
キャビテーションを放置するとインペラーが蜂の巣状に侵食され、ポンプ全損(交換50〜200万円)に至ります。
8. 関連機器・材料の紹介
循環ポンプと関連する機器です。
- チラー(冷凍機):
冷水を作る熱源機器。
▶ 詳細記事はこちら - 膨張タンク:
循環系統の圧力変動を吸収するタンク。
▶ 詳細記事はこちら - 制御バルブ:
冷温水流量を制御するバルブ。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
機械室のブーンという音は何?
循環ポンプのモーター音であることが多いです。
防振架台が適切に設置されていれば居室への影響は軽微ですが、気になる場合は設備管理者に相談してください。
ポンプが故障するとどうなる?
冷温水が循環しなくなり、建物全体の空調が停止します。
冷房・暖房ともに効かなくなるため、予備ポンプの設置が一般的です。
ポンプの電気代は高い?
ビル空調の電気代の20〜40%がポンプとファンの搬送動力です。
インバータ制御の導入で電気代を30〜50%削減できます。
家にもポンプがある?
温水床暖房や太陽熱温水器には小型の循環ポンプが使われています。
エコキュートの貯湯ユニット内にもポンプが内蔵されています。
ポンプの寿命は?
適切なメンテナンスで15〜20年持ちます。
消耗品(メカニカルシール・ベアリング)は3〜5年ごとの交換が必要です。
ポンプの設置方向は?
渦巻きポンプは水平据付が標準です。
ラインポンプは横置き・縦置き両方に対応していますが、メーカーの指定を守ってください。
防振架台の選定は?
ポンプ重量とモーター回転数に応じた防振ゴムまたはスプリングを選定します。
コンクリート基礎上に設置し、配管接続部にはフレキシブル継手を挿入してください。
吸込配管の注意点は?
吸込配管はポンプ口径の1サイズ以上太くし、偏心レジューサーで接続します。
エア溜まりを防ぐため上向きの偏心レジューサーを使用してください。
エア抜きの方法は?
配管の最高部にエア抜き弁を設置し、水充填時に空気を排出します。
ポンプケーシングのエア抜きプラグも忘れずに開放してからエア抜きしてください。
予備ポンプの配管方式は?
2台のポンプを並列に設置し、それぞれに仕切弁と逆止弁を設けます。
通常は1台運転・1台待機で、故障時に自動切替する構成が標準です。
ポンプの揚程計算は?
配管の摩擦損失+バルブ・機器の圧力損失の合計で算出します。
安全率10〜20%を加算し、ポンプ性能曲線で運転点を確認してください。
一次ポンプと二次ポンプの違いは?
一次ポンプはチラーを通る定流量ポンプ。二次ポンプは負荷側への変流量ポンプです。
一次・二次ポンプ方式は大規模ビルの省エネ設計の基本です。
NPSH(正味吸込揚程)とは?
ポンプの吸込側で確保すべき最低圧力です。
有効NPSHが必要NPSHを下回るとキャビテーションが発生するため、ポンプの設置高さに注意してください。
省エネ基準の対応は?
省エネ法でモーター効率IE3以上が推奨されています。
インバータ制御の採用は省エネ計算書でも有利に評価されます。
コミッショニングの内容は?
①回転方向の確認 ②流量・揚程の実測 ③振動値の測定 ④電流値の確認 ⑤インバータの設定確認を実施します。
日常点検の項目は?
①異音・振動 ②メカニカルシールからの漏水 ③モーター温度 ④電流値 ⑤吐出圧力を毎日確認してください。
メカニカルシール漏れの対処は?
微量の漏れ(滴下程度)は初期なじみで収まることもありますが、連続的な漏れは交換が必要です。
ポンプを停止し、予備ポンプに切替えてからシール交換を実施してください。
予備ポンプの切替は?
BASの自動切替機能で故障検知→予備起動が行われます。
月1回は手動で予備ポンプを運転し、正常に動作することを確認してください。
インバータの効果確認は?
BASの電力量計でポンプの消費電力を監視し、導入前と比較してください。
設計通りの省エネ効果(30〜50%削減)が出ていない場合は制御設定を見直します。
水質管理の重要性は?
配管内のスケール・スラッジがインペラーに付着すると効率低下と振動増加の原因になります。
水処理装置の適切な運転と年1回の水質分析が重要です。