LANケーブル・通信線・テレビ同軸ケーブルとは?
建物の情報を運ぶ「3本の血管」
【超解説】とても簡単に言うと何か?
建物の中でインターネット・電話・テレビの信号をそれぞれ届ける専用の配線です。
LANケーブルはネット、通信線は電話、同軸ケーブルはテレビの映像を運びます。
目に見えない「情報の道路」として壁や天井裏に張り巡らされています。
1. 基本概要
そもそも何か
建物の弱電設備(通信・情報系統)を構成する3種類のケーブルです。LANケーブルは
パソコンやIP電話をネットワークに接続するためのツイストペアケーブル。通信線(電話線)は
アナログ電話やインターホンに使われる2芯〜多対のケーブル。テレビ同軸ケーブルは
アンテナやCATVからテレビへ映像信号を届ける二重構造のシールドケーブルです。
いずれも100V以上の電力ではなく微弱な信号を伝送するため「弱電ケーブル」と総称されます。
なぜ必要なのか
現代の建物ではインターネット接続、電話通信、テレビ受信は生活やビジネスの基盤です。
Wi-Fiだけでは安定性や速度に限界があり、有線のLAN配線があってこそ
高速で安定したネットワーク環境を構築できます。同軸ケーブルによるテレビ配線も、
ビル全体への安定した映像配信には不可欠な存在です。
2. 構造や原理
LANケーブルの構造
8本の銅線を2本ずつ撚り合わせた4対(ペア)で構成されています。
撚り合わせることで外部からの電磁ノイズを打ち消し合い、高速通信を可能にしています。
UTP(シールドなし)とSTP(シールド付き)があり、一般建築ではUTPが主流です。
外被はPVC(ポリ塩化ビニル)製で、耐燃性のEM(エコマテリアル)仕様も広く使われています。
通信線(電話線)の構造
0.4〜0.65mmの銅線を2本1組で撚り合わせた構造です。1対(2芯)から最大200対まであり、
ビル内では多対ケーブルをMDF(主配線盤)から各フロアの
IDF(中間配線盤)へ幹線として配線し、そこから個別回線を分岐します。
テレビ同軸ケーブルの構造
中心に1本の銅線(芯線)があり、その周囲を絶縁体(発泡ポリエチレン)、
編組シールド(銅線の網)、外被(PVC)で同心円状に覆った二重構造です。
この構造により外部ノイズを遮蔽し、数百MHz〜数GHzの高周波信号を減衰を抑えて伝送できます。
3. 素材・形状・規格
LANケーブルの規格
カテゴリ(Cat)で性能が区分されます。
Cat5e:最大1Gbps対応、一般オフィスの標準仕様。
Cat6:最大10Gbps対応(55m以内)、新築ビルの推奨。
Cat6A:最大10Gbps対応
(100m)、データセンター向け。規格はTIA/EIA-568、JIS X 5150に準拠しています。
通信線の規格
JIS C 3401(市内通信ケーブル)に準拠した0.4mmまたは0.5mmのTPCC(着色識別ポリエチレン絶縁
ビニルシースケーブル)が標準です。近年はIP電話の普及により
LANケーブルに統合される傾向にあります。
テレビ同軸ケーブルの規格
S-5C-FB:標準的な住宅・ビル用。地デジ・BS/CS対応(〜2150MHz)。
S-7C-FB:長距離配線や
分配数の多いビル幹線用。減衰量がS-5C-FBより少ない。JIS C 3502に準拠しています。
「S」はシールド付き、「FB」は発泡ポリエチレン絶縁+編組シールドを意味します。
4. 主に使用されている場所
LANケーブル
オフィスビル・商業施設・病院・学校などネットワーク環境が必要なすべての建物。
サーバールームからフロアの情報コンセントまで、天井裏やケーブルラックを
経由して配線されます。
通信線
ビルのMDF室から各フロアのIDF、そして個々の電話端子まで配線されます。
戸建住宅では電柱から引込柱を経て屋内の電話モジュラージャックまで敷設されます。
テレビ同軸ケーブル
屋上のアンテナまたはCATV引込点から共用部の増幅器(ブースター)・分配器を
経由し、各住戸・各室のテレビ端子まで配線されます。EPS(電気配管シャフト)内を
幹線が縦方向に走り、各フロアで横引き分岐します。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
有線は安定性が圧倒的:LANケーブルによる有線接続はWi-Fiに比べて通信速度・遅延・
セキュリティのすべてで優れています。
同軸ケーブルは高周波に強い:
シールド構造により電波干渉を受けにくく、4K/8K放送の高周波信号も安定して伝送できます。
通信線は信頼性が高い:停電時でもNTT局側から給電されるため、
固定電話は災害時の通信手段として非常に有用です。
デメリット(短所・弱点)
配線工事が必要:壁内や天井裏への配線は建物の構造を理解した上での
施工が必要でコストがかかります。
将来の規格変更リスク:通信規格は進化が速く、
Cat5eでは将来的に速度不足になる可能性があります。
電話線はIP化で縮小傾向:
固定電話のIP化に伴い、専用通信線の新設は減少しています。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
ケーブル自体は安価ですが、配線工事費が大きな割合を占めます。
新築時は躯体工事と同時に配管を埋設できるため比較的安価ですが、
既存建物への後付けは割高です。
おおよその相場
- LANケーブル(Cat6、100m巻):8,000〜15,000円程度
- 同軸ケーブル(S-5C-FB、100m巻):5,000〜10,000円程度
- 情報コンセント1箇所の配線工事:1.5〜3万円程度
- テレビ端子1箇所の配線工事:1〜2万円程度
合計目安:新築1フロアで30〜80万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
ケーブル自体の物理的寿命は20〜30年ですが、通信規格の進化により機能的寿命は
それより短くなります。LANケーブルは10〜15年での上位カテゴリへの更新が推奨されます。
同軸ケーブルは4K/8K放送対応のためS-5C-FB以上への更新が必要な場合があります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
LANケーブルや同軸ケーブルを
100V/200Vの電力ケーブルと
束ねたり同じ配管に通したりすると
ノイズ障害が発生します。
また、LANケーブルを過度に
曲げたり踏みつけたりするのもNGです。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
電力線との混在配線はLANの通信エラー頻発やテレビ画面のノイズ・ブロックノイズを
引き起こします。LANケーブルの曲げ半径を無視した施工は内部の撚り対が崩れ、
通信速度が著しく低下するだけでなく、最悪の場合は全く通信できなくなります。
同軸ケーブルのコネクタ接続不良はテレビの映像乱れやBSが映らない
といったトラブルの最大の原因です。
8. 関連機器・材料の紹介
通信ケーブルと一緒に使われる機器です。
-
HUB(スイッチングハブ):
LANケーブルを集約して
ネットワークを分岐する装置です。
▶ 詳細記事はこちら -
ブースター(増幅器):
テレビ信号を増幅して、
分配による減衰を補う装置です。
▶ 詳細記事はこちら -
PF管・CD管(樹脂製電線管):
通信ケーブルの保護管として
壁内やスラブ内に埋設されます。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
Wi-Fiがあるのに有線LANは必要?
Wi-Fiは便利ですが壁や距離で速度が落ちやすく、接続台数が増えると不安定になります。
オンライン会議や大容量ファイルの送受信には有線LANが安心です。
家のLANの差し込み口が足りない場合は?
スイッチングハブ(HUB)を1台追加すれば1つのLAN端子から4〜8口に増やせます。
家電量販店で2,000〜5,000円程度で購入できます。
テレビが映らなくなった原因は?
同軸ケーブルのコネクタの接触不良が最も多い原因です。
壁のテレビ端子とケーブルの差し込みを一度抜いて挿し直してみてください。
それでも直らなければブースターや分配器の故障が考えられます。
Cat5eとCat6はどちらを選ぶべき?
これから新しく買うならCat6以上をおすすめします。価格差はわずかですが、
将来の10Gbps回線にも対応できるためです。
古い電話線はもう使えないの?
従来のアナログ電話線はNTTの固定電話サービスで引き続き使用可能です。
ただしIP電話(光電話など)に切り替えた場合はLANケーブルでの接続に変わります。
LANケーブルの曲げ半径の基準は?
ケーブル外径の4倍以上が基本です。Cat6(外径6mm程度)なら最小曲げ半径は約25mmです。
これより鋭く曲げると内部の撚り対が崩れて通信品質が劣化します。
強電ケーブルとの離隔距離の基準は?
電力線とLAN/同軸ケーブルは最低150mm以上の離隔が推奨です。
やむを得ず交差する場合は直角に交差させてノイズの影響を最小化します。
同一配管への収納は原則禁止です。
同軸ケーブルのF型接栓の加工のコツは?
芯線を出す長さは規定通り正確に、編組線が芯線に接触しないよう注意して加工します。
専用の皮むき工具を使用し、芯線に傷をつけないことが信号品質維持の鍵です。
LANケーブルの成端(RJ45加工)の注意は?
結線方式はT568AまたはT568Bのどちらかに統一します。日本ではT568Bが主流です。
撚り戻し長は13mm以内に抑え、ケーブルテスターで全ペアの導通と対照を必ず確認します。
耐火区画を貫通する場合の処理は?
通信ケーブルも電力線と同様に耐火区画貫通部の防火措置が
建築基準法で義務付けられています。耐火パテや防火スリーブを使用して
隙間を確実に塞いでください。
情報配管の空配管は何本確保すべき?
将来の増設に備えて使用本数の1.5〜2倍の配管を埋設しておくのが理想的です。
最低でも各居室に1本の予備配管を確保してください。
フルーク等のケーブル試験は必須ですか?
品質保証の観点から認証試験(Permanent Link Test)を
全回線で実施することが推奨されます。試験結果は報告書として竣工図書に添付します。
テレビ共聴設備の設計で注意することは?
分配数と配線長から各端子での信号レベルを計算し、末端でも規定レベル
(地デジ46dBμV以上、BS/CS52dBμV以上)を満たすようブースターの利得を設定します。
光ファイバーとの使い分けは?
建物内の水平配線(フロア内)はLANケーブルが主流ですが、
棟間接続や100mを超える幹線には光ファイバーを使用します。
10Gbps超の高速通信が必要な場合も光ファイバーが有利です。
PoE(Power over Ethernet)の注意点は?
IP電話やWi-FiアクセスポイントにLANケーブル経由で給電するPoEは発熱に注意が必要です。
大量のPoEケーブルを束ねると許容温度を超える可能性があるため、
ケーブル本数の制限が必要です。
テナントのLAN配線工事は誰が負担する?
一般的に、EPS〜フロアIDFまでの幹線はビルオーナー負担、IDF〜各デスクまでの水平配線は
テナント負担とするケースが多いです。賃貸借契約書で明確にしておきましょう。
配線の管理台帳は必要ですか?
はい。どの部屋のどの端子がどのHUBポートに接続されているかを記録した配線管理台帳は、
障害対応やテナント入退去時に不可欠な管理資料です。
テレビの映りが悪いと言われた場合は?
まず該当端子の信号レベルをレベルチェッカーで測定します。
レベル不足ならブースターの調整、ノイズ混入なら接栓の締め直しや
分配器の交換で対応します。
ネットワーク障害時の切り分け方法は?
LANテスターで該当回線の導通を確認し、物理層の問題か
論理層(ネットワーク設定)の問題かをまず切り分けます。ケーブル不良なら端末側の
パッチコード交換から試します。
4K/8K放送への対応は必要ですか?
4K/8K放送(左旋)は3224MHzまでの伝送が必要で、従来のS-5C-FBケーブルと
既存の分配器・端子では対応できない場合があります。対応が必要な場合は3224MHz対応の
部材への更新を検討してください。
参考規格・出典
- JIS X 5150 情報配線システム
- TIA/EIA-568 通信配線規格