竣工検査のチェックポイント
電気設備編・引渡し前の最終確認
【超解説】とても簡単に言うと何か?
建物が完成した際に電気設備が正しく作られているかを確認する
「最終テスト」のこと。電線の絶縁が正常か、接地(アース)が
きちんと効いているか、ブレーカーが正しく動くかなど、
安全に電気を使えるかどうかを全項目チェックします。
1. 基本概要
そもそも何か
竣工検査(しゅんこうけんさ)とは、建物の工事完了時に
電気設備技術基準・内線規程に適合しているかを確認する検査です。
自主検査(施工者による社内検査)→官庁検査(建築確認・消防検査)→
設計監理者検査→施主検査の段階を経て引渡しに至ります。
なぜ必要なのか
電気設備の施工不良は漏電火災や感電事故に直結するため、
竣工後の検査で設計意図どおりに施工されているかを
確認することが法令上も実務上も不可欠です。
電気事業法に基づく自家用電気工作物の使用前自主検査や、
消防法に基づく消防設備等の検査も含まれます。
2. 主な検査項目と確認ポイント
① 絶縁抵抗測定
各回路の絶縁抵抗値が電気設備技術基準の最低値
(対地電圧150V以下で0.1MΩ以上、300V以下で0.2MΩ以上、
300V超で0.4MΩ以上)を満たしているか確認します。分電盤の各回路ごとに
絶縁抵抗計(メガー)で測定し、全回路の記録を残します。
② 接地抵抗測定
A種接地(10Ω以下)、B種接地(計算値以下)、C種接地(10Ω以下)、D種接地(100Ω以下)の
各種接地抵抗が基準値以下であることを確認します。
接地抵抗計で測定し、測定日・天候・土壌条件も記録します。
③ 保護協調の確認
MCCB・ELCBの定格電流・フレームサイズが設計図書と一致しているか、
上位と下位のブレーカーの保護協調(選択遮断)が適切に設定されているかを確認します。
④ 受変電設備の試験
キュービクル内のVCBの遮断試験、各種継電器(OCR・DGR・OVR/UVR)の動作試験、
トランスの絶縁油試験、PAS・SOGの連動試験を実施します。
⑤ 照明設備の確認
照度測定(JIS Z 9110基準)、スイッチと照明の対応確認、調光器・パターンセッターの
動作確認、非常用照明の点灯試験(停電時の自動点灯・30分以上の持続)を確認します。
⑥ 防災設備の試験
自動火災報知設備の感知器動作試験、非常放送設備の起動・放送試験、誘導灯の点灯確認、
非常用発電機の負荷運転試験を実施します。
消防法に基づく消防検査はこれらの動作確認が中心です。
⑦ 弱電設備の確認
LAN設備の導通確認とフルーク等による認証試験、TV共聴設備の
レベル測定、インターホンの通話試験、防犯カメラの映像確認を行います。
3. 提出書類一覧
竣工検査時に提出が求められる主な書類は以下のとおりです。
- 竣工図面一式(単線結線図・平面図・系統図)
- 試験成績書(絶縁抵抗・接地抵抗・継電器試験等)
- 機器承認図・製品仕様書
- 施工写真帳(工程ごとの記録写真)
- 取扱説明書一式
- 保証書一式
- 各種届出書の写し(電力申請・消防届出等)
- 耐火区画貫通処理の記録(認定番号・施工写真)
4. よくある指摘事項と対策
全ELCBのテストボタンによる動作確認が実施されていない。
対策:全数のトリップ試験を実施し、記録を残すこと。
コンセントの接地端子と接地幹線が接続されていない。
対策:全コンセントの接地導通確認を実施すること。
5. 多角的なQ&A(20連発)
竣工検査には立ち会う必要がありますか?
施主検査は立ち会いが基本です。施工者からの説明を受けながら、スイッチやコンセントの
位置・数量が図面どおりか確認してください。
検査で不合格になったら引渡しはどうなりますか?
不合格箇所の是正工事を行い、再検査に合格してから
引渡しとなります。是正工事の費用は施工者負担です。
引渡し後に電気の不具合が見つかった場合は?
瑕疵担保期間(通常1〜2年)内であれば施工者に無償で修繕を求められます。
不具合は写真を撮って早めに通知してください。
「検査済証」とは何ですか?
建築基準法に基づく完了検査に合格したことを証する書類です。
これがないと建物を使用することができません。
電気設備は完了検査の一部として確認されます。
竣工図面はもらえますか?
はい。施工完了後の実態を反映した「竣工図」を
施工者から受け取ります。将来のリフォームや
設備増設時に必須の資料のため、必ず保管してください。
絶縁抵抗測定は全回路必要ですか?
はい。分電盤の全ブレーカー回路を1回路ずつ測定します。
一括測定では個別回路の不良を特定できないため、必ず個別に測定してください。
絶縁抵抗値が基準ギリギリの場合はどうしますか?
基準値を満たしていれば合格ですが、竣工時に基準ギリギリだと
経年劣化でまもなく基準以下に落ちる可能性があります。
原因を調査し、可能であれば改善してください。
接地抵抗が基準値を超えた場合の対策は?
接地極の追加打ち込み、接地極間の並列接続、接地抵抗低減剤の使用などで対応します。
季節(乾季は抵抗値が高くなる)にも注意してください。
施工写真はどのタイミングで撮るべきですか?
「隠蔽前」が最も重要です。壁の中・天井裏・土中に
隠れてしまう配線や接地極は、隠蔽前に必ず撮影し、
スケールを当てて寸法がわかるように撮ってください。
試験成績書のフォーマットは決まっていますか?
法定のフォーマットはありませんが、
JECA(日本電設工業協会)の標準書式が広く使われています。
設計事務所が独自の書式を指定する場合もあります。
社内検査と官庁検査のスケジュール感は?
社内検査は引渡しの2〜4週間前に実施し、不具合を是正。
官庁検査(消防検査・完了検査)は引渡しの1〜2週間前が
一般的です。指摘事項の是正期間を見込んでください。
消防検査で最も時間がかかる項目は?
自動火災報知設備の全感知器の作動試験です。
大規模ビルでは数百個の感知器を1個ずつ作動させるため、半日〜1日かかることもあります。
設計変更が多く竣工図の作成が追いつきません。
工事の進行に合わせてこまめに朱書き(赤入れ)を行い、
竣工時に一気にまとめるのではなく、段階的に更新してください。
BIM(Building Information Modeling)の活用も有効です。
発電機の負荷運転試験はどう実施しますか?
実負荷試験(実際の建物負荷を接続)または
模擬負荷試験(ロードバンクを接続)で実施します。
定格出力の30%以上の負荷で連続運転し、電圧・周波数・油圧・水温を記録します。
検査での手戻りを防ぐコツは?
「チェックリスト方式」で全項目を網羅し、
各職長に自主チェックさせてから管理者が確認する
二段階チェック体制を敷くことが効果的です。
竣工検査の書類はいつまで保管すべきですか?
竣工図面・試験成績書は建物が存在する限り保管してください。
将来の増改築や設備更新時の基礎データになります。
PDF化してデジタル保存もしておくと安心です。
定期点検で竣工時の測定値と比較すべきですか?
はい。竣工時の絶縁抵抗値・接地抵抗値は基準値(初期値)として
非常に重要です。経年での劣化傾向を把握するために毎回の測定値と比較してください。
テナント工事後の再検査は必要ですか?
テナント工事で分電盤の増設やコンセント追加を行った場合、
絶縁抵抗測定と接地導通確認を実施してください。
施工報告書の提出と合わせて記録を管理します。
引渡し後に「使い方の説明」はしてもらえますか?
施工者から設備の取扱説明と操作方法のレクチャーを
受けるのが一般的です。特に受変電設備・発電機・防災設備の
操作手順は、管理担当者全員に周知してください。
竣工後の1年点検で何を確認しますか?
絶縁抵抗の再測定、運転状態の確認、ボルトの増し締め、
ブレーカーのトリップ試験、各種警報装置の動作確認を行います。
1年目は初期不良の発見に最も重要な時期です。